2011-12-04(Sun)
小説・さやか見参!(117)
さやかは吹っ飛ばされた勢いで地面をごろごろと転がった。
殴られた衝撃で一瞬意識を失ったが、回転しながら覚醒し、どうにか立ち上がる。
水月を打たれたせいで呼吸もままならなかったが、迫る危険がさやかを動かしていた。
立ち上がったさやかにイバラキの連続攻撃が繰り出される。
こめかみ、頭頂部と、しつこいぐらいに急所を狙ってくる拳をどうにか受けたものの、今度はイバラキの肘がさやかのみぞおちに突き刺さった。
『ぐえっ!!』
再びさやかが吹っ飛ぶ。
自ら後方に跳んだおかげでかろうじて骨を砕かれはしなかったものの、その衝撃はすさまじかった。
イバラキの速さ、攻撃の威力、
今まで戦いにおいて引けを取る事のなかったさやかにも、それは未知の領域と言えた。
イバラキの強さの秘密、
それは実際秘密でも何でもないのだが、
例えば『発』と『蓄』。
『発』とは力を発する事、『蓄』とは力を蓄える事である。
力を蓄え、それを発する。
この当たり前の動作に何の秘密があろうや。
だが、秘密はなくとも秘訣はあるのだ。
さやかや他の忍び達も、おそらく初期の修行で学んでいる。
いや、
忍びでなくとも、武術に通ずる者なら心得はあるはずなのだ。
普通ならば、力を発すれば身体は『空』になる。
その『空』の状態から力を蓄え、再び力を発する事になる。
だから遅い。
『空』があるから遅いのだ。
武術の修行では、この『空』を無くす事に腐心する。
『縮める』、ではなく『無くす』、である。
それは上半身と下半身の動きの連動が成せる技であった。
上半身が『発』と時、同時に下半身が『蓄』になっている。
その逆もまた然り。
そうする事によって、普通の者が
『発』→『空』→『蓄』→『発』
と動く所を、
『発』→『発』→『発』→『発』
と動けるようになるのだ。
これならば単純計算で三倍は速い事になる。
無論さやかとてそれを会得しているのだが、年齢の分、積んで来た修行の量が違う。
そして置かれていた環境が違う。
一角衆の間者であった妻、かすみを斬って以来、イバラキは常にに命を賭して修行していた。
己に迫る敵を、
荊木流に迫る危険を感じながら修行してきたのである。
同じ修行漬けの毎日だったとは言え、兄の庇護の元にいたさやかとは比べるべくもない。
(このままでは勝てない)
そう悟ったさやかは背中から刀を抜いた。
殴られた衝撃で一瞬意識を失ったが、回転しながら覚醒し、どうにか立ち上がる。
水月を打たれたせいで呼吸もままならなかったが、迫る危険がさやかを動かしていた。
立ち上がったさやかにイバラキの連続攻撃が繰り出される。
こめかみ、頭頂部と、しつこいぐらいに急所を狙ってくる拳をどうにか受けたものの、今度はイバラキの肘がさやかのみぞおちに突き刺さった。
『ぐえっ!!』
再びさやかが吹っ飛ぶ。
自ら後方に跳んだおかげでかろうじて骨を砕かれはしなかったものの、その衝撃はすさまじかった。
イバラキの速さ、攻撃の威力、
今まで戦いにおいて引けを取る事のなかったさやかにも、それは未知の領域と言えた。
イバラキの強さの秘密、
それは実際秘密でも何でもないのだが、
例えば『発』と『蓄』。
『発』とは力を発する事、『蓄』とは力を蓄える事である。
力を蓄え、それを発する。
この当たり前の動作に何の秘密があろうや。
だが、秘密はなくとも秘訣はあるのだ。
さやかや他の忍び達も、おそらく初期の修行で学んでいる。
いや、
忍びでなくとも、武術に通ずる者なら心得はあるはずなのだ。
普通ならば、力を発すれば身体は『空』になる。
その『空』の状態から力を蓄え、再び力を発する事になる。
だから遅い。
『空』があるから遅いのだ。
武術の修行では、この『空』を無くす事に腐心する。
『縮める』、ではなく『無くす』、である。
それは上半身と下半身の動きの連動が成せる技であった。
上半身が『発』と時、同時に下半身が『蓄』になっている。
その逆もまた然り。
そうする事によって、普通の者が
『発』→『空』→『蓄』→『発』
と動く所を、
『発』→『発』→『発』→『発』
と動けるようになるのだ。
これならば単純計算で三倍は速い事になる。
無論さやかとてそれを会得しているのだが、年齢の分、積んで来た修行の量が違う。
そして置かれていた環境が違う。
一角衆の間者であった妻、かすみを斬って以来、イバラキは常にに命を賭して修行していた。
己に迫る敵を、
荊木流に迫る危険を感じながら修行してきたのである。
同じ修行漬けの毎日だったとは言え、兄の庇護の元にいたさやかとは比べるべくもない。
(このままでは勝てない)
そう悟ったさやかは背中から刀を抜いた。
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