2010-01-23(Sat)
アクションへの道(43)
「クリスマスに何が起こったか」(2)
若気の至り…
そう、
言い訳するとしたら
若気の至りと言うしかない…
当時、
とあるホテルで例年、ある団体さんのクリスマスパーティーが行われていました。
そのパーティーのメインイベントは我々のキャラクターショー。
ディナーをいただきながら観るミニショーでした。
ミニショーというのは、予算や状況に合わせて人数を少なくしたり時間を短かくしたりといったショーの事です。
このイベントの場合は、昨年の戦隊からレッドとピンクが登場。
悪役はボスと戦闘員2人。
いつもの戦隊ショーより少ない計5人です(+スタッフ&MC)。
僕の役どころはしゃべりの悪ボス。
昨年からしゃべりの現場をこなしてきた事を買われてのキャスティングです。
リハもバッチリ、台本も頭に入っています。
オールOK!
時間になり、いよいよショーが始まってステージに出ると…
ぅわっ!
明らかに悪ガキだらけです!
普段のショーの観客というのはたまたま集まった見ず知らずの人達です。
面識がない者同士なのでお互いに抑制しあって大人しくしています。
しかし、今回のように1つの団体さんが集まっている状況だと全く違います。
周りが顔見知りばかりだから悪ノリするのです。
普段なら、
「ちょっと戦闘員にパンチ入れに行こうかなぁ~。…でも周りはみんな大人しく座ってるからやめとこ…」
ってなる子供も、周りにいる友達が
「殴りに行こうぜ!」
と言えば、
「おぅっ!行こうぜ!」
ってなっちゃうんですね。
親の方も、暴れているのが知らない子供なら
「ウチの子が楽しんでるのにあの子のせいで台無しだわ!親はどこなの!?早く止めなさいよ!」
と思うのに、知り合いの子供だと
「まぁ、おたくの●●ちゃんはいつも元気でいいですわね~、おほほほ」
みたいになってしまうのです。
つまり1つの団体さんの中でのショーというのは、ブレーキのない子供達が集団心理に操られ暴徒と化す可能性があるのです。
まさに、この日はそうでした。
会場内を自由に走り回り、奇声をあげ、ヤジをとばし、ステージに勝手に上がってくる子供達…
食事をしながらニコニコとそれを眺める大人達…
ここで言っておきたいのは、この状況がダメだという事ではない、と言う事です。
アクター自身の経験値とテクニック、そしてスタッフ・MCの協力があれば何とかなる事も多いのです。
ましてやしゃべりショーなら、そこはしゃべりの腕で何とか出来るのです。
…
…僕なら…
…今の僕なら…
残念な事に、この時の僕には経験値もテクニックもしゃべりの腕もありませんでした。
この時のショーのメインは、子供をステージに上げてのお遊びです。
15分ほど子供達と遊んだ後にヒーローが登場してアクション、という流れでした。
僕は段取り通り、これから戦闘訓練を行なう事を告げ、戦闘員はステージにあがってもらう子供を探す為に客席に入っていったのですが…
この瞬間、子供達の目に凶悪な炎が灯りました。
そして…
客席にいたほぼ全員の子供達が、奇声をあげながら戦闘員に向かって行ったのです。
殴り、蹴り、のしかかり、衣裳を脱がそうとする数十人の子供達…
『えぇ~い!オマエら!落ち着け!一旦席に戻れ!話を聞け!!』
僕の怒鳴り声も聞こえていないようです。
反撃するワケにもいかない戦闘員達は、取り囲まれ、馬乗りされている状態で殴られ蹴られ、ただジッと耐えていました。
ふと大人達を見ると、みんな楽しそうにその状況を眺めています。
それを見た時に僕の中で何かが
ぷっちぃ~ん
と音をたてました。
『おい!戦闘員!戻って来い!子供選びはもういいから、とりあえず急いで戻って来い!早くしろ!!』
戦闘員は慌てて子供達の攻撃をかいくぐりステージに上がってきました。
テンションが上がっている子供達は戦闘員を追いかけてステージにはい上がろうと手をかけました。
『勝手に上がって来んなぁッ!』
完全に素に戻った悪ボスの怒鳴り声です。
『楽しいクリスマスにするつもりでやって来たが、こんなクソガキどもと遊ぶのはやめた!!』
客席の大人達の笑顔が消えました。
『ホントはな、色んな作戦を用意していたが、頭の悪いガキどもに付き合うのは時間のムダだ!今からここに●●●●マンを呼んでさっさと片付けてやる!さぁ!出て来い●●●●マン!』
慌ててレッドとピンクが登場しました。
レッドはせめてカッコ良くポーズを決めて会場の雰囲気を変えようとしています。
シュバッ!シュバッ!
