2010-12-17(Fri)
小説・さやか見参!(44)
さやかは、たけるの表情を読む事が出来ずに不安げな顔をしていた。
それに気付いたたけるは笑顔を見せてまた手裏剣を折った。
さやかの前に色とりどりの手裏剣が置かれていく。
『すごいねー。本物みたい!』
それを聞いてたけるは手元から目を逸らさずに
『そうか。…俺は本物より折り紙の手裏剣が好きだ』
と微笑んだ。
そして、
『そうだ。明日晴れたらさやかに教えておきたい事があるんだ。
朝の修行が終わったら屋敷の裏においで』
そう言ってもう一度笑った。
この日の夜、十二組に関わる六人の忍びが人知れず命を奪われていた。
発覚するのは後日の事である。
そして翌朝―
朝日が昇り終わったばかりの空は、前日のどんよりとした雲が嘘のような青さを見せている。
修行を終えたさやかが屋敷の裏に駆け込むと、広い庭でたけると配下の中忍二人が休憩していた。
さやかは地面を見る。
かなり激しい修行をしていたのだろう。
微かな足跡がうっすらと見えている。
しかしそれは中忍二人のものだけである。
たけるはいかに激しく動こうとも、決して足跡を残さないのだ。
『早かったな』
たけるの笑顔は朝日に照らされて一層にまぶしい。
『うん!急いで帰ってきたもん!ね、お兄ちゃん!私に教えたい事ってなに?』
さやかの笑顔もまたまぶしかった。
『さやか、その顔は…何か奥義でも教えてもらえると思ってるな?』
たけるがにやりと笑う。
『えっ…違うの!?』
『うーん…奥義といえば奥義かなぁ…』
そう言いながら懐から昨日作った折り紙の手裏剣を5~6枚取り出した。
『俺はこの手裏剣を使う。あの二人は本物を使う』
中忍達はそれぞれ十数枚の鉄の手裏剣をさやかに見せた。
『これで本気で戦ったらどうなると思う?』
『え…えーっ!それは…うーん…たける兄ちゃんだったら負けないだろうけど…紙の手裏剣じゃ戦えないよぉ…』
『そうかな?』
そう言った瞬間に中忍が手裏剣を打った。
後方に跳び退いたさやかの前を鉄の武具が勢い良く飛ぶ。
たけるは軽く、すいと後ろに下がった。
左右からたけるの心臓めがけて放たれた手裏剣はたけるの前で交差して、また左右に分かれて飛び去った。
中忍達は刀を抜いてたけるに襲いかかる。
するどい攻撃の合間に拳や脚まで繰り出してくるのだからなかなか手強い。
しかも二人がかりである。
しかし、不利に思えるたけるは全ての攻撃を軽くかわしていた。
たけるの動きは常に静かで柔らかい。
そして何よりも速い。
だが中忍とてたけるの配下の者達だ。
かなりの手練れである。
攻撃に隙がない。
刀を使いながらも、距離が縮まれば拳脚で、離れれば手裏剣で、執拗に攻めてくる。
下手をすれば大怪我をするか、もしくは命を落としそうだが、これが忍びの修行なのだ。
たけると中忍の距離が開いた。
中忍達が手裏剣を打つ。
一瞬で5枚の手裏剣がたけるめがけて飛んだ。
1つは心臓めがけて、
1つは頭、1つは脚めがけて、
そして左右に1つずつ。
山吹では『十字打ち』または『五点打ち』と呼ばれている基本の打ち方である。
上下左右中央に同時に迫る手裏剣をかわすは至難の技だ。
ましてやこの二人の鋭い打ちを。
さやかは一瞬たけるの身を案じた。
だが、たけるはまるで手裏剣をすり抜けるように前に出た。
たとえ同時に飛んだように見えても、二人で五枚を打つのだからわずかに時間差が出来る。
たけるはその隙間を縫って前に進んだのだ。
手裏剣はただ空を切って飛び去っていく。
