2010-12-18(Sat)
小説・さやか見参!(46)
『俺達十二組の忍びはさ、戦がやりたくて技を磨いてるワケじゃないだろ。
でも今の世の中じゃどうしても戦いの…敵の命を奪う為の技になってしまう。
だからさ、俺は天下を変えたい。
誰もが冷たく重い心を持たなくて済むように、戦のない、争いのない天下を作りたい。
…この国のみんなが、さやかみたいににこにこ笑って暮らせる平和な世界を作りたいんだ。』
たけるがここまで熱く語る事は珍しかった。
さやかも知らなかった兄の一面であった。
『俺達はさ、その為に…みんなが笑って暮らせる平和な世界を作る為に戦わなくちゃいけないんだ。
俺はその為に戦う。
戦って戦って、命尽きるまで必死に戦えば世の中も少しは変わるかもしれない。
一つの命と引き換えに、平和へと一歩近付く…
俺は…そう信じてる…』
戦いのない世界を作る為に戦わなくてはならない。
その矛盾にはたけるも気付いている。
そしてその為の犠牲は自分一人で済まない事も分かっている。
『忍びってのは、その為に存在するのかもしれないな…』
たけるの独白は少し寂しそうに聞こえる。
しかし、その寂しさは我が身の不運を憂いたからではない。
妹、さやかもその運命の渦中から逃れられぬ事を悟った故の寂しさだ。
『俺達が…平和を願う全ての忍びが命を懸ければ…命尽きるまで戦い続ければ必ず世界は変わる…俺はそう信じてる…』
これはあくまでもたけるの願望に過ぎない。
だからここ数日、さやかに伝えるべきか迷っていた。
しかし、
伝えるならば今しかない
何故かそう思ったのだ。
『うん、分かった』
さやかがにっこり笑ってうなずいた。
命の懸かった話だとは思えないほど無邪気な返事だ。
『私も死ぬまで戦う。そうしたらみんなにこにこ笑顔になれるんだよね?』
妹のいじらしさにたけるは胸が痛んだ。
だが平静を保たなければ。
『そうだ。やっぱりさやかは偉いな』
『だってね、たける兄ちゃんはそれがいいって思ってるんでしょ?』
『ああ』
『たける兄ちゃんがそう思うんなら私もそう思うに決まってんじゃ~ん』
さやかはちょっとませた感じに語尾を伸ばした。
そして、すこしの沈黙の後、伏し目がちな笑顔になって言った。
『おまつりにね、たくさん人がいたでしょ?
みんなね、いっぱい笑って楽しそうだった。
あの人達は忍者じゃないんだよね?』
『うん』
『あの人達がさ、私達みたいに戦う事になったらさ、私、嫌だ。
あの人達が兵衛みたいに死んじゃったら私嫌だ』
兵衛とは一角衆に操られ、くちなわに殺された山吹の下忍だ。
さやかは兵衛の首を塚に埋めたのだ。
『だったら私が戦うわ。
だって私は山吹の忍者だもん。
平和の為に戦うのが忍者だもん。
それで里の人達が笑っていられるなら、私、お兄ちゃんと一緒に死ぬまで戦う』
妹にこんな言葉を吐かせなければならないとは…
たけるは己の罪深さを噛み締めた。
しかし気持ちとはうらはらに
『さすがは俺の妹だ。
みんなが笑っていられるように、俺達は死ぬまで戦おう。
約束だぞ』
と小指を出した。
でも今の世の中じゃどうしても戦いの…敵の命を奪う為の技になってしまう。
だからさ、俺は天下を変えたい。
誰もが冷たく重い心を持たなくて済むように、戦のない、争いのない天下を作りたい。
…この国のみんなが、さやかみたいににこにこ笑って暮らせる平和な世界を作りたいんだ。』
たけるがここまで熱く語る事は珍しかった。
さやかも知らなかった兄の一面であった。
『俺達はさ、その為に…みんなが笑って暮らせる平和な世界を作る為に戦わなくちゃいけないんだ。
俺はその為に戦う。
戦って戦って、命尽きるまで必死に戦えば世の中も少しは変わるかもしれない。
一つの命と引き換えに、平和へと一歩近付く…
俺は…そう信じてる…』
戦いのない世界を作る為に戦わなくてはならない。
その矛盾にはたけるも気付いている。
そしてその為の犠牲は自分一人で済まない事も分かっている。
『忍びってのは、その為に存在するのかもしれないな…』
たけるの独白は少し寂しそうに聞こえる。
しかし、その寂しさは我が身の不運を憂いたからではない。
妹、さやかもその運命の渦中から逃れられぬ事を悟った故の寂しさだ。
『俺達が…平和を願う全ての忍びが命を懸ければ…命尽きるまで戦い続ければ必ず世界は変わる…俺はそう信じてる…』
これはあくまでもたけるの願望に過ぎない。
だからここ数日、さやかに伝えるべきか迷っていた。
しかし、
伝えるならば今しかない
何故かそう思ったのだ。
『うん、分かった』
さやかがにっこり笑ってうなずいた。
命の懸かった話だとは思えないほど無邪気な返事だ。
『私も死ぬまで戦う。そうしたらみんなにこにこ笑顔になれるんだよね?』
妹のいじらしさにたけるは胸が痛んだ。
だが平静を保たなければ。
『そうだ。やっぱりさやかは偉いな』
『だってね、たける兄ちゃんはそれがいいって思ってるんでしょ?』
『ああ』
『たける兄ちゃんがそう思うんなら私もそう思うに決まってんじゃ~ん』
さやかはちょっとませた感じに語尾を伸ばした。
そして、すこしの沈黙の後、伏し目がちな笑顔になって言った。
『おまつりにね、たくさん人がいたでしょ?
みんなね、いっぱい笑って楽しそうだった。
あの人達は忍者じゃないんだよね?』
『うん』
『あの人達がさ、私達みたいに戦う事になったらさ、私、嫌だ。
あの人達が兵衛みたいに死んじゃったら私嫌だ』
兵衛とは一角衆に操られ、くちなわに殺された山吹の下忍だ。
さやかは兵衛の首を塚に埋めたのだ。
『だったら私が戦うわ。
だって私は山吹の忍者だもん。
平和の為に戦うのが忍者だもん。
それで里の人達が笑っていられるなら、私、お兄ちゃんと一緒に死ぬまで戦う』
妹にこんな言葉を吐かせなければならないとは…
たけるは己の罪深さを噛み締めた。
しかし気持ちとはうらはらに
『さすがは俺の妹だ。
みんなが笑っていられるように、俺達は死ぬまで戦おう。
約束だぞ』
と小指を出した。
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