2015-04-16(Thu)

小説・さやか見参!(264)

『あなたが元・一角衆だろうが現役の一角衆だろうがそんな事は知った事ではありませんね』

紅蓮丸が凄んだ。

『断といいましたか。何者か存じませんが、幻龍組に仇成すつもりならば容赦しませんよ』

炎丸が背中の籠から柴刈り用の鎌を素早く取り出して兄に放った。

紅蓮丸がそれを受け取り身構える。

そういえば、

かつて魔剣に操られ、荘島の城でイバラキを襲った紅蓮丸を断は見ているのである。

『あぁ、お前あの時の炎使いか。でっかい剣に操られてた』

断が思い出し笑いをしながらそう言うと紅蓮丸は『えぇっ!?』と素っ頓狂な声を出して驚き、驚き過ぎて鎌を取り落とした。

『どうした兄者!?』

炎丸が鎌を拾い、断に向かって構える。

『てめぇふざけるんじゃないぜぇ。兄者が操られるだと?そんなワケないぜぇ!!』

大音声だ。

本気で怒っているらしい。

だが紅蓮丸には身に覚えがある。

『ちょ、ちょっと、炎丸、それは…』

どうにかなだめて止めようとしたが、熱くなった弟は聞く耳を持たない。

『相手がヒトだろうが剣だろうが、負けて操られるだの負けて従うだの、兄者ほどの術者がそんな醜態さらすなんてありえないぜぇ!』

紅蓮丸が魔剣に操られていた事も、イバラキに負けて幻龍組に従っている事も、その場にいる全員が知っていた。

いや、魔剣の事はともかく、現在イバラキに従っている事は炎丸も知っているはずなのだが…

そういう都合の悪い事はすぐに忘れてしまう残念な炎丸であった。

紅蓮丸は赤面しながら周りを見る。

真実を知っている断も、幻龍の忍び達も、あろう事かイバラキまでもが笑いをこらえていた。

(も、もうやめて炎丸)

だが紅蓮丸の祈りは通じなかった。

『さぁ、兄者にわびを入れてもらうぜぇぇ!!』

炎丸がこれ以上ないくらいに声を張って鎌を振り上げた。

その表情は、この上なく得意気だった。

紅蓮丸が、両手でそっと顔を覆った。

周りの全員が吹き出しそうになっているのを見てイバラキが炎丸を制した。

『まぁおぬしは知らずとも、あやつはおぬしを知っているという事だ、紅蓮丸。炎丸、ここは良いから下がっておれ』

『はぁ…』

釈然としない顔で炎丸が断から離れた。

『相変わらず面白いなぁ、幻龍組は』

断が笑った。

イバラキも笑って答える。

『拙者が求めておるわけではないがな。さてどうする?やはり戦うか?そんな雰囲気でもなくなってしまったが』

『確かにな。まったく、そちらのお二人さんにも困ったもんだぜ』

断がわざとらしく大きなため息をつく。

その気持ち、作者にもよく分かる。

紅蓮丸と炎丸が絡んでくると全然シリアスな展開にならないのだ。

そしてストーリーが全然進まなくなるのだ。

断以上にため息をつきたいのは他ならぬ作者なのである。
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コメント

No title

作者の本音がでましたね~。

でも
そんな紅蓮丸と炎丸が好きなんですよね。

『困ったもんだぜ』 (笑)。

>玉姫さん

炎兄弟は一番俗っぽい人間らしいキャラクターなんで放っとけないんですよね。
ダメな子ほど可愛いと言いますか…
そして彼らが絡んでる時は作者の声なんかのメタフィクションも入れ易いんですよ(笑)
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

2017年11月26日は10周年記念『ギルティー!!』を公演します!
福岡市南区大橋にて19:30開演!

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