2020-06-21(Sun)
一期一会
僕がいたチームでは「しゃべり」と呼ばれていました。
「べしゃり」と言う所も多いようです。
ヒーローショーの形式のひとつで、悪役がマイクで喋ってショーを進行するというものです。
僕がいたチームや周囲のチームでは録音したセリフに合わせて演技をする「完パケ」がほとんどだったので、この「しゃべり」はイレギュラーなショーでした。
録音のセリフに合わせて感情表現をするというのも難易度の高いお芝居ですが、マイクで実際に喋って進行するとなると芝居の方向性が変わります。
本職の役者さんには全く敵わないにしろ、観客にセリフや感情を伝えなくちゃいけなくなります。
台本もそこそこ覚えなくちゃいけません。
(一字一句間違えないでくれと言われた現場もありました)
そして何より「アドリブ」が利かなくちゃいけなかったりもします。
観客のほとんどは子供達。
完パケならば物語に集中しやすいと思いますが、目の前でオジサンっぽい悪役がマイクで喋ってたらストーリーに入り込めません。
そこで子供達の反応を見ながらアドリブで引き込み、客席とキャラクターの世界を繋げるのです。
僕が初めて悪役で「しゃべり」をしたのは、ショーの世界に入ってまだ7、8ヶ月ぐらい。
基本的なアクションもまだまだな青二才の頃でした。
怖いもの知らずだったので「しゃべり、やってみたいです!」と直訴してチャンスをもらったんです。
僕は昔も今もしゃべりが苦手です。
ましてやアドリブの能力は皆無。
それなのにしゃべりがやりたいと言ったのは、
「しゃべりならキャラクターの世界を深く構築出来るから」
でした。
つまり、テレビの世界観をそのままステージに持ち込みたかったのです。
なのでアドリブを入れようなんて気持ちはさらさら無く、自分の書いた台本をなぞっただけで、結果グダグダのショーになってしまいました。
それから数ヶ月、
テレビの世界とステージの世界が別物だと気付くまで、僕はグダグダのしゃべりショーを続けました。
ある時、
「しゃべりにはアドリブが必要だ!」
と思ったものの、
アドリブ=ギャグ
だという勘違いをしてしまった為、それから数年は客席ドン引き、スベりまくりのグダグダショーの期間に突入しました。
なんとかコツを掴んだのかギャグでスベらなくなると、今度はキャラクターより自分が目立ってしまい、
「お前のしゃべりはなぁ、ヒーローショーじゃなくて内野武ショーになってんだよ!」
と叱られる事に。
それから十数年しゃべりをやりましたが、何とか形になったのは最初のしゃべりショーから10年経ったぐらいじゃなかったかと思います。
最初に書いたように僕のいた環境ではしゃべりはイレギュラーだったので、1年に1回とか2回とか、平均するとそんなもので、やはりそれでは上手くなりにくいんですよね。
回数こなすのって大事です。
いま、殺陣教室やアクションレッスンで初めての参加者さんがいらっしゃる時、僕は自分のアドリブ能力の低さに打ちひしがれます。
初参加の方は緊張していたり逆にテンション上がってたり、それが表情に出たり出なかったりで、楽しんでいただけているのか読めない事があるんです。
そしてそのまま終了して
「自分はあの人につまらない時間を提供しただけじゃないのか?」
「せっかく参加した殺陣教室(アクションレッスン)で苦痛な時間を過ごさせてしまったんじゃないのか?」
と後悔するのです。
もし僕が空気を読めたなら、アドリブを利かせられたら、結果は変わっていたかもしれない。
終了後に
「楽しかったです!」
って言ってもらえたかもしれない。
そう思うと、アドリブを避けてきた過去の自分の首でも絞めてやりたいという気持ちになります。
とは言っても、
仕事は一期一会、ifを語るのは無意味なので、これから後悔しないように後悔させないように取り組んでいくしかないなぁ、と、
そう思っています。
スポンサーサイト