2011-01-20(Thu)
小説・さやか見参!(65)
心太郎に丸薬を飲ませるとさやかはすぐに山中の捜索を始めた。
昼の間に鬼が現れそうな場所を絞ろう。
そして今晩には噂の正体を解き明かして早く里に帰ろう。
心太郎の体調を慮ってそう考えていたのだ。
そうだ。
まずは祠を探してみよう。
そこは鬼が祠られたと言われている場所である。
何か手掛かりがあるかもしれない。
さやかは登る事も下る事もせず山を取り巻くように走った。
神であれ鬼であれ祠られていたという事は祠る者がいたという事である。
ならば人が通っていた痕跡があるはずだ。
それが祠へ通じる道となるだろう。
もし祠に行き着かなかったとしても、人が動いた痕跡は重要な手掛かりになる。
さやかは岩が途切れている場所や、少しでも平らに拓かれたような場所を見つけては重点的に調べた。
前日は到着した時間が遅かった為に大まかにしか見ていなかったが、じっくり調べてみると新しい発見がある。
一番に気になったのは、意外に植物が自生していた事であった。
樹木は少ないが小さな草花はあちこちに姿を見せており、それが人の手で採取された形跡があった。
薬草の類だろうか。
それなりの知識があるさやかにも分からない植物だ。
おそらくこの岩盤と潮風が生み出したこの地域固有の薬草なのだろう。
だとしたら薬草を摘んだのはこの土地の者か。
薬草には葉を使う物、茎を使う物、根を使う物、花弁を使う物があるのだが、足下の植物からは必要な部分だけが採取されているようだ。
先端の花だけが切られている物、
葉が全て摘まれている物、
茎が必要な物は根だけを残して、
根が必要な物は文字通り『根こそぎ』採取されたのだろう。
人の入らぬ荒れ山かと思っていたが、かなり知識がある者が薬草を採りに来ているのだ。
地元の医者だろうか。
ならばその者が鬼の正体?
いや、鬼が現われるのは夜更けである。
薬草を摘みに来た医者が深夜に山歩きをする必要はない。
しかしこの山に人が分け入っている事は分かった。
とりあえず一旦心太郎の所に戻ろう。
『あの子を一人で残しておくのはやっぱり不安だわ』
そう思い、走り出そうとして足を止めた。
『薬草なら摘んでいこうかしら』
心太郎の回復に役立つかもしれない。
しかしすぐに思い直して来た道を走り始めた。
薬草の必要な部分は全て摘まれていたし、もし残っていたとしても何に効果があるのかさやかには分からないからだ。
鎮痛、解熱の丸薬はまだわずかに残っているからどうにか保つだろう。
昼の間に鬼が現れそうな場所を絞ろう。
そして今晩には噂の正体を解き明かして早く里に帰ろう。
心太郎の体調を慮ってそう考えていたのだ。
そうだ。
まずは祠を探してみよう。
そこは鬼が祠られたと言われている場所である。
何か手掛かりがあるかもしれない。
さやかは登る事も下る事もせず山を取り巻くように走った。
神であれ鬼であれ祠られていたという事は祠る者がいたという事である。
ならば人が通っていた痕跡があるはずだ。
それが祠へ通じる道となるだろう。
もし祠に行き着かなかったとしても、人が動いた痕跡は重要な手掛かりになる。
さやかは岩が途切れている場所や、少しでも平らに拓かれたような場所を見つけては重点的に調べた。
前日は到着した時間が遅かった為に大まかにしか見ていなかったが、じっくり調べてみると新しい発見がある。
一番に気になったのは、意外に植物が自生していた事であった。
樹木は少ないが小さな草花はあちこちに姿を見せており、それが人の手で採取された形跡があった。
薬草の類だろうか。
それなりの知識があるさやかにも分からない植物だ。
おそらくこの岩盤と潮風が生み出したこの地域固有の薬草なのだろう。
だとしたら薬草を摘んだのはこの土地の者か。
薬草には葉を使う物、茎を使う物、根を使う物、花弁を使う物があるのだが、足下の植物からは必要な部分だけが採取されているようだ。
先端の花だけが切られている物、
葉が全て摘まれている物、
茎が必要な物は根だけを残して、
根が必要な物は文字通り『根こそぎ』採取されたのだろう。
人の入らぬ荒れ山かと思っていたが、かなり知識がある者が薬草を採りに来ているのだ。
地元の医者だろうか。
ならばその者が鬼の正体?
いや、鬼が現われるのは夜更けである。
薬草を摘みに来た医者が深夜に山歩きをする必要はない。
しかしこの山に人が分け入っている事は分かった。
とりあえず一旦心太郎の所に戻ろう。
『あの子を一人で残しておくのはやっぱり不安だわ』
そう思い、走り出そうとして足を止めた。
『薬草なら摘んでいこうかしら』
心太郎の回復に役立つかもしれない。
しかしすぐに思い直して来た道を走り始めた。
薬草の必要な部分は全て摘まれていたし、もし残っていたとしても何に効果があるのかさやかには分からないからだ。
鎮痛、解熱の丸薬はまだわずかに残っているからどうにか保つだろう。
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