たけるは前に進みざまに回転し、二人に紙の手裏剣を投げた。
それに気付いたたけるは笑顔を見せてまた手裏剣を折った。
さやかの前に色とりどりの手裏剣が置かれていく。
『すごいねー。本物みたい!』
それを聞いてたけるは手元から目を逸らさずに
『そうか。…俺は本物より折り紙の手裏剣が好きだ』
と微笑んだ。
そして、
『そうだ。明日晴れたらさやかに教えておきたい事があるんだ。
朝の修行が終わったら屋敷の裏においで』
そう言ってもう一度笑った。
この日の夜、十二組に関わる六人の忍びが人知れず命を奪われていた。
発覚するのは後日の事である。
そして翌朝―
朝日が昇り終わったばかりの空は、前日のどんよりとした雲が嘘のような青さを見せている。
修行を終えたさやかが屋敷の裏に駆け込むと、広い庭でたけると配下の中忍二人が休憩していた。
さやかは地面を見る。
かなり激しい修行をしていたのだろう。
微かな足跡がうっすらと見えている。
しかしそれは中忍二人のものだけである。
たけるはいかに激しく動こうとも、決して足跡を残さないのだ。
『早かったな』
たけるの笑顔は朝日に照らされて一層にまぶしい。
『うん!急いで帰ってきたもん!ね、お兄ちゃん!私に教えたい事ってなに?』
さやかの笑顔もまたまぶしかった。
『さやか、その顔は…何か奥義でも教えてもらえると思ってるな?』
たけるがにやりと笑う。
『えっ…違うの!?』
『うーん…奥義といえば奥義かなぁ…』
そう言いながら懐から昨日作った折り紙の手裏剣を5~6枚取り出した。
『俺はこの手裏剣を使う。あの二人は本物を使う』
中忍達はそれぞれ十数枚の鉄の手裏剣をさやかに見せた。
『これで本気で戦ったらどうなると思う?』
『え…えーっ!それは…うーん…たける兄ちゃんだったら負けないだろうけど…紙の手裏剣じゃ戦えないよぉ…』
『そうかな?』
そう言った瞬間に中忍が手裏剣を打った。
後方に跳び退いたさやかの前を鉄の武具が勢い良く飛ぶ。
たけるは軽く、すいと後ろに下がった。
左右からたけるの心臓めがけて放たれた手裏剣はたけるの前で交差して、また左右に分かれて飛び去った。
中忍達は刀を抜いてたけるに襲いかかる。
するどい攻撃の合間に拳や脚まで繰り出してくるのだからなかなか手強い。
しかも二人がかりである。
しかし、不利に思えるたけるは全ての攻撃を軽くかわしていた。
たけるの動きは常に静かで柔らかい。
そして何よりも速い。
だが中忍とてたけるの配下の者達だ。
かなりの手練れである。
攻撃に隙がない。
刀を使いながらも、距離が縮まれば拳脚で、離れれば手裏剣で、執拗に攻めてくる。
下手をすれば大怪我をするか、もしくは命を落としそうだが、これが忍びの修行なのだ。
たけると中忍の距離が開いた。
中忍達が手裏剣を打つ。
一瞬で5枚の手裏剣がたけるめがけて飛んだ。
1つは心臓めがけて、
1つは頭、1つは脚めがけて、
そして左右に1つずつ。
山吹では『十字打ち』または『五点打ち』と呼ばれている基本の打ち方である。
上下左右中央に同時に迫る手裏剣をかわすは至難の技だ。
ましてやこの二人の鋭い打ちを。
さやかは一瞬たけるの身を案じた。
だが、たけるはまるで手裏剣をすり抜けるように前に出た。
たとえ同時に飛んだように見えても、二人で五枚を打つのだからわずかに時間差が出来る。
たけるはその隙間を縫って前に進んだのだ。
手裏剣はただ空を切って飛び去っていく。
たけるは前に進みざまに回転し、二人に紙の手裏剣を投げた。
スポンサーサイト