2011-01-22(Sat)
小説・さやか見参!2(66)
さやかが洞窟に戻ると、心太郎は虎の毛皮にくるまってすやすやと眠っていた。
寝返りを打ったせいか濡らした手拭いは地面に落ちている。
額に手を当てると、熱は若干下がっているようだ。
さやかは安堵のため息をついた。
手拭いを拾い、近くの水で洗ってから固く絞る。
どこかでわずかに湧いた水が流れて岩の窪みに流れこんでいるのだ。
さやかはそれを手ですくって飲んだ。
喉に染みる。
しかし山吹の水とは味が違うようだ。
こちらの方が若干飲みにくい。
緑の豊富な山吹の水と岩ばかりの高陵山では水の味まで違うのか。
鉱物の影響があるのかもしれない。
海の側でもあるし、鉱床がある可能性も考えられる。
そういえば…
さやかは思い出す。
ここへ来る途中、山の麓の目立たぬ集落で、製鉄所らしき建物を何軒か見た。
この付近で採れた鉱石を加工していたのだろうか。
しかし、さやかの見た所そこは使われぬようになって四年から五年は経っていた。
ならばもう採石は行なわれていないのかもしれない。
そんな事を考えながら洞窟に戻り、先ほど湿した手拭いを心太郎の額に乗せる。
心太郎は少しだけ反応したが目を覚ます事はなかった。
楽しい夢でも見ているのか、その寝顔は無防備に微笑んでいる。
『少しは緊張感を持ちなさいよ。駄目忍者』
さやかは小さな声で悪態を突いた。
しかしその声に邪気は感じられない。
身体からずれ落ちた毛皮をかけ直し、傍らに小さな花を置く。
途中で摘んだ白い花だ。
その茎に葉は一枚も付いていなかった。
薬学の知識を持つ謎の人物の仕業だろう。
本当に小さな花だが、薄暗い洞窟では白い花弁が輝いて見える。
もし自分がいない間に心太郎が目を覚ましても、これがあれば一度戻ってきた事が分かるだろう。
三流忍者は世話が焼ける…
さやかは何だか少しおかしくなって、微笑みながら洞窟を出た。
さっきはこの洞窟の西を調べた。
次は東だ。
さやかは人の通った痕跡を求めて再び走り出した。
寝返りを打ったせいか濡らした手拭いは地面に落ちている。
額に手を当てると、熱は若干下がっているようだ。
さやかは安堵のため息をついた。
手拭いを拾い、近くの水で洗ってから固く絞る。
どこかでわずかに湧いた水が流れて岩の窪みに流れこんでいるのだ。
さやかはそれを手ですくって飲んだ。
喉に染みる。
しかし山吹の水とは味が違うようだ。
こちらの方が若干飲みにくい。
緑の豊富な山吹の水と岩ばかりの高陵山では水の味まで違うのか。
鉱物の影響があるのかもしれない。
海の側でもあるし、鉱床がある可能性も考えられる。
そういえば…
さやかは思い出す。
ここへ来る途中、山の麓の目立たぬ集落で、製鉄所らしき建物を何軒か見た。
この付近で採れた鉱石を加工していたのだろうか。
しかし、さやかの見た所そこは使われぬようになって四年から五年は経っていた。
ならばもう採石は行なわれていないのかもしれない。
そんな事を考えながら洞窟に戻り、先ほど湿した手拭いを心太郎の額に乗せる。
心太郎は少しだけ反応したが目を覚ます事はなかった。
楽しい夢でも見ているのか、その寝顔は無防備に微笑んでいる。
『少しは緊張感を持ちなさいよ。駄目忍者』
さやかは小さな声で悪態を突いた。
しかしその声に邪気は感じられない。
身体からずれ落ちた毛皮をかけ直し、傍らに小さな花を置く。
途中で摘んだ白い花だ。
その茎に葉は一枚も付いていなかった。
薬学の知識を持つ謎の人物の仕業だろう。
本当に小さな花だが、薄暗い洞窟では白い花弁が輝いて見える。
もし自分がいない間に心太郎が目を覚ましても、これがあれば一度戻ってきた事が分かるだろう。
三流忍者は世話が焼ける…
さやかは何だか少しおかしくなって、微笑みながら洞窟を出た。
さっきはこの洞窟の西を調べた。
次は東だ。
さやかは人の通った痕跡を求めて再び走り出した。
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