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2011-11-16(Wed)

小説・さやか見参!2(110)

陽が中天に差し掛かった。

風は冷たいが、光を直接浴びればじりじりと熱い。

だが、光を遮る樹々の中はじわじわとした冷たさに満ちていた。

その冷えた空気をゆっくりと断ちながらさやかが歩く。

昨夜とは違う野良着に身を包んでいる。

林の中は薄暗かった。

昼間とてろくに陽が差さぬ場所ではあるが、かすかな木漏れ日と霞んだ空気が生む乱反射で、それなりに視界が開けている。

そのある種幻想的な景色の中を、さやかは虚ろな眼差しで歩いていた。

『虚双眼』という術である。

視点を定めず視界全体を見る技術だ。

最初はぼんやりとしか見えないが、修行を積めば段々はっきりと見えるようになってくる。

一見簡単に思えるが、修行を積むまでは、すぐに景色の変化に意識を奪われ、視点を合わせてしまう。

ただぼんやりと見続けるのも大変なのだ。

昨夜のような暗闇とて、さやかには周りの様子がはっきり見えていた。

しかしやはり、昼と夜では見えるものが違う。

空気や匂い、動物の動き、

忍びの気配を探る為には、目に見えるもの、目に見えぬもの両方を捉えなければならない。

さやかは極力首を動かさぬよう、視線を動かさぬよう注意しながら神経を研ぎ澄ました。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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