2011-05-12(Thu)
アクションへの道(188)
2001年の夏は暑かった、と書いた。
他の年も暑いのだが、一際暑かったように思う。
着ぐるみやヒーローショーをやっていると、よく
『暑くて大変でしょう!』
と労いの言葉をかけていただく。
言っても詮無い事ではあるが、
『暑いでしょう!』
と言って下さる方が想像するより何倍も暑い。
夏場のアクションショーなど、『暑い』ではなく『熱い』なのだ。
照り付ける太陽、
日陰にいても汗が吹き出す気温、
身体にびっちりと張り付くゴテゴテした衣裳、
酸素も視界もないに等しいマスク、
その中での演技、アクション。
暑さを増す要素ばかりがてんこ盛り、
それがキャラクターショーだ。
ハッキリ言って、ショーの出来不出来に関わらず、
『1回のショーをこなす』
だけでも不慣れな人間には、そしてショーが好きでない人間には不可能だと思える。
(だから新人さんにはある程度ラクな演出をつけなければならないのだ)
だが我々はプロである。
『出来不出来に関わらず』
なんて言っている立場ではない。
どんなにキツくとも、どんなに苦しくとも最高のショーをする義務がある。
もしも
『ヒーロー番組が好きだから』
『コスプレが趣味だから』
といった理由だけでショーの世界に足を踏み入れようとしている方がいたら言っておきたい。
『日常生活でも死者をだしてしまう近年の暑さの中、サウナの中でサウナスーツを着込み、フルフェイスのヘルメットを被ってビリーズブートキャンプをする覚悟はあるのか?』
と。
直接の面識はない知り合いの話だが、
『キャラクターショーが大好き!』
を公言していたほぼ素人の男性は、とある現場の途中、あまりのキツさに仕事を放棄して行方をくらませた。
ショーではなくグリーティングのみの現場だったそうである。
(グリーティング…キャラクターが会場を練り歩き、握手や撮影などを行なう事)
まぁ彼の場合は特殊なのかもしれないが、これはそこまで稀な事ではない。
数日間通しの現場で、2日目の朝に来ない(連絡も取れない)新人なんてざらにいるのだ。
改めて言うが、アクションの世界に飛び込む以上はそれなりの覚悟で臨んでほしい。
(こうやって狭き門にしちゃうのも良くないと思うけど)
僕も夏場のショーでは、必殺技をくらって(怪人役なので)テントに戻ると、一瞬でも早く衣裳を脱ぎたかった。
まずマスクを脱がせてもらいたかった。
呼吸がしたかった。
それが分かっているので後輩も急いでマスクを脱がせようとする。
するとファスナーがひっかかって脱げなくなったりする。
『落ち着けぇっ!慌てなくていいっ!落ち着いて開けろぉっ!』
僕も慌てた声で叫んだものだ。
そして衣裳を脱ぐと、とりあえずテントに大の字に倒れる。
背中の下は熱いアスファルトだ。
背中が焼けそうに熱い。
汗がいつまでも吹き出す。
でも動けない。
どうにか呼吸を整えて立ち上がると、地面には僕の形の水溜まり(汗溜まり)が出来ている。
夏場は毎回そうだった。
しかし大の字で休めるのはメンバーに恵まれている時だけ。
新人や慣れないメンバー、使えない奴が戦闘員役の時は、衣裳からダッシュでジャージに着替えてステージに飛び出さなければならない。
サイン会や撮影会の手伝いをする為だ。
滝のように流れる汗を拭いながら、
『こちらに1列にお並び下さーい!』
『撮影会は後ほど行ないまーす!』
『はい!写真撮るよー!ママの方向いてカッコ良くポーズ!』
と叫び続けるサイン会、撮影会。
『テントで大の字で休んでても死にそうなのに…!』
と思いながら動き回っているのだが、ふと意外に元気な自分に気付く。
『あれ?俺、元気じゃね?』
『じゃあ大の字になってる時は何であんなキツいんだ?』
『もしかして、休んでても大丈夫っていう甘えがあるからキツいのか!?』
普段の自分に対する、
『キツいフリをした甘え疑惑』
が浮上してしまう夏のひと時だった。
