2011-01-24(Mon)
小説・さやか見参!2(68)
『あ、さやか殿!』
祠から戻ると心太郎は目を覚ましていた。
『大丈夫だったっシュか?』
上半身を起こしていた心太郎が立ち上がろうとする。
『まだ休んでて。あんたこそ大丈夫なの?』
『今度こそ本当に大丈夫っシュ!…でも…お腹すいたっシュ…』
さやかは片膝を付いて心太郎に顔を寄せた。
『あんたねぇ。私は食事も摂らずに朝から走り回ってたんですけど!あんたはただ寝てただけでしょ!?』
『う…そう言われれば確かにそうっシュ…申し訳ないっシュ…』
うつむいた心太郎の額にさやかが掌を当てる。
『熱はだいぶん下がったみたいね。陽が完全に落ちたら一緒に行くわよ』
そう言って腰の袋から蛇肉の燻製を取り出し心太郎に渡した。
心太郎の顔がぱあっと明るくなる。
受け取った燻製を齧りながら
『それらしい所は見つかったっシュか?』
と訊くと、さやかは若干自信なさそうに
『うーん…怪しいのは多分この辺りかなぁって所はあったんだけど…』
と答えた。
先ほど鬼神の祠に手を合わせた後、さやかは更に奥に進んでみた。
何か手掛かりがあるとするならこの辺りしかないと思ったからだ。
少し進むと足下が岩から土に変わった。
足を踏み入れるとわずかに沈み込む。
かなり水分を含んでいるようだ。
構わずに歩を進めると、ますます深く沈んでいく。
さやかは用心して一旦岩場に戻った。
そして枯れた木の枝を拾うと、今度は身体の重量を消して湿った土の上にふわりと乗った。
不思議な事に、さやかは柔らかい土に沈む事なくみずすましの様にすいすいと進んだ。
そして半ば辺りで枝を泥中に刺してみる。
すると一尺はあろうかという枝は手元まで簡単に埋まり、底に当たる気配はなかった。
さやかは枝を抜いて数歩進み、また枝を刺した。
数ヶ所で試してみたがどこも同じ結果である。
忍びの術でも使えれば別だが、そうでない者がうかつに足を踏み入れればたちまち泥の底に飲み込まれてしまうだろう。
つまりこれは底なし沼なのだ。
大きく窪んだ場所に雨水や土砂が堆積して出来たのだろうか。
干上がっていないところを見ると、岩から水が染み出しているのかもしれない。
迂回して奥に進めないかと思ったが、左右を絶壁に切り立った岩山に挟まれていて足を着ける場所がない。
自分達のような忍びならともかく、これでは人は通れまい。
さやかは奥に進むのをやめた。
そうして他の場所を調べてから洞窟に戻ってきたのだ。
何かあるなら祠の辺りしかない。
いや、
祠の辺りしか思い当たらない、というのが正直な所であった。
そして、さやかと心太郎は日暮れを待って祠に向かう事になったのである。
祠から戻ると心太郎は目を覚ましていた。
『大丈夫だったっシュか?』
上半身を起こしていた心太郎が立ち上がろうとする。
『まだ休んでて。あんたこそ大丈夫なの?』
『今度こそ本当に大丈夫っシュ!…でも…お腹すいたっシュ…』
さやかは片膝を付いて心太郎に顔を寄せた。
『あんたねぇ。私は食事も摂らずに朝から走り回ってたんですけど!あんたはただ寝てただけでしょ!?』
『う…そう言われれば確かにそうっシュ…申し訳ないっシュ…』
うつむいた心太郎の額にさやかが掌を当てる。
『熱はだいぶん下がったみたいね。陽が完全に落ちたら一緒に行くわよ』
そう言って腰の袋から蛇肉の燻製を取り出し心太郎に渡した。
心太郎の顔がぱあっと明るくなる。
受け取った燻製を齧りながら
『それらしい所は見つかったっシュか?』
と訊くと、さやかは若干自信なさそうに
『うーん…怪しいのは多分この辺りかなぁって所はあったんだけど…』
と答えた。
先ほど鬼神の祠に手を合わせた後、さやかは更に奥に進んでみた。
何か手掛かりがあるとするならこの辺りしかないと思ったからだ。
少し進むと足下が岩から土に変わった。
足を踏み入れるとわずかに沈み込む。
かなり水分を含んでいるようだ。
構わずに歩を進めると、ますます深く沈んでいく。
さやかは用心して一旦岩場に戻った。
そして枯れた木の枝を拾うと、今度は身体の重量を消して湿った土の上にふわりと乗った。
不思議な事に、さやかは柔らかい土に沈む事なくみずすましの様にすいすいと進んだ。
そして半ば辺りで枝を泥中に刺してみる。
すると一尺はあろうかという枝は手元まで簡単に埋まり、底に当たる気配はなかった。
さやかは枝を抜いて数歩進み、また枝を刺した。
数ヶ所で試してみたがどこも同じ結果である。
忍びの術でも使えれば別だが、そうでない者がうかつに足を踏み入れればたちまち泥の底に飲み込まれてしまうだろう。
つまりこれは底なし沼なのだ。
大きく窪んだ場所に雨水や土砂が堆積して出来たのだろうか。
干上がっていないところを見ると、岩から水が染み出しているのかもしれない。
迂回して奥に進めないかと思ったが、左右を絶壁に切り立った岩山に挟まれていて足を着ける場所がない。
自分達のような忍びならともかく、これでは人は通れまい。
さやかは奥に進むのをやめた。
そうして他の場所を調べてから洞窟に戻ってきたのだ。
何かあるなら祠の辺りしかない。
いや、
祠の辺りしか思い当たらない、というのが正直な所であった。
そして、さやかと心太郎は日暮れを待って祠に向かう事になったのである。
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