2018-05-17(Thu)
小説・さやか見参!(281)
爆風が木々を揺らした。
落ち葉がばちばちと爆ぜながら舞った。
ほんの一瞬の出来事ではあったがその大きな大きな炎は操られた人々の意識を奪った。
血飛沫鬼と血塗呂も、ほんのわずか、かすかにではあったが隙を見せた。
だがそれでも、さやかと心太郎が危機を脱するには充分だった。
炎から現れた甲冑の男二人はさやかに得意気に顔を向ける。
「山吹さやか!久しぶりだぜぇ!」
勢いだけのがさつな喋り方。
炎一族の次兄、炎丸だ。
「山吹さやか、ずいぶん楽しそうに遊んでるじゃないですか」
慇懃だがイラつく喋り方。
炎一族長兄、紅蓮丸だ。
さやかが少しだけ嬉しそうな顔をした。
「あんた達!炎の馬鹿兄弟!!」
その言葉を聞いて紅蓮丸と炎丸がずっこける。
こういう所が芝居がかっているからシリアスが似合わないのだ。
「ちょっとあんた!せっかく助けてやったのにそれは酷いんじゃないの!?」
紅蓮丸の口調が変わる。興奮した証拠だ。
「相変わらず気持ち悪い奴ね」
軽口を叩いているさやか達の前に血飛沫鬼と血塗呂がゆらりと立った。
「炎一族、何しに来た。山吹を助けに来たか、それとも俺らにやられに来たか」
血飛沫鬼がそう言うと同時に一角の忍び達が周囲でかまえ直した。
だが何故か紅蓮丸は動じなかった。
「あんた達を倒しに来たのよ。イバラキ様の命令でね」
「えっ」
さやかと心太郎が声を上げた。
「二人とも、幻龍組の手下になったっシュか?」
「節操がないというか何というか…イバラキも何でこんな連中を…」
「うるさいわね!あんた達に言っても納得しないでしょうけど、イバラキ様はホントすごい人よ」
「俺達は心からイバラキ様に惚れたんだぜぇ」
「ま、いずれは寝首を掻いてやるんだけどね」
「おもしれぇじゃねぇか」
血飛沫鬼が会話を遮った。
さやか達が身構える。
血飛沫鬼も血塗呂も愉快そうな表情をしていた。
この二人は愉しそうな時が最も危険なのだ。
神経を研ぎ澄まして臨まねば勝ち目はない。
血飛沫鬼が歩を進めながら肩に担いでいた刀を振った。
空気を切り裂く鋭い音が辺りを一瞬で緊張させる。
血塗呂は鉤爪をひらひらと動かしながら迫ってくる。
一角の忍び達も囲みを狭めてくる。
さやかと、心太郎と、そして炎兄弟も戦闘態勢を取った。
「あんた達みたいな馬鹿兄弟と手を組むのはまっぴら御免だけど」
「幻龍組の手下ならなおさらっシュね」
「お互い様よ。そっちはそっちで勝手にやってちょうだい」
「とりあえず俺達幻龍組はこいつらと戦うぜぇ!」
心太郎が炎兄弟の背後に目を向けるといつの間にか幻龍の忍び達が集まっていた。
幻龍は本当に組を挙げて戦うつもりなのだ。
びりびりした緊張感の中で刹那、時が止まった。
炎丸が大きく息を吸った。
そして、
「兄者!いくぜぇ!!」
「炎丸!いくわよ!!」
「心太郎!!」
「はいっシュ!!」
山吹さやかと心太郎、
紅蓮丸と炎丸、
血飛沫鬼と血塗呂、
一角の忍びと幻龍の忍び、
それぞれが一斉に動いた。
静かな森は瞬く間に凄惨な戦場へと姿を変えた。
落ち葉がばちばちと爆ぜながら舞った。
ほんの一瞬の出来事ではあったがその大きな大きな炎は操られた人々の意識を奪った。
血飛沫鬼と血塗呂も、ほんのわずか、かすかにではあったが隙を見せた。
だがそれでも、さやかと心太郎が危機を脱するには充分だった。
炎から現れた甲冑の男二人はさやかに得意気に顔を向ける。
「山吹さやか!久しぶりだぜぇ!」
勢いだけのがさつな喋り方。
炎一族の次兄、炎丸だ。
「山吹さやか、ずいぶん楽しそうに遊んでるじゃないですか」
慇懃だがイラつく喋り方。
炎一族長兄、紅蓮丸だ。
さやかが少しだけ嬉しそうな顔をした。
「あんた達!炎の馬鹿兄弟!!」
その言葉を聞いて紅蓮丸と炎丸がずっこける。
こういう所が芝居がかっているからシリアスが似合わないのだ。
「ちょっとあんた!せっかく助けてやったのにそれは酷いんじゃないの!?」
紅蓮丸の口調が変わる。興奮した証拠だ。
「相変わらず気持ち悪い奴ね」
軽口を叩いているさやか達の前に血飛沫鬼と血塗呂がゆらりと立った。
「炎一族、何しに来た。山吹を助けに来たか、それとも俺らにやられに来たか」
血飛沫鬼がそう言うと同時に一角の忍び達が周囲でかまえ直した。
だが何故か紅蓮丸は動じなかった。
「あんた達を倒しに来たのよ。イバラキ様の命令でね」
「えっ」
さやかと心太郎が声を上げた。
「二人とも、幻龍組の手下になったっシュか?」
「節操がないというか何というか…イバラキも何でこんな連中を…」
「うるさいわね!あんた達に言っても納得しないでしょうけど、イバラキ様はホントすごい人よ」
「俺達は心からイバラキ様に惚れたんだぜぇ」
「ま、いずれは寝首を掻いてやるんだけどね」
「おもしれぇじゃねぇか」
血飛沫鬼が会話を遮った。
さやか達が身構える。
血飛沫鬼も血塗呂も愉快そうな表情をしていた。
この二人は愉しそうな時が最も危険なのだ。
神経を研ぎ澄まして臨まねば勝ち目はない。
血飛沫鬼が歩を進めながら肩に担いでいた刀を振った。
空気を切り裂く鋭い音が辺りを一瞬で緊張させる。
血塗呂は鉤爪をひらひらと動かしながら迫ってくる。
一角の忍び達も囲みを狭めてくる。
さやかと、心太郎と、そして炎兄弟も戦闘態勢を取った。
「あんた達みたいな馬鹿兄弟と手を組むのはまっぴら御免だけど」
「幻龍組の手下ならなおさらっシュね」
「お互い様よ。そっちはそっちで勝手にやってちょうだい」
「とりあえず俺達幻龍組はこいつらと戦うぜぇ!」
心太郎が炎兄弟の背後に目を向けるといつの間にか幻龍の忍び達が集まっていた。
幻龍は本当に組を挙げて戦うつもりなのだ。
びりびりした緊張感の中で刹那、時が止まった。
炎丸が大きく息を吸った。
そして、
「兄者!いくぜぇ!!」
「炎丸!いくわよ!!」
「心太郎!!」
「はいっシュ!!」
山吹さやかと心太郎、
紅蓮丸と炎丸、
血飛沫鬼と血塗呂、
一角の忍びと幻龍の忍び、
それぞれが一斉に動いた。
静かな森は瞬く間に凄惨な戦場へと姿を変えた。
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