2011-04-23(Sat)
小説・さやか見参!2(91)
一角衆。
それを知る者は、山岳宗教より始まりし一派だと言う。
遡ってもたかだか四十年ほどの歴史しかない。
初代頭領は赤岩(せきがん)と呼ばれる男であった。
この男、身の丈大きく妖しの術を用い、その正体は
『庚申山に棲む化け猫である』
と噂されていた。
術にて人心を操り、操られぬ者は力にてねじ伏せる、
そんな非道の者であったが、次第に同類眷属が群をなし、赤岩は少しずつ勢力を拡大していった。
それが一角衆なのである。
赤岩の野望は単純明解、
豪族さながらに一国を治める事。
そして領土を拡大していく事。
しかしながら赤岩が思い描くのは為政などではなかった。
欲しいものは奪い、
気に入らぬものは殺す。
それが一角衆の求める理想郷だったのだ。
逆らう民衆は次々に殺された。
生き残った者達はことごとくに洗脳され、一角の信者となった。
もちろん御上がそれを許そうはずがない。
かなり大掛かりな討伐隊が何度か組まれたが、一角衆の術の前に成すすべもなかった。
やがては討伐隊の中にも、そして大名達の中にも一角衆に心酔する者が増え始めたのである。
一角衆に仇なす大名達は協議の末に、
『人外の者は人外の力で討つ』
と決めた。
そして、
“私”は庚申山へ向かった。
辺り一帯にはたくさんの信者達が溢れていたが、砦に辿り着く事は難しくなかった。
そこで対峙した大きな男、
山伏のような白装束の男、
飢えた山猫のような眼をした男、
それが、
一角衆頭領、赤岩だった。
赤岩と向かい合った私は、
私は、
汗だくで目が覚めた。
心臓が激しく鳴っている。
怒り、怖さ、悔しさ、悲しさ、色々な感情が押し寄せているのに声をあげる事も出来ない。
そして、身体はまだ夢の余韻を引きずっているというのに、夢の記憶はすでに薄れかけている。
ただ、自分の荒い息が聞こえている。
ただ天井が見えている。
『かあさま』
耳元で声がする。
果たして誰の声であったか。
『かあさま、こわい夢を見たの?』
返事をする事が出来ない。
『いいのよ、かあさま。こわがっても』
優しくささやく。
『夢はかあさまの世界なんだから』
私は、再び眠りに落ちた。
それを知る者は、山岳宗教より始まりし一派だと言う。
遡ってもたかだか四十年ほどの歴史しかない。
初代頭領は赤岩(せきがん)と呼ばれる男であった。
この男、身の丈大きく妖しの術を用い、その正体は
『庚申山に棲む化け猫である』
と噂されていた。
術にて人心を操り、操られぬ者は力にてねじ伏せる、
そんな非道の者であったが、次第に同類眷属が群をなし、赤岩は少しずつ勢力を拡大していった。
それが一角衆なのである。
赤岩の野望は単純明解、
豪族さながらに一国を治める事。
そして領土を拡大していく事。
しかしながら赤岩が思い描くのは為政などではなかった。
欲しいものは奪い、
気に入らぬものは殺す。
それが一角衆の求める理想郷だったのだ。
逆らう民衆は次々に殺された。
生き残った者達はことごとくに洗脳され、一角の信者となった。
もちろん御上がそれを許そうはずがない。
かなり大掛かりな討伐隊が何度か組まれたが、一角衆の術の前に成すすべもなかった。
やがては討伐隊の中にも、そして大名達の中にも一角衆に心酔する者が増え始めたのである。
一角衆に仇なす大名達は協議の末に、
『人外の者は人外の力で討つ』
と決めた。
そして、
“私”は庚申山へ向かった。
辺り一帯にはたくさんの信者達が溢れていたが、砦に辿り着く事は難しくなかった。
そこで対峙した大きな男、
山伏のような白装束の男、
飢えた山猫のような眼をした男、
それが、
一角衆頭領、赤岩だった。
赤岩と向かい合った私は、
私は、
汗だくで目が覚めた。
心臓が激しく鳴っている。
怒り、怖さ、悔しさ、悲しさ、色々な感情が押し寄せているのに声をあげる事も出来ない。
そして、身体はまだ夢の余韻を引きずっているというのに、夢の記憶はすでに薄れかけている。
ただ、自分の荒い息が聞こえている。
ただ天井が見えている。
『かあさま』
耳元で声がする。
果たして誰の声であったか。
『かあさま、こわい夢を見たの?』
返事をする事が出来ない。
『いいのよ、かあさま。こわがっても』
優しくささやく。
『夢はかあさまの世界なんだから』
私は、再び眠りに落ちた。
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