2010-11-29(Mon)
小説・さやか見参!(18)
今、たけるの本当の技量を知る者はわずかである。
妹であるさやかと…
『相変わらず見事だな』
不意に男の声がした。
さやかが驚いて振り返ると…
年の頃はたけると同じぐらいか。
長身。
こけた頬。
無精髭。
鋭くも優しい眼。
獣のように締まった筋肉に見慣れぬ黄と黒の毛皮を纏っている。
さやかの表情が明るくなった。
『雷牙!!』
男の名は雷牙。
虎組の跡取りである。
この男こそさやかと共に、たけるの技を知る人物であった。
さやかが駆け寄る。
『もう、雷牙!びっくりさせないでよ!』
『すまんすまん、でも気配を消したつもりはないぞ。
おまえが気付かなかっただけだ。なぁたける』
『あぁ。さやか、雷牙はもう一刻も前からその辺りにいたぞ』
『うそっ!』
『な?水の中のたけるが気付くんだから、ここにいて気付かないさやかが鈍いって事だろ』
『う~~っ!おにいちゃんは天才だから何でも分かっちゃうの!私は…私はどうせ天才じゃないもん…』
負けん気の強いさやかは涙声になった。
たけるがさやかの背を軽く叩く。
『泣くなよさやか。雷牙の口が悪いのは今に始まった事じゃないだろう?
それにな、俺は天才でも何でもない。
いつも言ってるだろ?努力の分だけ上達するんだって。
さやかも今まで通り修行を頑張れば俺ぐらいにはなれるさ。』
さやかはすねたように黙ってうつむいていたが、
『分かったか?』
とたけるに頭をなでられ、
『うん!』
と笑顔になった。
そして
『私もやってみる!』
と池に飛び込んでいったのだった。
それを見て穏やかな笑顔を見せる二人の男。
『天才なんかじゃない、か…』
雷牙がつぶやく。
『充分天才だと思うがねぇ。俺もおまえに負けないぐらい修行してるつもりだが…』
おどけた表情で首をかしげる。
『おまえに勝てたためしがない』
たけるはふっと笑う。
『手加減するからだろ』
『おまえを相手に手加減なんかする余裕あるもんか。いつも力の差を感じてがっかりするよ』
『そうなのか?…でも、俺にとっておまえは目標なんだ。おまえがいてくれるから俺は頑張れてる』
『なんだよ気持ち悪りぃな』
また二人で笑った。
たけると雷牙。
親友にして、次世代の十二組を担うはずの二人だった。
妹であるさやかと…
『相変わらず見事だな』
不意に男の声がした。
さやかが驚いて振り返ると…
年の頃はたけると同じぐらいか。
長身。
こけた頬。
無精髭。
鋭くも優しい眼。
獣のように締まった筋肉に見慣れぬ黄と黒の毛皮を纏っている。
さやかの表情が明るくなった。
『雷牙!!』
男の名は雷牙。
虎組の跡取りである。
この男こそさやかと共に、たけるの技を知る人物であった。
さやかが駆け寄る。
『もう、雷牙!びっくりさせないでよ!』
『すまんすまん、でも気配を消したつもりはないぞ。
おまえが気付かなかっただけだ。なぁたける』
『あぁ。さやか、雷牙はもう一刻も前からその辺りにいたぞ』
『うそっ!』
『な?水の中のたけるが気付くんだから、ここにいて気付かないさやかが鈍いって事だろ』
『う~~っ!おにいちゃんは天才だから何でも分かっちゃうの!私は…私はどうせ天才じゃないもん…』
負けん気の強いさやかは涙声になった。
たけるがさやかの背を軽く叩く。
『泣くなよさやか。雷牙の口が悪いのは今に始まった事じゃないだろう?
それにな、俺は天才でも何でもない。
いつも言ってるだろ?努力の分だけ上達するんだって。
さやかも今まで通り修行を頑張れば俺ぐらいにはなれるさ。』
さやかはすねたように黙ってうつむいていたが、
『分かったか?』
とたけるに頭をなでられ、
『うん!』
と笑顔になった。
そして
『私もやってみる!』
と池に飛び込んでいったのだった。
それを見て穏やかな笑顔を見せる二人の男。
『天才なんかじゃない、か…』
雷牙がつぶやく。
『充分天才だと思うがねぇ。俺もおまえに負けないぐらい修行してるつもりだが…』
おどけた表情で首をかしげる。
『おまえに勝てたためしがない』
たけるはふっと笑う。
『手加減するからだろ』
『おまえを相手に手加減なんかする余裕あるもんか。いつも力の差を感じてがっかりするよ』
『そうなのか?…でも、俺にとっておまえは目標なんだ。おまえがいてくれるから俺は頑張れてる』
『なんだよ気持ち悪りぃな』
また二人で笑った。
たけると雷牙。
親友にして、次世代の十二組を担うはずの二人だった。
スポンサーサイト