2010-02-20(Sat)
アクションへの道(57)
『影マイク』
というものがあります。
ショーに使うパッケージには、BGMや効果音と一緒に台詞も録音されています。
しかし立ち回りだけは流動的なものですし、演じ手によって違うので、そこでの台詞や掛け声を録音する事は出来ません。
そこでスタッフがマイクを持ち、物陰で立ち回りを見ながらこっそり台詞を入れるのです。
これが『影マイク』です。
僕がショーを始めた1990年、影マイクはスタッフ(すなわち社員)の仕事でした。
この頃は、台本・録音・編集に加えて影マイクもバイトの身では不可侵領域だったのです。
前年(1992)に、僕は台本デビューする事が出来ました。
この台本の中に、ピンクを人質に取られたレッドが敵に命じられてブラックと戦うシーンがありました。
ストーリーの山場です。
このシーンでも当然スタッフが影マイクをしていましたが、スタッフ1人でレッドとブラックの声をアテる事は出来ません(上手い人なら出来るけど)。
そこでバイトメンバーの中でも台詞が言えそうな者が影マイクに加わるようになりました。
これは非常にいい結果を生みました。
スタッフは当日の場当たり(リハのようなもの)を見るだけなので立ち回りの段取りなんてうろ覚えですが、一緒にリハをしたメンバーは違います。
『ここでゆっくり2歩進む』
とか、
『かかろうとしたけど睨まれて下がる』
とか、
そんな細かい段取りまで知っているのです。
ここで、影マイクのクォリティという点でスタッフとメンバーの立ち位置は逆転しました。
そして1993年。
カンフーを駆使した立ち回りは複雑さを極め、とても当日の場当たりしか見ていないスタッフでは影マイクが追いつけなくなりました。
おまけに立ち回りの合間に
『●●流・●●●拳!!』
みたいな見栄まで入るのですから。
演じ手も力を入れてやっているので、下手な影マイクでクォリティとテンションを落とされてはたまりません。
必然的にこの年の影マイクは(可能な限り)メンバーがやるようになりました。
(可能な限り)と書きましたが、可能でない状況とはどんな状況でしょうか?
ショー中、ステージに出ていないキャラクター(アクター)は『ハケ』と呼ばれる場所にいます。
『ハケ』とは『ショー中の控え室』のようなものです。
待機してる姿がお客さんに見られないように遮断された空間になっています。
この『ハケ』が完全に遮断されてステージが見えない状況だと、メンバーは影マイクをする事が出来ません。
なんたって僕らはハケから出る事が出来ないのですから。
しかしこの年の僕ら(ってか僕)は違います。
ハケから出る事が出来なくてもスタッフに影マイクを任せる事が出来ません。
という事で…
面をとり、顔を出して、衣装の上にジャージを着て、ステージ横の音響席に行きました。
ジャージ姿なら音響席で影マイク出来る…
そう思っての事ですが、僕はスタッフに怒鳴られてハケに追い返されました。
ジャージを着ていても、いくらなんでも見え見えだと。
何が見え見えかって、着替えの時間が短い為、僕はブーツを履いたままだったのです。
足首まではジャージで隠れていますが、そこから先は真っ黄色です(イエロー役だったので)。
僕の中では、
『靴ぐらいバレんやろ!?』
って気持ちがあったんですが、スタッフの目には明らかな違和感があったのでしょう。
『こんな事をするぐらいなら影マイクするな!』
みたいな事を言われた気がします。
若くてイケイケだった(だったか?)僕は大先輩のスタッフさんに、
『あぁ、そうスか!だったらもちろん完璧に影マイク合わせてくれるんでしょうね!』
と吐き捨ててハケに戻りました。
当然ですがスタッフは当たり障りのない台詞しか言えません。
見栄の台詞なんか言えるハズがありません。
それを聞きながら僕は、ハケの中から
『あ~あ、なんスか今のだっせぇ台詞は!』
『影マイクするならリハぐらい見に来てくれませんかねぇ!』
と罵声を浴びさせるのでした。
浴びさせるのでした、って…
これ、ショーの真っ最中ですからね!?
僕がどれだけ常軌を逸してるか分かります。
『終わってから言え!』
と説教してやりたいですわ。
まぁ、それぐらい熱い時代だった…
じゃ済みませんね。
申し訳ないっス。
でも、
『こちらはベストを尽くしてるんだから、スタッフも頑張れよ!』
って気持ちもあったんですよね。
僕とスタッフ、どちらに分があったのか?
僕の黄色い靴にお客さんが
『!!』
となっていたらスタッフの勝ち、
あまり気にしていなかったら僕の勝ち、
だと思っているのですが、果たして勝敗や如何に!?
