2011-11-14(Mon)
小説・さやか見参!2(109)
林の近くの小さなお堂で夜明けを迎えたさやかは、これからどうするかを考えていた。
昨夜は天狗が出るような様子は感じられなかった。
音駒のような普通の青年さえ怯えながらも通っている。
(今回ばかりはただの噂かしら)
だとしたらこんな所で油を売らずに先を急いだ方がいい。
さやかには、『奥義の一巻』と渡された巻き物を山吹の分家に届ける任務が与えられているのだ。
しかし…
噂がある以上はどうしても気になる。
昨夜は“たまたま”何もなかっただけかもしれない。
さやかは決めた。
今日一日様子を見よう。
それで何もなければここを発とう。
自分を納得させるように小さく頷いて空を見る。
青い。
空の青は、矮小な人間に虚無を感じさせるほど深い。
そこに雲が流れる。
山吹の里がある方角に向かっているようだ。
さやかは仲間達に思いを馳せた。
十二組から蛇組…イバラキが抜けて、里は慌ただしくなった気がする。
いつ復讐に現れるか分からない幻龍イバラキへの対応を練ったり、
暗躍する一角衆の動向を探ったり、
下忍達などは修行もままならぬ様子である。
各組の頭領はさぞや大変だろう…
そこでさやかは少し照れた。
他人事のように言っているが、龍組の頭領、父・武双に大変な思いをさせているのは他ならぬ自分、
その事を失念していたからだ。
(任務の途中で天狗見物に立ち止まっている未熟者が次期後継者では、父上も気が気じゃないわね)
本当に申し訳ない気持ちになり、
(もう一日だけ。明日には必ず巻き物を届けるから。)
と心の中で言い訳してみる。
(とりあえず)
空から視線を下ろすと暗い林が目に入った。
(太陽が一番高くなったら林に入ってみよう。明るい状態でも見ておかなきゃ)
さやかはもう一度小さく頷き、ごろんと横になった。
昨夜は天狗が出るような様子は感じられなかった。
音駒のような普通の青年さえ怯えながらも通っている。
(今回ばかりはただの噂かしら)
だとしたらこんな所で油を売らずに先を急いだ方がいい。
さやかには、『奥義の一巻』と渡された巻き物を山吹の分家に届ける任務が与えられているのだ。
しかし…
噂がある以上はどうしても気になる。
昨夜は“たまたま”何もなかっただけかもしれない。
さやかは決めた。
今日一日様子を見よう。
それで何もなければここを発とう。
自分を納得させるように小さく頷いて空を見る。
青い。
空の青は、矮小な人間に虚無を感じさせるほど深い。
そこに雲が流れる。
山吹の里がある方角に向かっているようだ。
さやかは仲間達に思いを馳せた。
十二組から蛇組…イバラキが抜けて、里は慌ただしくなった気がする。
いつ復讐に現れるか分からない幻龍イバラキへの対応を練ったり、
暗躍する一角衆の動向を探ったり、
下忍達などは修行もままならぬ様子である。
各組の頭領はさぞや大変だろう…
そこでさやかは少し照れた。
他人事のように言っているが、龍組の頭領、父・武双に大変な思いをさせているのは他ならぬ自分、
その事を失念していたからだ。
(任務の途中で天狗見物に立ち止まっている未熟者が次期後継者では、父上も気が気じゃないわね)
本当に申し訳ない気持ちになり、
(もう一日だけ。明日には必ず巻き物を届けるから。)
と心の中で言い訳してみる。
(とりあえず)
空から視線を下ろすと暗い林が目に入った。
(太陽が一番高くなったら林に入ってみよう。明るい状態でも見ておかなきゃ)
さやかはもう一度小さく頷き、ごろんと横になった。
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