他の年も暑いのだが、一際暑かったように思う。
着ぐるみやヒーローショーをやっていると、よく
『暑くて大変でしょう!』
と労いの言葉をかけていただく。
言っても詮無い事ではあるが、
『暑いでしょう!』
と言って下さる方が想像するより何倍も暑い。
夏場のアクションショーなど、『暑い』ではなく『熱い』なのだ。
照り付ける太陽、
日陰にいても汗が吹き出す気温、
身体にびっちりと張り付くゴテゴテした衣裳、
酸素も視界もないに等しいマスク、
その中での演技、アクション。
暑さを増す要素ばかりがてんこ盛り、
それがキャラクターショーだ。
ハッキリ言って、ショーの出来不出来に関わらず、
『1回のショーをこなす』
だけでも不慣れな人間には、そしてショーが好きでない人間には不可能だと思える。
(だから新人さんにはある程度ラクな演出をつけなければならないのだ)
だが我々はプロである。
『出来不出来に関わらず』
なんて言っている立場ではない。
どんなにキツくとも、どんなに苦しくとも最高のショーをする義務がある。
もしも
『ヒーロー番組が好きだから』
『コスプレが趣味だから』
といった理由だけでショーの世界に足を踏み入れようとしている方がいたら言っておきたい。
『日常生活でも死者をだしてしまう近年の暑さの中、サウナの中でサウナスーツを着込み、フルフェイスのヘルメットを被ってビリーズブートキャンプをする覚悟はあるのか?』
と。
直接の面識はない知り合いの話だが、
『キャラクターショーが大好き!』
を公言していたほぼ素人の男性は、とある現場の途中、あまりのキツさに仕事を放棄して行方をくらませた。
ショーではなくグリーティングのみの現場だったそうである。
(グリーティング…キャラクターが会場を練り歩き、握手や撮影などを行なう事)
まぁ彼の場合は特殊なのかもしれないが、これはそこまで稀な事ではない。
数日間通しの現場で、2日目の朝に来ない(連絡も取れない)新人なんてざらにいるのだ。
改めて言うが、アクションの世界に飛び込む以上はそれなりの覚悟で臨んでほしい。
(こうやって狭き門にしちゃうのも良くないと思うけど)
僕も夏場のショーでは、必殺技をくらって(怪人役なので)テントに戻ると、一瞬でも早く衣裳を脱ぎたかった。
まずマスクを脱がせてもらいたかった。
呼吸がしたかった。
それが分かっているので後輩も急いでマスクを脱がせようとする。
するとファスナーがひっかかって脱げなくなったりする。
『落ち着けぇっ!慌てなくていいっ!落ち着いて開けろぉっ!』
僕も慌てた声で叫んだものだ。
そして衣裳を脱ぐと、とりあえずテントに大の字に倒れる。
背中の下は熱いアスファルトだ。
背中が焼けそうに熱い。
汗がいつまでも吹き出す。
でも動けない。
どうにか呼吸を整えて立ち上がると、地面には僕の形の水溜まり(汗溜まり)が出来ている。
夏場は毎回そうだった。
しかし大の字で休めるのはメンバーに恵まれている時だけ。
新人や慣れないメンバー、使えない奴が戦闘員役の時は、衣裳からダッシュでジャージに着替えてステージに飛び出さなければならない。
サイン会や撮影会の手伝いをする為だ。
滝のように流れる汗を拭いながら、
『こちらに1列にお並び下さーい!』
『撮影会は後ほど行ないまーす!』
『はい!写真撮るよー!ママの方向いてカッコ良くポーズ!』
と叫び続けるサイン会、撮影会。
『テントで大の字で休んでても死にそうなのに…!』
と思いながら動き回っているのだが、ふと意外に元気な自分に気付く。
『あれ?俺、元気じゃね?』
『じゃあ大の字になってる時は何であんなキツいんだ?』
『もしかして、休んでても大丈夫っていう甘えがあるからキツいのか!?』
普段の自分に対する、
『キツいフリをした甘え疑惑』
が浮上してしまう夏のひと時だった。
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