キレのいいポーズに合わせてスタッフがレッドの声をアテます。
『●●●●レッドォッ!』
バシーンッ!!
…ポーズは決まったのに変な空気が流れました。
スタッフが名前を間違えたのです。
…重い空気の中、再びレッドの声が聞こえます。
『スマン!間違えたようだ!もう1回やり直すぞ!●●●●レッドォ!』
2回目のポーズはもはや苦笑いの対象でしかありません。
僕はレッド・ピンクと戦いながら、
『やっちまった…。もう来年はこの仕事ないな…』
なんて考えていました。
…というワケで…
20分の尺をもらっていたメインイベントは、全員の心にしこりを残したまま5分で終了…
スタッフとMCは時間を埋める為、そしてお客さんに機嫌を直してもらう為に急遽
『戦隊グッズが当たる抽選会』
を開催。
その後の裏事情までは分かりませんが、きっと大問題になったのではないかと。
営業担当が謝罪に出向いて頭を下げたのではないかと。
そうだったら本当に申し訳ない…
当時の僕は、
『キャラクターショーは暖かく迎え入れてもらえるのが当たり前』
だと思っていました。
おまけに、リハーサル通り、台本通りに進行させる能力しかありませんでした。
要するに『アドリブ能力』がなかったのです。
アドリブ能力とは『経験の引き出し』の事だと思います。
ステージに立ってみた。
予想より子供が大人しい。
今までの経験から言えば、こーゆー時はこうしたら盛り上がるんじゃないか?
小さい子が怖がって泣いてしまった。
今までの経験から言えば、こーゆー発言をしたら周りのお客さんにウケるんじゃないか?
この、
『今までの経験から言えば~』
というのが引き出しでありアドリブ能力なのだと思います。
冒頭で『若気の至り』と言い訳したのはその事で、ショーを始めて2年、しゃべりを始めて1年半の僕では経験値が足りなかった、という事なのです。
では、もし今の僕が当時のこのステージに立ったなら…?
悪ガキどもをコントロールする事が出来るか否か?
想像すると…
やっぱり緊張しますね(笑)
若気の至り…
そう、
言い訳するとしたら
若気の至りと言うしかない…
当時、
とあるホテルで例年、ある団体さんのクリスマスパーティーが行われていました。
そのパーティーのメインイベントは我々のキャラクターショー。
ディナーをいただきながら観るミニショーでした。
ミニショーというのは、予算や状況に合わせて人数を少なくしたり時間を短かくしたりといったショーの事です。
このイベントの場合は、昨年の戦隊からレッドとピンクが登場。
悪役はボスと戦闘員2人。
いつもの戦隊ショーより少ない計5人です(+スタッフ&MC)。
僕の役どころはしゃべりの悪ボス。
昨年からしゃべりの現場をこなしてきた事を買われてのキャスティングです。
リハもバッチリ、台本も頭に入っています。
オールOK!
時間になり、いよいよショーが始まってステージに出ると…
ぅわっ!
明らかに悪ガキだらけです!
