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2010-12-13(Mon)

小説・さやか見参!(38)

話は少しさかのぼる。

たけるとさやかが街へ降りてしばらくしての事だった。

くちなわはまた女神様の像の前に来ていた。

うかを斬り、かがちを殺めたのはすでに昨日の事だ。

くちなわは女神様の顔を見る。

この優しげな像は、かつてくちなわの妻、かすみであった。

この優しげな像は、かつてくちなわの育ての母、かがちであった。

くちなわは思う。

あの者達が自分に向けていた笑顔は何だったのだ。

自分を包み癒してくれたあの優しさは一体。

あれが偽りだったとしたならば、
誰の笑顔を、誰の優しさを信じていけば良いのか。

師であり父であったみずち。

かの人だけが本当に自分を愛してくれた…

くちなわの脳裏に、みずちの優しい顔が、そして厳しい顔が映し出された。

あの厳しさは、優しさゆえであった。

次に妻の顔が、
優しかった妻、一角衆としての本性を現した妻、
あの優しさは本性を隠す為であった。

かがちの顔が浮かんだ。
優しくも厳しかった母、
自分を殺そうとした母、

あの優しさは俺に向けたものではなかった。
息子の幻に向けた優しさだ。
たまたまそこに俺がいたというだけの事だ。

女の優しさなどはまやかしか。

ならばこの女神様の微笑みすら真実ではないのかもしれん…

くちなわはそこまで考えて思考を止めた。

囲まれている。

しかもかなりの人数だ。

まだ範囲は広いがじわじわと詰めて来るのが分かる。

この距離で気配を悟られるぐらいだから中忍以下の者達であろう。

しかしこの布陣…

おそらくは自分を二重の輪で取り巻いている。

外側には五角形を、
内側には五芒星(いわゆる☆の形)を象った輪が作られているはず。

この輪に囲まれた者は、五芒星のいずれかの先端に追い詰められる事になる。

一旦追い詰められたが最後、布陣は十重二十重の円となり、内側の第一陣を倒しても後列の二陣が、それをかわせば三陣が、その後列が、と、際限なく攻めて来る。
いずれ疲れた所でとどめを刺すというのがこの陣形だ。

山吹流が用いる特殊な陣の形である。

…まさか山吹が…?

たけるの柔和な表情が思い浮かぶ。

しかし今は考えている場合ではない。

この陣は距離が詰まるほど脱出が困難になる。

まだ今なら。

くちなわは走った。

どこに向かって走っても必ず敵がいる。

ならば地の利だけを考えて一直線に走れば良い。

くちなわはまるで、滑空する燕のように軽く速く走った。

やがて五芒星の陣を成す者達が見えた。

見覚えがある。

山吹の下忍どもだ。

やはり山吹が…

くちなわは走りながら叫んだ。

『山吹の下忍だな!これは頭領、武双殿の命によるものか!』

すると正面の下忍が槍を構えながら答えた。

『否!我らの新しい頭領の命である!』

くちなわの判断が一瞬にぶった。

武双ではなく新しい頭領の命という事は…

俺を討つようこやつらに命じたのは…

『たける…山吹たけるの刺客かぁっ!』

絶叫するくちなわに無数の手裏剣が放たれた。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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