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2010-02-12(Fri)

アクションへの道(52)

あまり楽しい話を書けない1993年はまだ続きます…



以前、女の子向けの美少女戦士アニメのショーでも似た傾向が…と書きました。

こちらではメンバーの多くが、本来必要な『演技』の技術を磨こうともせず、『名乗り』『必殺技』のポーズ、それと『ダンス』ばかりを練習していました。

そしてポーズしか出来ないメンバー達による『役の奪い合い』が始まりました。

『私の方が(ポーズが)上手いのに何であの子があの役に!?』

『あの子が入ると身長設定が合わなくなるから私が入った方がいい』

などといった、役の奪い合いと言うよりはむしろ足の引っ張り合いです。

そういった子達は

『いいショーをする』

事よりも、

『人気キャラクター扱いできゃーきゃー言われる事』

に酔っていた気がします。
(違うかもしれませんが、ここでは僕の主観を書きます)

この時期のエピソードで覚えている事があります。

当時はビデオカメラが普及してきて、僕らも現場でショーを撮影する事が多くなりました。

撮影した日は、現場から帰って衣裳を洗濯して干して、反省会をして報告書を書いた後にみんなで道場のテレビでビデオを観るのです。

これ、班数が少ない時は問題ないのですが、ゴールデンウィークなんかに5班も6班もあって、みんなビデオを撮ってきた日にゃ大変です。

現場から帰った順番に先ほどの洗濯→反省会→報告書を終えてからビデオを観るのです。

観てる間に続々と他の班が帰ってきます。

順番待ちの列が出来ます。

もしも5班あった場合、ショーの時間が30分としたら、最初のチームが観終わってから最後のチームが観始めるまで最短で1時間半かかる事になります。

最初のチームが観終わったのが19時だとしたら最後のチームが観終わるのが21時です(最短で)。

ショーメンバーには高校生も多く、特に女の子は門限が厳しい子もいるので、21時までビデオを観てるワケにもいかなかったりします。

『そこまでしてビデオを観る必要があるのか?』

あるんです!

自分達の動きを客観的に見るのが一番の勉強になるんです!
そしてイマイチな箇所を修正していくんです!

だから出来るだけみんながビデオを観れるのが望ましい。
特に経験の浅い若手には観てもらいたい…

なので、自分達が観る前だったら高校生がいる班に順番を譲ったり、観てる最中だったら動きが少ないシーンを早送りして時間を短縮したりしていたワケです。


ある現場の日。

道場に帰ると、美少女戦士チームがショーのビデオを観ていました。

まだショーの部分は始まっておらず、遊園地のエントランス前で子供達を出迎えているシーンでした。

手を振ったり握手したりする自分達の一挙手一投足にキャッキャ言って喜んでいます。

そのはしゃいでる姿からは

『自分大好き!』

というオーラが放出されていました。

それを横目に僕らは洗濯をし、反省会をし、報告書を書き、ビデオの順番を待ちました。

僕らの班には門限のある女子高生がいたので出来るだけ早く順番が来るのを祈るばかりです。

美少女戦士ショーのビデオはなかなか進みません。

自分達のポーズやお気に入りの動きやダンスを何度も何度もリピートするからです。

相変わらずキャッキャ言ってます。

ショーが終わりました。

しかしビデオは終わりません。

サイン会や撮影会の模様もしっかり収められていたからです。

撮影会での自分達の決めポーズをお互いに褒め合っています。

後ろで待ってる僕らはイライラしていました。

ウチのメンバーの門限がどんどん近付いているからです。

ビデオでは撮影会が終わりました。

画面の中で司会のお姉さんが言いました。

『それじゃ美少女戦士のみんな!ステージから降りて会場のみんなと仲良くなって下さ~い!』

楽しげにうなずいて子供達の所に走っていく美少女戦士達。

握手会が始まりました。

会場狭しと移動し、握手し、写真を撮る美少女戦士達…

観てる連中はキャッキャ言ってます。

『●●ちゃんのポーズが一番上手いよね~♪』

『この役はやっぱり●●ちゃんじゃないとね~』

キャッキャキャッキャ

キャッキャキャッキャ

キャッキャキャッキャ


そして、ようやく握手会が終わり、美少女戦士達はステージ上で子供達に別れを告げ去って行ったのでした…


僕らは1時間ぐらい待ったでしょうか。

反省も改善もなく、ただ自分達を鑑賞するだけの1時間…

はぁ…
高校生を時間通りに帰らせる為には自分らのビデオは飛ばし飛ばしで観るしかないな…



なんて思っていると、テレビの前の一群からこんな声が聞こえました。

『はぁ~、サイコーやったね~♪
じゃあ2ステージ目も観ようか♪



・・・・・・


この時の僕を例えるなら、ひ弱な不動明に勇者アモンが憑依し、デビルマンが誕生したかのような…


『悪魔はオマエらの中にいるッ!!』


…違った、

『オマエらふざけんなぁッ!
さっさとビデオ持って出て行けぇッ!!』




結局ウチの高校生メンバーはビデオを観る事が出来ず帰っていきました。

追い出された美少女戦士メンバーは事務所に駆け込み、泣きながら

『内野さんは私達にビデオも観させてくれないんです!』

と訴え、社員達を巻き込んで

『内野って酷い奴やね!』

って話をしてたらしいですが。



いくらプロのアクター(アクトレス)とはいえ、衣裳を着てキャラクターになりきって喜んでるだけでは、それはただのコスプレです(コスプレを非難するものではありません。キャラクターショーとコスプレは全く別物だと言いたいのです)

プロのアクターは手段として衣裳を着けるのです。

変身が目的になった時点でプロ失格、アクター失格です。


しかし問題はまだまだありました。

浮かれていたのは女の子ばかりではなかったのです。

当時、ショーのスタッフは基本的に社員さんが務めていました。

ほとんどがいい年したオッサンです。

なので、若い女の子が集まってキャッキャ言ってる美少女戦士の現場が大好きだったみたいなのです。

なぜ僕がこんな事を書くかというと・・・


僕も時々美少女戦士の現場に入る事があったのですが(当然悪役として)、その時にメンバーの女の子達から毎回のようにこんな言葉を聞いたからです。

『スタッフの●●さんって優しいですよね!毎回帰りに経費でスィーツを買ってくれますもんね!』

は?
アクションの現場では1回も買ってもらった事ないけど??

『▲▲さんは帰りに温泉とか寄ってくれますよね!!』

いやいや、そんな事してもらった事ないし・・・
むしろ▲▲さん、早く帰りたいって車飛ばしてる姿しか知らんし・・・

こんな感じで、社員からして浮かれてデレデレして女の子をチヤホヤして人気取りしてたんです。

男ばかりの現場じゃ経費削減の話ばっかりしてたくせに・・・


ってなワケで、

アクションチームの男は自分の事ばかり考えてピリピリ、
メルヘンチームの女はコスプレ気分でキャッキャ、
社員は女の子の人気稼ぎでデレデレ、


僕が1993年に対して抱いてるイメージはこれに尽きます。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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