普段のショーの観客というのはたまたま集まった見ず知らずの人達です。
面識がない者同士なのでお互いに抑制しあって大人しくしています。
しかし、今回のように1つの団体さんが集まっている状況だと全く違います。
周りが顔見知りばかりだから悪ノリするのです。
普段なら、
「ちょっと戦闘員にパンチ入れに行こうかなぁ~。…でも周りはみんな大人しく座ってるからやめとこ…」
ってなる子供も、周りにいる友達が
「殴りに行こうぜ!」
と言えば、
「おぅっ!行こうぜ!」
ってなっちゃうんですね。
親の方も、暴れているのが知らない子供なら
「ウチの子が楽しんでるのにあの子のせいで台無しだわ!親はどこなの!?早く止めなさいよ!」
と思うのに、知り合いの子供だと
「まぁ、おたくの●●ちゃんはいつも元気でいいですわね~、おほほほ」
みたいになってしまうのです。
つまり1つの団体さんの中でのショーというのは、ブレーキのない子供達が集団心理に操られ暴徒と化す可能性があるのです。
まさに、この日はそうでした。
会場内を自由に走り回り、奇声をあげ、ヤジをとばし、ステージに勝手に上がってくる子供達…
食事をしながらニコニコとそれを眺める大人達…
ここで言っておきたいのは、この状況がダメだという事ではない、と言う事です。
アクター自身の経験値とテクニック、そしてスタッフ・MCの協力があれば何とかなる事も多いのです。
ましてやしゃべりショーなら、そこはしゃべりの腕で何とか出来るのです。
…
…僕なら…
…今の僕なら…
残念な事に、この時の僕には経験値もテクニックもしゃべりの腕もありませんでした。
この時のショーのメインは、子供をステージに上げてのお遊びです。
15分ほど子供達と遊んだ後にヒーローが登場してアクション、という流れでした。
僕は段取り通り、これから戦闘訓練を行なう事を告げ、戦闘員はステージにあがってもらう子供を探す為に客席に入っていったのですが…
この瞬間、子供達の目に凶悪な炎が灯りました。
そして…
客席にいたほぼ全員の子供達が、奇声をあげながら戦闘員に向かって行ったのです。
殴り、蹴り、のしかかり、衣裳を脱がそうとする数十人の子供達…
『えぇ~い!オマエら!落ち着け!一旦席に戻れ!話を聞け!!』
僕の怒鳴り声も聞こえていないようです。
反撃するワケにもいかない戦闘員達は、取り囲まれ、馬乗りされている状態で殴られ蹴られ、ただジッと耐えていました。
ふと大人達を見ると、みんな楽しそうにその状況を眺めています。
それを見た時に僕の中で何かが
ぷっちぃ~ん
と音をたてました。
『おい!戦闘員!戻って来い!子供選びはもういいから、とりあえず急いで戻って来い!早くしろ!!』
戦闘員は慌てて子供達の攻撃をかいくぐりステージに上がってきました。
テンションが上がっている子供達は戦闘員を追いかけてステージにはい上がろうと手をかけました。
『勝手に上がって来んなぁッ!』
完全に素に戻った悪ボスの怒鳴り声です。
『楽しいクリスマスにするつもりでやって来たが、こんなクソガキどもと遊ぶのはやめた!!』
客席の大人達の笑顔が消えました。
『ホントはな、色んな作戦を用意していたが、頭の悪いガキどもに付き合うのは時間のムダだ!今からここに●●●●マンを呼んでさっさと片付けてやる!さぁ!出て来い●●●●マン!』
慌ててレッドとピンクが登場しました。
レッドはせめてカッコ良くポーズを決めて会場の雰囲気を変えようとしています。
シュバッ!シュバッ!
キレのいいポーズに合わせてスタッフがレッドの声をアテます。
『●●●●レッドォッ!』
バシーンッ!!
…ポーズは決まったのに変な空気が流れました。
スタッフが名前を間違えたのです。
…重い空気の中、再びレッドの声が聞こえます。
『スマン!間違えたようだ!もう1回やり直すぞ!●●●●レッドォ!』
2回目のポーズはもはや苦笑いの対象でしかありません。
僕はレッド・ピンクと戦いながら、
『やっちまった…。もう来年はこの仕事ないな…』
なんて考えていました。
…というワケで…
20分の尺をもらっていたメインイベントは、全員の心にしこりを残したまま5分で終了…
スタッフとMCは時間を埋める為、そしてお客さんに機嫌を直してもらう為に急遽
『戦隊グッズが当たる抽選会』
を開催。
その後の裏事情までは分かりませんが、きっと大問題になったのではないかと。
営業担当が謝罪に出向いて頭を下げたのではないかと。
そうだったら本当に申し訳ない…
当時の僕は、
『キャラクターショーは暖かく迎え入れてもらえるのが当たり前』
だと思っていました。
おまけに、リハーサル通り、台本通りに進行させる能力しかありませんでした。
要するに『アドリブ能力』がなかったのです。
アドリブ能力とは『経験の引き出し』の事だと思います。
ステージに立ってみた。
予想より子供が大人しい。
今までの経験から言えば、こーゆー時はこうしたら盛り上がるんじゃないか?
小さい子が怖がって泣いてしまった。
今までの経験から言えば、こーゆー発言をしたら周りのお客さんにウケるんじゃないか?
この、
『今までの経験から言えば~』
というのが引き出しでありアドリブ能力なのだと思います。
冒頭で『若気の至り』と言い訳したのはその事で、ショーを始めて2年、しゃべりを始めて1年半の僕では経験値が足りなかった、という事なのです。
では、もし今の僕が当時のこのステージに立ったなら…?
悪ガキどもをコントロールする事が出来るか否か?
想像すると…
やっぱり緊張しますね(笑)
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