2011-10-08(Sat)
小説・さやか見参!2(101)
男をたぶらかすに、くのいちの術は覿面である。
くのいちの術とは単なる色仕掛けではなく、牡の本能をゆさぶるものなのだ。
愛であれ欲であれ、突き詰めれば己の遺伝子を残そうと牝を求める牡の本能に行き着く。
人間というものは、理性や建前になら抗えるが、本能には滅法弱い。
特に男は。
そこに付け込むのが『くのいちの術』なのだ。
もし旅の途中で男衆に絡まれたとしても、術を用いて状況を脱するのは容易い。
しかし、
忍びの術というのは、
とりわけ一流の忍びであるなら、
『術を使わぬ事』
こそが最高の術なのである。
忍ぶべき者は簡単に手の内を晒すものではない。
出来得る限り術を使わず、面倒を起こさぬようにするのが本来の忍びなのである。
若い腕自慢や見栄っ張りの老忍者が得意気に術をひけらかし、結果失敗した例の数々も知っている。
『私なら絶対にそんな失敗はしない』
さやかには確信があった。
故に、術を使うような場面に陥らぬよう、
出来るだけ他人と関わらずに済むよう、
これといった特徴のない百姓の男に身形を装ったのだ。
変装は功を奏した。
さやかは丸二日、誰とも言葉を交わす事なく旅程を進める事が出来た。
ただ一人、野宿しながら黙って数日を歩き続けるは並の胆力では出来ない。
華奢な小娘に見えても、やはりさやかは鍛えぬかれた忍びなのだ。
くのいちの術とは単なる色仕掛けではなく、牡の本能をゆさぶるものなのだ。
愛であれ欲であれ、突き詰めれば己の遺伝子を残そうと牝を求める牡の本能に行き着く。
人間というものは、理性や建前になら抗えるが、本能には滅法弱い。
特に男は。
そこに付け込むのが『くのいちの術』なのだ。
もし旅の途中で男衆に絡まれたとしても、術を用いて状況を脱するのは容易い。
しかし、
忍びの術というのは、
とりわけ一流の忍びであるなら、
『術を使わぬ事』
こそが最高の術なのである。
忍ぶべき者は簡単に手の内を晒すものではない。
出来得る限り術を使わず、面倒を起こさぬようにするのが本来の忍びなのである。
若い腕自慢や見栄っ張りの老忍者が得意気に術をひけらかし、結果失敗した例の数々も知っている。
『私なら絶対にそんな失敗はしない』
さやかには確信があった。
故に、術を使うような場面に陥らぬよう、
出来るだけ他人と関わらずに済むよう、
これといった特徴のない百姓の男に身形を装ったのだ。
変装は功を奏した。
さやかは丸二日、誰とも言葉を交わす事なく旅程を進める事が出来た。
ただ一人、野宿しながら黙って数日を歩き続けるは並の胆力では出来ない。
華奢な小娘に見えても、やはりさやかは鍛えぬかれた忍びなのだ。
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