2010-12-08(Wed)
小説・さやか見参!(28)
くちなわの振り下ろす刀を受けた偽者のうかはすかさず口から毒針を吹いた。
わずかな距離から放たれた攻撃をくちなわが身体を左にねじってよける。
その隙にうかは己の刀を滑らせくちなわの喉を薙いだ。
と同時に左脚でくちなわの大腿部の裏側辺りを蹴った。
至近から繰り出される前後の攻撃など普通なら躱せまい。
だがくちなわは上半身を大きく反らし、そして両脚を前方に振り上げ宙に跳ぶ事でそれをよけた。
その反動を利用して右脚でうかの頭部めがけて蹴る。
うかはとっさに右腕でそれを受ける。
くちなわは止められた瞬間に空宙で身体を左にひねった。
同時に右脚でうかの右腕を固定し、左脚のかかとをうかの頭めがけて、ぶんっと振った。
うかは身を低くしてそれを躱す。
くちなわは回転してから屋根に着地した。
瓦に足が触れた瞬間うかの刀が身体を払った。
だがくちなわは着地の反動を使って、更に回転しながら屋根から跳ぶ。
地上に着くまでのわずかな間に屋根からおびただしい手裏剣が飛んだ。
くちなわは回転しながら全てを刀ではじき返し着地する。
頭上には刀を大きく振りかぶったうかが迫っていた。
それに向かってくちなわが刀を斬り上げようとした時、うかの右足の爪先から6~7寸ほどの刃が飛び出した。
振り上げた刀は陽動で、この足技を狙っていたのだ。
目の前のくちなわに向かって、落下の勢いを加えた必殺の蹴りを繰り出すうか。
くちなわは大きく右に向かって飛び退き、そのまま地面を転がった。
そして立ち上がり様にそのまま右へ走る。うかも追う。
二人は同時に林の中に入った。
木々が立ち並び薄暗く、足元には倒木だの切り株だの蔦が絡まったような植物だの色々な物があったが、彼らほどの忍びにはその程度何の障害にもならない。
ものすごい速さで木々の間を走り抜ける。
木々の隙間を走っていると、刹那とはいえ敵が視界から木々の向こうに消える事がある。
だが、消えた、と思った瞬間には全く別の場所から斬りかかってきたりするのが忍者だ。
くちなわもうかも、まさに神出鬼没であった。
この戦い、並の忍びが見たならば、あたかもお互いが瞬間移動しながら戦っているように思えるだろう。
ましてや忍びでない者が見たならば二人の姿は見えないのではないだろうか。
『くちなわ、この林の事も俺は知ってる。
おまえに地の利はないぞ』
『それはどうかな』
くちなわの声が聞こえた瞬間、うかの動きがほんのわずか止まった。
それは高速移動の中の、ほんの痙攣的なよどみであったが、うかが
『しまった』
と思う間もなく、うかの胸にはくちなわの刃が深々と突き刺さっていた。
うかは言葉を発する事も出来ずに、目の前で自分に刀を突き刺したままニッと笑うくちなわを見た。
『ちょうどこの辺りの地中には水気を通しにくい岩盤があってな。
それに遮られた水がここにたまってよどむのだ。
つまりここは、荊木の砦の中で最も土が柔らかい場所。
気をつけねば上忍といえど足を取られますぞ』
うかは恨めしげに口を動かしたが、もう言葉が出ない。
『忍びたる者、情報に頼っておるだけではいけませぬなぁ。
拙者も心に刻まねば…
はっはっはっは!!』
くちなわは笑いながら、うかの胸に突き刺さった刃をぐるんと回転させた。
うかを名乗った敵はもう動かなかった。
わずかな距離から放たれた攻撃をくちなわが身体を左にねじってよける。
その隙にうかは己の刀を滑らせくちなわの喉を薙いだ。
と同時に左脚でくちなわの大腿部の裏側辺りを蹴った。
至近から繰り出される前後の攻撃など普通なら躱せまい。
だがくちなわは上半身を大きく反らし、そして両脚を前方に振り上げ宙に跳ぶ事でそれをよけた。
その反動を利用して右脚でうかの頭部めがけて蹴る。
うかはとっさに右腕でそれを受ける。
くちなわは止められた瞬間に空宙で身体を左にひねった。
同時に右脚でうかの右腕を固定し、左脚のかかとをうかの頭めがけて、ぶんっと振った。
うかは身を低くしてそれを躱す。
くちなわは回転してから屋根に着地した。
瓦に足が触れた瞬間うかの刀が身体を払った。
だがくちなわは着地の反動を使って、更に回転しながら屋根から跳ぶ。
地上に着くまでのわずかな間に屋根からおびただしい手裏剣が飛んだ。
くちなわは回転しながら全てを刀ではじき返し着地する。
頭上には刀を大きく振りかぶったうかが迫っていた。
それに向かってくちなわが刀を斬り上げようとした時、うかの右足の爪先から6~7寸ほどの刃が飛び出した。
振り上げた刀は陽動で、この足技を狙っていたのだ。
目の前のくちなわに向かって、落下の勢いを加えた必殺の蹴りを繰り出すうか。
くちなわは大きく右に向かって飛び退き、そのまま地面を転がった。
そして立ち上がり様にそのまま右へ走る。うかも追う。
二人は同時に林の中に入った。
木々が立ち並び薄暗く、足元には倒木だの切り株だの蔦が絡まったような植物だの色々な物があったが、彼らほどの忍びにはその程度何の障害にもならない。
ものすごい速さで木々の間を走り抜ける。
木々の隙間を走っていると、刹那とはいえ敵が視界から木々の向こうに消える事がある。
だが、消えた、と思った瞬間には全く別の場所から斬りかかってきたりするのが忍者だ。
くちなわもうかも、まさに神出鬼没であった。
この戦い、並の忍びが見たならば、あたかもお互いが瞬間移動しながら戦っているように思えるだろう。
ましてや忍びでない者が見たならば二人の姿は見えないのではないだろうか。
『くちなわ、この林の事も俺は知ってる。
おまえに地の利はないぞ』
『それはどうかな』
くちなわの声が聞こえた瞬間、うかの動きがほんのわずか止まった。
それは高速移動の中の、ほんの痙攣的なよどみであったが、うかが
『しまった』
と思う間もなく、うかの胸にはくちなわの刃が深々と突き刺さっていた。
うかは言葉を発する事も出来ずに、目の前で自分に刀を突き刺したままニッと笑うくちなわを見た。
『ちょうどこの辺りの地中には水気を通しにくい岩盤があってな。
それに遮られた水がここにたまってよどむのだ。
つまりここは、荊木の砦の中で最も土が柔らかい場所。
気をつけねば上忍といえど足を取られますぞ』
うかは恨めしげに口を動かしたが、もう言葉が出ない。
『忍びたる者、情報に頼っておるだけではいけませぬなぁ。
拙者も心に刻まねば…
はっはっはっは!!』
くちなわは笑いながら、うかの胸に突き刺さった刃をぐるんと回転させた。
うかを名乗った敵はもう動かなかった。
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