2015-05-15(Fri)
小説・さやか見参!(266)
かすかに、
断の爪先がかすかに動いた気がした。
紅蓮丸がそう思った時、イバラキと断の姿は視界から消えていた。
足元の落ち葉をわずかにも舞わせる事なく、
土埃すら上げる事もなく、
二人は戦闘を開始したのだ。
紅蓮丸の隣では炎丸がきょろきょろと首を動かしている。
『兄者ぁ、イバラキ様消えちまったぜぇ~』
動揺している弟の姿がおかしくて紅蓮丸はふっと笑った。
『我々の目では本気のイバラキ様を捉える事は出来ませんよ』
炎丸が感心したように大袈裟に頷く。
紅蓮丸は周囲の忍び達に目をやった。
全員が身じろぎもせずに立っている。
どうやら幻龍の配下といえどイバラキの動きを見切る事は出来なかったらしい。
しかし呆然と立ち尽くしているのかといえばそうでもなく、頭領の勝利を信じて待機しているといった体だ。
(イバラキ様は断って奴に何度も圧勝してるみたいだから心配はいらないんでしょうけど…)
紅蓮丸は幻龍組の統率力に改めて畏怖した。
それにしても…
『炎丸、私達は命拾いをしたようですね』
『えっ?』
『イバラキ様だけじゃなく、あの断という男の動きも全く見えませんでしたね、私達には』
『あ?あぁ』
『どうやら幻龍の者達にも見えなかったようですよ。手練れ揃いの忍び達が全員見失ってしまったようです』
『えっ…という事は』
『断の腕前はここにいる連中をはるかに凌ぐという事になりますね。もし私達がそんな奴に向かって行ってたとしたら…』
そこまで言われて炎丸が震えだした。
『あわわわわ…兄者ぁ…』
紅蓮丸も小刻みに震えている。
『勢いでかかっていかなくて良かったわぁ~!これからはもっと慎重にいきましょ!ね!ね!』
断の爪先がかすかに動いた気がした。
紅蓮丸がそう思った時、イバラキと断の姿は視界から消えていた。
足元の落ち葉をわずかにも舞わせる事なく、
土埃すら上げる事もなく、
二人は戦闘を開始したのだ。
紅蓮丸の隣では炎丸がきょろきょろと首を動かしている。
『兄者ぁ、イバラキ様消えちまったぜぇ~』
動揺している弟の姿がおかしくて紅蓮丸はふっと笑った。
『我々の目では本気のイバラキ様を捉える事は出来ませんよ』
炎丸が感心したように大袈裟に頷く。
紅蓮丸は周囲の忍び達に目をやった。
全員が身じろぎもせずに立っている。
どうやら幻龍の配下といえどイバラキの動きを見切る事は出来なかったらしい。
しかし呆然と立ち尽くしているのかといえばそうでもなく、頭領の勝利を信じて待機しているといった体だ。
(イバラキ様は断って奴に何度も圧勝してるみたいだから心配はいらないんでしょうけど…)
紅蓮丸は幻龍組の統率力に改めて畏怖した。
それにしても…
『炎丸、私達は命拾いをしたようですね』
『えっ?』
『イバラキ様だけじゃなく、あの断という男の動きも全く見えませんでしたね、私達には』
『あ?あぁ』
『どうやら幻龍の者達にも見えなかったようですよ。手練れ揃いの忍び達が全員見失ってしまったようです』
『えっ…という事は』
『断の腕前はここにいる連中をはるかに凌ぐという事になりますね。もし私達がそんな奴に向かって行ってたとしたら…』
そこまで言われて炎丸が震えだした。
『あわわわわ…兄者ぁ…』
紅蓮丸も小刻みに震えている。
『勢いでかかっていかなくて良かったわぁ~!これからはもっと慎重にいきましょ!ね!ね!』
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