2011-07-29(Fri)
小説・さやか見参!2(96)
計らずも山中にて再会した三人組、彼らは炎(ほのお)一族の兄弟達であった。
紅い男は長男、紅蓮丸(ぐれんまる)。
赤い男は次男、炎丸(ほのおまる)。
朱い少年は三男の灯火丸(ともしびまる)である。
炎一族の出自は貴族であったと言われている。
更に遡れば豪族であったという説もある。
かつては『仄緒(ほのお)』という姓を持ち、かなりの勢力を誇っていたらしい。
しかしながら時世には逆らえず没落したのが百数十年も昔…
再興を願う仄緒一族は財政を補う為に各地に眠る財宝を探し始めた。
もはや手段を選ぶ余地はなく、盗賊まがいの方法まで使ったそうだが、お宝など簡単に見つかるはずもなく…
もし見つかったところで数えるばかりしかないでは再興など不可能な話であった。
やがて地位を失った仄緒一族には『財宝探し』という目的だけが残り、かくして盗賊・炎一族が誕生した…らしい。
まぁ由来ははっきりせぬが、彼らが宝を求めているのは分かっている。
今とて、兄弟それぞれが宝の噂を聞き、それを追い求めた結果この山にて鉢合わせしてしまったのだ。
『しっかしよぉ』
赤い男、
次兄・炎丸が口を開いた。
『別々のお宝を探してる俺達が同じ山に集まっちまうなんて、噂の信憑性が疑われるってもんだぜぇ』
赤い男は両手を広げ、『お手上げ』といった格好で兄弟達を見る。
三兄弟はそれぞれ別々の秘宝を求めて各地を捜索していた。
その中で知り得た情報…
それは口碑伝承や言い伝えであったり、昔話やただの噂話だったりしたのだが、三種類のお宝の在処がこの山に集約したのでは情報として不自然に思われる。
長兄・紅蓮丸は大きくうなずいた。
『確かに。ワタクシもそう思っていました。
今回の情報はアテになりませんね』
得意気な兄に向かって、幼い灯火丸が無邪気に反論した。
『でもでも、それだけあちこちに噂があるって事は、少なくともこの山に“何か”あるって証拠じゃないかなぁ?』
紅蓮丸と炎丸は同時に弟を見て固まった。
弟の聡明さに驚愕し、自分達の愚昧さに愕然としたのだ。
すかさず紅蓮丸が大きな身振りで声をあげた。
『よく気付きましたね灯火丸!
ワタクシも全く同意見です!
未熟なおまえが自ら気付くのを待っていたのですよ!』
力強く褒められ、素直な末っ子は照れ笑いを浮かべたが、炎丸は兄の厚顔さに恥ずかしくなった。
『情報はアテにならない』と言った舌の根も乾かぬ内に弟の賢察に便乗しようとは…
恥ずかしさのあまり顔を紅潮させる炎丸に気付く素振りもない紅蓮丸は、先程までの様子が嘘のようにきびきびと場を仕切り出した。
『ワタクシの推測通り、この山に何かあるのは間違いないようです!とりあえず三人がかりで手掛かりを調べましょう!』
灯火丸はきらきらした目で長兄に向き直った。
炎丸も仕方なく兄を見る。
『その上で鏡があるようなら炎丸が、』
紅い男が赤い男を見る。
『珠があるようなら灯火丸が』
紅い男が朱い少年を見る。
『そして、剣があるようならワタクシ紅蓮丸が山に残る。
それでいいですね?』
『はいっ!』
灯火丸が答える。
『…はいはい』
炎丸が答える。
紅蓮丸は二人を見てうなづき、
『では行きますよ』
と言った。
次の瞬間、
かすかな砂塵をあげて、三人は姿を消した。
紅い男は長男、紅蓮丸(ぐれんまる)。
赤い男は次男、炎丸(ほのおまる)。
朱い少年は三男の灯火丸(ともしびまる)である。
炎一族の出自は貴族であったと言われている。
更に遡れば豪族であったという説もある。
かつては『仄緒(ほのお)』という姓を持ち、かなりの勢力を誇っていたらしい。
しかしながら時世には逆らえず没落したのが百数十年も昔…
再興を願う仄緒一族は財政を補う為に各地に眠る財宝を探し始めた。
もはや手段を選ぶ余地はなく、盗賊まがいの方法まで使ったそうだが、お宝など簡単に見つかるはずもなく…
もし見つかったところで数えるばかりしかないでは再興など不可能な話であった。
やがて地位を失った仄緒一族には『財宝探し』という目的だけが残り、かくして盗賊・炎一族が誕生した…らしい。
まぁ由来ははっきりせぬが、彼らが宝を求めているのは分かっている。
今とて、兄弟それぞれが宝の噂を聞き、それを追い求めた結果この山にて鉢合わせしてしまったのだ。
『しっかしよぉ』
赤い男、
次兄・炎丸が口を開いた。
『別々のお宝を探してる俺達が同じ山に集まっちまうなんて、噂の信憑性が疑われるってもんだぜぇ』
赤い男は両手を広げ、『お手上げ』といった格好で兄弟達を見る。
三兄弟はそれぞれ別々の秘宝を求めて各地を捜索していた。
その中で知り得た情報…
それは口碑伝承や言い伝えであったり、昔話やただの噂話だったりしたのだが、三種類のお宝の在処がこの山に集約したのでは情報として不自然に思われる。
長兄・紅蓮丸は大きくうなずいた。
『確かに。ワタクシもそう思っていました。
今回の情報はアテになりませんね』
得意気な兄に向かって、幼い灯火丸が無邪気に反論した。
『でもでも、それだけあちこちに噂があるって事は、少なくともこの山に“何か”あるって証拠じゃないかなぁ?』
紅蓮丸と炎丸は同時に弟を見て固まった。
弟の聡明さに驚愕し、自分達の愚昧さに愕然としたのだ。
すかさず紅蓮丸が大きな身振りで声をあげた。
『よく気付きましたね灯火丸!
ワタクシも全く同意見です!
未熟なおまえが自ら気付くのを待っていたのですよ!』
力強く褒められ、素直な末っ子は照れ笑いを浮かべたが、炎丸は兄の厚顔さに恥ずかしくなった。
『情報はアテにならない』と言った舌の根も乾かぬ内に弟の賢察に便乗しようとは…
恥ずかしさのあまり顔を紅潮させる炎丸に気付く素振りもない紅蓮丸は、先程までの様子が嘘のようにきびきびと場を仕切り出した。
『ワタクシの推測通り、この山に何かあるのは間違いないようです!とりあえず三人がかりで手掛かりを調べましょう!』
灯火丸はきらきらした目で長兄に向き直った。
炎丸も仕方なく兄を見る。
『その上で鏡があるようなら炎丸が、』
紅い男が赤い男を見る。
『珠があるようなら灯火丸が』
紅い男が朱い少年を見る。
『そして、剣があるようならワタクシ紅蓮丸が山に残る。
それでいいですね?』
『はいっ!』
灯火丸が答える。
『…はいはい』
炎丸が答える。
紅蓮丸は二人を見てうなづき、
『では行きますよ』
と言った。
次の瞬間、
かすかな砂塵をあげて、三人は姿を消した。
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