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2010-11-27(Sat)

小説・さやか見参!(15)

まるで探るような鳥の声に、かすみは小さく反応した。

くちなわはそれを見逃さず、含みを持たせて訊く。

『どうかしたか?』

かすみは無言で、何事もないように首を横に振る。

鳥の鳴き声は二羽三羽と増えていく。

『せっかく静かになったと思うたに…空に囲いは作れぬからなぁ…』

くちなわは笑う。

一羽が鳴く、しばし黙る。
二羽目が鳴く、また黙る。

『鳥同士も会話するのであろうなぁ。
まるで返事を待って語りかけておるようだ。
はたして鳥どもはどんな話をするのであろうな?
鳥の言葉が分からぬのが残念だ。』

かすみは、

くちなわの一言一言に恐れおののいていた。

これはおそらく―

見抜かれている。

やはりミズチの元へ呼ばれたのはその事であったか。

だが、かすみは態度を変えるわけにはいかない。。

『おや』

くちなわが外をうかがうように視線を動かした。

『小屋の周りを何やら走っておるな。
この足音はイタチか。
はて…昨日までのやつはもうおらぬはずだが…
…という事は別のやつか。
この家にはイタチの好物でもあるのではないか?はっはっは』

笑顔を絶やさずに自分を追い詰めようとする夫にかすみは焦れた。

その様子を見てくちなわが言う。

『落ち着いて座っておれ』

くちなわとかすみは、黙って見つめ合った。

かなり長い間―

その視線の交わりに愛などなく、ただ―

お互いの腹を探り合う忍びの鋭さが火花を散らしていた。

そのかすみの表情が、

ふっ

と緩んだ。

かすみは観念したかのような笑顔で

『やれやれ』

と立ち上がり、早朝に使っていた小刀を手に取った。

外はもう陽が落ちかけている。

かすみはその小刀で、まな板を何度か叩いた。

そして

『獣どもに伝えたよ。…とうとうバレた、ってね』

『やはり…違う事を願っていたが…』

『あ~あ、やっぱりミズチにはバレたかぁ。おまえさんだけなら一生気付かなかっただろうね』

そう言って、またまな板を叩く。

『あたしの事がバレたんなら次の手を打たなきゃいけないからねぇ』

くちなわの腰から白刃が走った。

かすみの右手の指が刎ね飛ばされた。

五本の指と小刀が床に落ちた時には左の指も切り落とされていた。

かすみは一瞬、表情に恐怖を浮かべたが―

すぐに憎々しげに笑みを浮かべた。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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