というものがあります。
ショーに使うパッケージには、BGMや効果音と一緒に台詞も録音されています。
しかし立ち回りだけは流動的なものですし、演じ手によって違うので、そこでの台詞や掛け声を録音する事は出来ません。
そこでスタッフがマイクを持ち、物陰で立ち回りを見ながらこっそり台詞を入れるのです。
これが『影マイク』です。
僕がショーを始めた1990年、影マイクはスタッフ(すなわち社員)の仕事でした。
この頃は、台本・録音・編集に加えて影マイクもバイトの身では不可侵領域だったのです。
前年(1992)に、僕は台本デビューする事が出来ました。
この台本の中に、ピンクを人質に取られたレッドが敵に命じられてブラックと戦うシーンがありました。
ストーリーの山場です。
このシーンでも当然スタッフが影マイクをしていましたが、スタッフ1人でレッドとブラックの声をアテる事は出来ません(上手い人なら出来るけど)。
そこでバイトメンバーの中でも台詞が言えそうな者が影マイクに加わるようになりました。
これは非常にいい結果を生みました。
スタッフは当日の場当たり(リハのようなもの)を見るだけなので立ち回りの段取りなんてうろ覚えですが、一緒にリハをしたメンバーは違います。
『ここでゆっくり2歩進む』
とか、
『かかろうとしたけど睨まれて下がる』
とか、
そんな細かい段取りまで知っているのです。
ここで、影マイクのクォリティという点でスタッフとメンバーの立ち位置は逆転しました。
そして1993年。
カンフーを駆使した立ち回りは複雑さを極め、とても当日の場当たりしか見ていないスタッフでは影マイクが追いつけなくなりました。
おまけに立ち回りの合間に
『●●流・●●●拳!!』
みたいな見栄まで入るのですから。
演じ手も力を入れてやっているので、下手な影マイクでクォリティとテンションを落とされてはたまりません。
必然的にこの年の影マイクは(可能な限り)メンバーがやるようになりました。
(可能な限り)と書きましたが、可能でない状況とはどんな状況でしょうか?
ショー中、ステージに出ていないキャラクター(アクター)は『ハケ』と呼ばれる場所にいます。
『ハケ』とは『ショー中の控え室』のようなものです。
待機してる姿がお客さんに見られないように遮断された空間になっています。
この『ハケ』が完全に遮断されてステージが見えない状況だと、メンバーは影マイクをする事が出来ません。
なんたって僕らはハケから出る事が出来ないのですから。
しかしこの年の僕ら(ってか僕)は違います。
ハケから出る事が出来なくてもスタッフに影マイクを任せる事が出来ません。
という事で…
面をとり、顔を出して、衣装の上にジャージを着て、ステージ横の音響席に行きました。
ジャージ姿なら音響席で影マイク出来る…
そう思っての事ですが、僕はスタッフに怒鳴られてハケに追い返されました。
ジャージを着ていても、いくらなんでも見え見えだと。
何が見え見えかって、着替えの時間が短い為、僕はブーツを履いたままだったのです。
足首まではジャージで隠れていますが、そこから先は真っ黄色です(イエロー役だったので)。
僕の中では、
『靴ぐらいバレんやろ!?』
って気持ちがあったんですが、スタッフの目には明らかな違和感があったのでしょう。
『こんな事をするぐらいなら影マイクするな!』
みたいな事を言われた気がします。
若くてイケイケだった(だったか?)僕は大先輩のスタッフさんに、
『あぁ、そうスか!だったらもちろん完璧に影マイク合わせてくれるんでしょうね!』
と吐き捨ててハケに戻りました。
当然ですがスタッフは当たり障りのない台詞しか言えません。
見栄の台詞なんか言えるハズがありません。
それを聞きながら僕は、ハケの中から
『あ~あ、なんスか今のだっせぇ台詞は!』
『影マイクするならリハぐらい見に来てくれませんかねぇ!』
と罵声を浴びさせるのでした。
浴びさせるのでした、って…
これ、ショーの真っ最中ですからね!?
僕がどれだけ常軌を逸してるか分かります。
『終わってから言え!』
と説教してやりたいですわ。
まぁ、それぐらい熱い時代だった…
じゃ済みませんね。
申し訳ないっス。
でも、
『こちらはベストを尽くしてるんだから、スタッフも頑張れよ!』
って気持ちもあったんですよね。
僕とスタッフ、どちらに分があったのか?
僕の黄色い靴にお客さんが
『!!』
となっていたらスタッフの勝ち、
あまり気にしていなかったら僕の勝ち、
だと思っているのですが、果たして勝敗や如何に!?
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