2010-11-23(Tue)
小説・さやか見参!(11)
『くちなわよ、わしは今から、おまえにはつらい話をせねばならん。
この話を聞いても、おまえは納得せんじゃろう。
感情を殺せぬおまえの事じゃ、
おそらくは怒りにはらわたが煮えくり返るやもしれぬ。
だが、
黙ってわしの話を聞いてくれぬか。
わしはもう長くはない。
わしの後はおまえに荊木流を託す。
だが今回は、頭領としてのわしの話を聞いてくれぬか』
くちなわは耳を疑った。
ミズチの、こんな弱々しい言葉を聞いた事はなかったからだ。
これは誰とも分からぬ別人ではないのか?とさえ考えた。
実際ミズチが持ち直す可能性は低い。
時間の問題だ。
だが今は悲しみよりも、ミズチの症状を研究し、解毒薬を作り出す事が先決であった。
『もちろんです。ミズチ様』
くちなわは平静を装って、低く落ち着いた声で答えた。
『おまえの妻、かすみ…あの女は、一角衆の間者だ』
『な…』
さすがに動揺を隠せずに声をあげる。
『何をおっしゃいます!?
かすみとは連れ添うて…いえ、出会ってからの全てを知っておるほどの間柄!
長年見ておりますが、妻に怪しむ所などありませなんだぞ!?』
『どう思ってもかまわん。だがとりあえず聞いてくれ。
今回の件で分かった。これは一角衆のやり方じゃ。』
『一角衆とは、修験道から派生したと言われている宗教まがいの忍び集団ですな。
妻が…かすみがその一角衆の間者ですと?
ミズチ様、確証があってのお言葉でしょうな!?』
『一角衆の狙いは我ら荊木流じゃ。
我らが狙われたという事は、山吹や他の流派にも手が及んでいるかもしれぬ。
奴らの計画は実に巧妙じゃ。
わしを殺し、荊木流を潰す為に、かなり昔からじわりじわりと企てを進めておったらしい。
おそらくはくちなわ、おまえが生まれた辺りまでさかのぼるぞ』
『そのような頃から!?』
『一角衆とはそのような連中じゃ。
かすみは一角衆に産まれたおなごじゃろう。
赤子の頃より子守歌代わりに暗号獣語の類いを聴いて育ったのであろうな。
くちなわ、かすみの発する他愛もない音、言葉、決して聴き漏らすな。
かすみの周りの音は、風の音、鳥の声、蟲の羽音、全て疑え。
他者には決して分からぬような暗号のやり取りになっておる』
『しかし…だとしたら、かすみは一体何を探っているのです!?』
この話を聞いても、おまえは納得せんじゃろう。
感情を殺せぬおまえの事じゃ、
おそらくは怒りにはらわたが煮えくり返るやもしれぬ。
だが、
黙ってわしの話を聞いてくれぬか。
わしはもう長くはない。
わしの後はおまえに荊木流を託す。
だが今回は、頭領としてのわしの話を聞いてくれぬか』
くちなわは耳を疑った。
ミズチの、こんな弱々しい言葉を聞いた事はなかったからだ。
これは誰とも分からぬ別人ではないのか?とさえ考えた。
実際ミズチが持ち直す可能性は低い。
時間の問題だ。
だが今は悲しみよりも、ミズチの症状を研究し、解毒薬を作り出す事が先決であった。
『もちろんです。ミズチ様』
くちなわは平静を装って、低く落ち着いた声で答えた。
『おまえの妻、かすみ…あの女は、一角衆の間者だ』
『な…』
さすがに動揺を隠せずに声をあげる。
『何をおっしゃいます!?
かすみとは連れ添うて…いえ、出会ってからの全てを知っておるほどの間柄!
長年見ておりますが、妻に怪しむ所などありませなんだぞ!?』
『どう思ってもかまわん。だがとりあえず聞いてくれ。
今回の件で分かった。これは一角衆のやり方じゃ。』
『一角衆とは、修験道から派生したと言われている宗教まがいの忍び集団ですな。
妻が…かすみがその一角衆の間者ですと?
ミズチ様、確証があってのお言葉でしょうな!?』
『一角衆の狙いは我ら荊木流じゃ。
我らが狙われたという事は、山吹や他の流派にも手が及んでいるかもしれぬ。
奴らの計画は実に巧妙じゃ。
わしを殺し、荊木流を潰す為に、かなり昔からじわりじわりと企てを進めておったらしい。
おそらくはくちなわ、おまえが生まれた辺りまでさかのぼるぞ』
『そのような頃から!?』
『一角衆とはそのような連中じゃ。
かすみは一角衆に産まれたおなごじゃろう。
赤子の頃より子守歌代わりに暗号獣語の類いを聴いて育ったのであろうな。
くちなわ、かすみの発する他愛もない音、言葉、決して聴き漏らすな。
かすみの周りの音は、風の音、鳥の声、蟲の羽音、全て疑え。
他者には決して分からぬような暗号のやり取りになっておる』
『しかし…だとしたら、かすみは一体何を探っているのです!?』
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