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2008-09-06(Sat)

殺陣問答・Ⅱ

以前このブログの『殺陣問答』という回で、

高名な殺陣師が
「実から虚を作るのが本来の殺陣だが、現在は虚から虚を作る殺陣が多い」と苦言を呈している(5月のブログ『殺陣について』参照)のに対し、身内から
「エンターテイメントとして見せるのなら虚も実も関係なく、お客さんが喜べばいいんじゃないのか?」
という意見が出た。

というような話を書いた。

それ以来この問題は自分の中にずっとひっかかっていて、事ある毎に考え込んでしまう。

しかし、僕個人は実から虚を作るのがやはり本来の姿だと思う。

殺陣というのは実戦を演技に昇華したものであり、型の組み合わせで構成されている。

かつて殺陣師と呼ばれた先達は武術を体得している方も多かったという。
それゆえ実戦を原点として、そこから演技に発展させる事が出来たのだ。

この状態で出来た型を『オリジナル』だとしよう。

オリジナルは師から門弟へ、直々に伝えられていった。
この時点では多少個人による風格の違いが生まれていたとしても、まだオリジナルである。
何故なら師匠が持つ100%を弟子が全て受け継ぐ事が出来るから。

ところがそれは稽古上の話であって、映画やテレビ、舞台での殺陣は必要な物を必要に応じてアレンジするので『オリジナルから5%だけを抽出して変形させた物』になってしまう。

この、『オリジナルから5%だけを抽出して変形させる』という行為が『実から虚を作る』という事だ。

すなわち、実際の殺陣師につく事無く、メディアを見て殺陣を覚えた者にとっては、『オリジナルから5%だけを抽出して変形させた物』がオリジナルになるワケだ。

そして正規のオリジナルの5%しか持ってない人間が、その中の5%を使って殺陣を作り出す
出来上がった物は5%のさらに5%。
微々たる力しかない殺陣。

これが『虚から虚を作る』という事。

もし、この5%の5%を見て殺陣を覚えた人間がいたら??

5%の5%の5%・・・
当然僕も含めて、このレベルの者が多いのである。
殺陣師の先生はそれを憂いていたのだ。


本場フランスで修業した一流シェフの料理A。

Aを食べた別のシェフが記憶や知識を元に再現した料理B。

Bを食べた主婦が家庭で再現してみた料理C。

AとCの間には明らかな味の違い、材料の違い、技術の違いがあると思われる(家庭の味を卑下するワケではないです)。

主婦がプロの料理人になった時、その家庭料理Cを「お客さんが美味しいと言っているから」という理由で一流シェフの料理Aと並べる事が出来るだろうか??
一流の料理を家庭的にアレンジする事は常套ではあるが、AとCを並べてみたら、それが全く別物である事は一目瞭然だろう。


・・・これはプロとアマチュアの差を自覚出来ているかどうかの例え話だ。

美味しい家庭料理で終わっているうちはアマチュアなのだ。
プロとして作るならば一流の家庭料理を目指すべきだ。
他人に食べさせる以上美味しいのは最低限の前提であり、プロはそこがスタートラインなのだ。




一流とは『相手(客)をなめてかからない事』だと思う。



「エンターテイメントだから客が喜べば本格的じゃなくてもいいじゃないか」
というのはつまり、
「客もそんなに期待しないで俺らを観てるんだから、何となく上手い事やりゃ喜ぶだろうよ」
という事だ。
それの何がエンターテイメントだ。エンターテイナーってそんなもんじゃないだろう。

だからやはり『虚から虚を作る人間』が『実から虚を作る人間』と同じ位置に立つ事は出来ないのである。

僕も未だ実を知らず虚のみを持っているエセエンターテイナーだ。

だからせめて、いつまでも実を掴む努力と、現在実を持たぬ自覚だけは忘れないようにしようと思う。



考えた結果こうなりました。

長い独り言だと思って勘弁して下さい。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

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