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2018-12-30(Sun)

小説・さやか見参!(282)

爆炎が上がった。
舞い上がった木の葉がめらりと燃え、辺り一面を紅く染める。
紅蓮丸と炎丸が得意とする術だ。
もちろん血飛鬼と血塗呂をはじめとした一角の者達に通用するような威力ではない。
しかしイバラキの配下である幻龍の忍び達は炎の死角をたくみに使い、また敵のわずかな隙をついて見事に一角の手の者を倒していった。
意外にも連携が取れているらしい。
さやかと心太郎は内心で感心しながらも血飛沫鬼、血塗呂と攻防を繰り広げていた。
思わぬ助勢で形勢を立て直す事が出来た。
この好機を逃せばもう勝ち目はないかもしれない。
さやかは攻めた。
山吹紋の鍔を持つさやかの愛刀が縦横無尽に血飛沫鬼を追い立てる。
血塗呂の方はきっと心太郎が食い止めてくれる。
ここは一人だけでも倒さなければならない。
さやかの剣戟が速さを増す。
炎兄弟はその様子を見て

「兄者、あの小娘」
「ええ、これはいけるかもしれませんね」

と勝利を確信しかけていた。
当のさやかも、己の放った刃を血飛沫鬼がぎりぎりで受け止めた瞬間(いける!)と思った。
先ほどまでの血飛沫鬼なら余裕でかわすなりはじき返すなり後の先で反撃するなりしていただろう。
勝機を得てさやかはようやく逆転を果たしたのだ。

(今を逃す手はない!)

受け止められた刀をわずかに引いて突きの態勢に入る。
刹那の出来事だ。
今の状況でこの攻撃をかわす事は出来ないはず。

(勝った!)

だが、さやかの確信はすぐに崩れた。
剣先が向かう先にある血飛沫鬼の顔は
笑っていた。
おそらくさやかの顔が青ざめた。
それもまた刹那の出来事であった。
血飛沫鬼はまだ余裕を残していたのだ。
作戦だったのだ。
罠だったのだ。
さやかはまたしても弄ばれていたのだ。
それを理解した瞬間、

りぃぃーーーん

鈴の音が鳴り響いた。
思わず気を取られた隙にさやかは吹っ飛ばされた。
血飛沫鬼が腹部を蹴り込んだのだ。

「がはっ!」

さやかは口から胃液を飛び散らせながら地面に落下した。
先ほどまで大量にあった落ち葉は炎兄弟の術ですべて燃え、落下の衝撃を和らげてくれるものはなく、さやかは地面に激突した。
急いで起き上がろうとしたが、首を起こしただけで全身に激痛が走る。
痛みに必死で耐えながらもさやかは鈴の音の出所を探した。
鋭い金属音はいまだ木々の中で反響していた。
そこへ

きらり

なにかが光を反射した。
さやかは思わず地面に着いていた手を引いた。

ずさっ

ひやりとする衝撃。
さやかの手があった地面に刀が突き刺さっていた。
おそらく上空から降ってきたのだ。
さやかの物と同じ山吹紋の鍔。
心太郎の刀だ。
さやかは飛び起きて心太郎を探した。
心太郎は少し離れた樹上にいた。
いや、宙に浮いていた。
その向こうに赤い影が見えた。
血塗呂だ。
心太郎が悲鳴を上げている。
心太郎の右肩には血塗呂の鉤爪が突き刺さっていた。
宙に浮いているように見えたのは、樹上に立った血塗呂が鉤爪を刺した心太郎を宙吊りにしていたからだったのだ。

「心太郎!!」

さやかは心太郎を助けようとどうにか身体を起こした。
だがその前に立ちはだかる影があった。
紅蓮丸、炎丸、そして幻龍の青装束達である。

「え…?」

さやかは状況が分からず一瞬硬直した。
そこへ紅蓮丸達が一斉に襲いかかる。
さやかは飛びのいて攻撃をかわした。

「どうしたっていうの!?」

上空から心太郎の声が響く。

「さやか殿!これ!」

さやかは炎兄弟を殴りとばして心太郎を見上げた。
心太郎の影で血塗呂が何かをひらひらと揺らしている。
それは、大きな鈴であった。
揺れるたびに小さくちりりと鳴る鈴であった。

「さやか殿!さっきの鈴っシュ!」

そう。これは庚申の教祖である老人が持っていた鈴だ。
その音で信徒達を操っていたあの鈴だ。
という事はやはり紅蓮丸達も操られてしまったのか。
しかし、もしもその音で人を操る事が出来るのなら、なぜ自分と心太郎は操られていないのか?
青装束に当身を食らわせながら混乱した頭でさやかは考える。
いや、それよりも…
さやかには気になる事があった。
血塗呂が持っている鈴は印籠のようなものに根付のようにして付けられているようなのだが、その印籠に描かれているのが山吹一族の紋章、山吹紋に見えたのだ。

我が一族の紋章をなぜ一角衆が??

さやかは更に混乱しそうな頭をぶんぶんと振って雑念を払った。
とにかく今は心太郎を助けなければ!
群がる幻龍の忍びを振り払い血塗呂に向かおうと構え直したさやかの目に映ったのは
肩を貫かれ宙吊りにされた心太郎に切っ先を突きつけている血飛沫鬼だった。

「心…」

心太郎の名を呼ぼうとしたがその暇はなかった。

「さや…」

さやかの名を呼ぼうとしたがその暇はなかった。

「おせーんだよ」

血飛沫鬼が心太郎を斬り捨てた。

「心太郎!!」

さやかの叫びと心太郎の悲鳴と、血飛沫鬼の嘲笑が交じり合った。
心太郎の身体は地面にぶつかって跳ね返り、山の急な斜面を転がり落ちていった。

「心太郎ー!!」

さやかは絶叫した。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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