2011-12-03(Sat)
小説・さやか見参!(116)
空気が裂けた。
イバラキの右腕がさやかに向かって弧を描いたのだ。
速い。
見えない。
しかし、見えないながらもさやかは反射的に身を低くしてそれを躱した。
唸るような音を上げて、イバラキの背刀が頭上を斬る。
とっさに躱さなければこめかみに強烈な一撃を食らい昏倒していただろう。
しかし安堵する間はない。
イバラキは空振りした腕で手刀を返してきていた。
イバラキの攻撃は速い。
一流の忍びたるさやかが及ばない程の速さなのだ。
さやかは地面を蹴って後ろに跳んだ。
ぎりぎり避けたつもりだったのに、装束の胸元が手刀で裂かれている。
(どうしてっ!?)
さやかは心の中で問うた。
自らの速度を上回るイバラキの攻撃が信じられないのだ。
跳び退いて着地した時にはすでにイバラキの拳が顔面を襲ってきている。
さやかは左腕で受けた。
激痛と共に、じんと骨が痺れる。
痺れが引く間もなく次の拳が飛んでくる。
鋼鉄の義手による攻撃だ。
咄嗟に右腕で受けたさやかは、
『くっ!』
と呻いてよろけた。
あまりの衝撃に腕が折れたのではないかと思ったが、確認する暇はなかった。
がら空きの腹部にはすでに次の一撃が迫って来ていたからだ。
交差させた両腕でイバラキの突きを落とす。
だがその時には鋼鉄の拳がこめかみを打ち抜こうとしている。
(どうしてっ!?)
さやかはもう一度、心の中で叫んだ。
受けたと思った時には次の攻撃が迫っている。
しかも全ての攻撃が的確に急所を狙っている。
これでは反撃の機を掴む事が出来ない。
さやかは義手の拳を躱して、出来るだけ遠くに跳んだ。
距離を置く事で攻撃の機会を作りたかったのだ。
距離を取ったさやかは素早く蹴りを繰り出した。
これまで躱された事のない必殺の蹴りであった。
この蹴りが入ればイバラキといえども怯まずにはいられないだろう。
その隙に態勢を立て直すか、あるいは一旦引くか―
だがそれはどちらも叶わなかった。
さやかの右足はいとも簡単に払い落とされたのだ。
『つぅっ!』
足首に激痛が走る。
イバラキの右手は関節の繋ぎ目を正確に打っていた。
更に間髪を入れず、鋼の突きをさやかのみぞおちに叩き込む。
『がはっ!』
横隔膜を痛打されたさやかが泡を吹いて前のめりになる。
その左のこめかみにイバラキの拳がめりこんだ。
小さな身体が宙に浮くほどの勢いでさやかは吹っ飛ばされた。
力の差は歴然だった。
イバラキの右腕がさやかに向かって弧を描いたのだ。
速い。
見えない。
しかし、見えないながらもさやかは反射的に身を低くしてそれを躱した。
唸るような音を上げて、イバラキの背刀が頭上を斬る。
とっさに躱さなければこめかみに強烈な一撃を食らい昏倒していただろう。
しかし安堵する間はない。
イバラキは空振りした腕で手刀を返してきていた。
イバラキの攻撃は速い。
一流の忍びたるさやかが及ばない程の速さなのだ。
さやかは地面を蹴って後ろに跳んだ。
ぎりぎり避けたつもりだったのに、装束の胸元が手刀で裂かれている。
(どうしてっ!?)
さやかは心の中で問うた。
自らの速度を上回るイバラキの攻撃が信じられないのだ。
跳び退いて着地した時にはすでにイバラキの拳が顔面を襲ってきている。
さやかは左腕で受けた。
激痛と共に、じんと骨が痺れる。
痺れが引く間もなく次の拳が飛んでくる。
鋼鉄の義手による攻撃だ。
咄嗟に右腕で受けたさやかは、
『くっ!』
と呻いてよろけた。
あまりの衝撃に腕が折れたのではないかと思ったが、確認する暇はなかった。
がら空きの腹部にはすでに次の一撃が迫って来ていたからだ。
交差させた両腕でイバラキの突きを落とす。
だがその時には鋼鉄の拳がこめかみを打ち抜こうとしている。
(どうしてっ!?)
さやかはもう一度、心の中で叫んだ。
受けたと思った時には次の攻撃が迫っている。
しかも全ての攻撃が的確に急所を狙っている。
これでは反撃の機を掴む事が出来ない。
さやかは義手の拳を躱して、出来るだけ遠くに跳んだ。
距離を置く事で攻撃の機会を作りたかったのだ。
距離を取ったさやかは素早く蹴りを繰り出した。
これまで躱された事のない必殺の蹴りであった。
この蹴りが入ればイバラキといえども怯まずにはいられないだろう。
その隙に態勢を立て直すか、あるいは一旦引くか―
だがそれはどちらも叶わなかった。
さやかの右足はいとも簡単に払い落とされたのだ。
『つぅっ!』
足首に激痛が走る。
イバラキの右手は関節の繋ぎ目を正確に打っていた。
更に間髪を入れず、鋼の突きをさやかのみぞおちに叩き込む。
『がはっ!』
横隔膜を痛打されたさやかが泡を吹いて前のめりになる。
その左のこめかみにイバラキの拳がめりこんだ。
小さな身体が宙に浮くほどの勢いでさやかは吹っ飛ばされた。
力の差は歴然だった。
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