2010-01-10(Sun)
アクションへの道(37)
ようやく部屋を借りて1人暮らしを始めた僕。
ある日、事務所の社員さんから、
「北九州に住んでるメンバーに現場入ってもらったんで、悪いけどお前の部屋に1週間ぐらい泊めてやってくれないか」
と言われました。
そのメンバーは僕と同い年ですがキャリアは上で、当時ほとんど面識がありませんでした。
人見知りな僕は本当は断りたかったんですが、会社からの頼みなので渋々引き受けました。
そいつはそれから特に家賃を払う事もなく、1年半も僕の部屋に居座っていました。
ある日、年齢が10も離れた大先輩が、
「俺、会社やめようかなぁ。そしたら寮を出なくちゃいけないから、やめたらタケシの所に来ていい?」
と言ったので、てっきり冗談だと思い、軽く
「いいですよ~。どうぞどうぞ」
なんて答えてたんですが、数日後部屋に入ると、見知らぬ家電製品がいっぱい置いてあって
「あっ、本気だったんだ」
って思ったという・・・
そんな突然の3人暮らしが始まった1992年。
僕は戦隊物もやってましたがメタルヒーローのショーにも入っていました。
メタルヒーローの衣裳は戦隊と違い、上から下までゴッテゴテです。
野球のユニフォームと剣道着ぐらいの差があります。
これは・・・夏場は本当に暑いんです(夏場じゃなくても暑いですが)。
1ステージ目が終わって干している衣裳から汗がしたたって水たまりが出来ているのを見た時は、
「あぁ、ブーツに汗がたまるような話は聞いた事があったけど、大袈裟じゃなかったんだ」
と思ったものです。
夏の暑い日のメタルヒーローショーでの事。
ヒーロー役は3名。
2人の大先輩と僕です。
現場はとあるスーパーの店頭。
日陰のない屋外。
正直この時期、直射日光を浴びながらのショーは厳しいものがあります(アクターもお客さんも)。
ましてやゴッテゴテのメタルヒーロー・・・
しかもそこはステージ状況がちょっと変わっていました。
足場はピッチャーマウンドのように盛り上った円形状になっていて安定しません。
その円形を中心に360°お客さんが取り囲んでいます。
そしてハケ・・・
ハケ、というのはキャラクターがショーの最中に使う控え室のようなもので、ここから登場したりここに隠れたりする場所ですが、それが2階にあったのです。
ショーではストーリーの進行上、ハケへの出入りが何回もあります。
僕らがやっていた完パケショーの音声は、一応この出入りのタイムロスまで考えて作られているのですが、2階までの階段を上り下りするような事態は想定していません。
ハケというのはステージのすぐ近くにあるのが一般的で、それなら
怪人退場→ハケに入る→しばし間をおいてヒーロー登場
で済むのですが、今回のパターンだと、
怪人、客席の間を縫って階段に移動→たむろするお客さんをすり抜けながら階段を上り2階へ→ハケに入る→ヒーロー、ハケから出る→お客さんをすり抜けながら階段を下りる→客席の間を縫ってステージに登場
となるのです。
これを前者と同じ時間でやらなくちゃいけないのです。
しかしそれは無理な話でして・・・
必然的に、怪人はセリフをしゃべりながらジワジワと階段に近付き、階段を上りながらセリフを終え、ヒーローはその怪人とすれ違いながらセリフをしゃべりつつ階段を下りる・・・みたいな大変な状況になるワケです。
アクションも全力、移動もダッシュです。
これはキツかった!!
以降に経験する中でも上位のキツさでしたね。
しかもこういう時に限って先輩達がアクションシーンを僕に任せっきりにするんですよ・・・
とにかく30分間全力で動いていました。
ショーが終わって2階のハケに駆け込んだ僕ですが、先輩の話によると、衣裳も脱がずにそのままハケの中をグルグル歩き出し、先輩の
「落ち着け!とりあえず休め!」
の声に
「止まったら死にます、止まったら死にます、止まったら死にます」
と言っていたそうです。
あの時止まらなくて本当に良かった・・・
~余談~
この日、現場に着いて衣裳・小道具をチェックしたところ、ヒーローが使う銃がない事が判明!!
ストーリー上欠かせない物なので先輩とスタッフが相談し、経費を使っておもちゃ屋さんで買う事に(当時はおもちゃをそのまま使ってたんです)。
ところが会社に帰ったら、何故か僕が社員さんに呼び出されて怒られました。
1人だけ。
小道具を忘れた事と、会社に相談もなく経費で勝手に買ったのがいけなかったそうです。
それ、俺のせい??
小道具を入れ忘れたのは目の前で怒っている社員さんなんですが・・・
買うと決めたのも買ったのもスタッフと先輩なんですが・・・
まだキャリア1年半の僕にそんな権限あるワケない。
分かってるでしょ??
おそらくこの社員さん、同じ会社の社員であるスタッフやベテランの先輩は怒れなかったんでしょうね。
でも誰かを怒らなきゃいけないから結局僕を呼んだんだと思います。
正直、しょーもない会社やなぁ、と思いました。
しかるべき責任を追及せず、弱い者に責任を被らせるなんて社会人としてどうかと思ったし、何よりそんな事では何も解決しません。
僕はますます会社への不信感をつのらせていったのでした。
ある日、事務所の社員さんから、
「北九州に住んでるメンバーに現場入ってもらったんで、悪いけどお前の部屋に1週間ぐらい泊めてやってくれないか」
と言われました。
そのメンバーは僕と同い年ですがキャリアは上で、当時ほとんど面識がありませんでした。
人見知りな僕は本当は断りたかったんですが、会社からの頼みなので渋々引き受けました。
そいつはそれから特に家賃を払う事もなく、1年半も僕の部屋に居座っていました。
ある日、年齢が10も離れた大先輩が、
「俺、会社やめようかなぁ。そしたら寮を出なくちゃいけないから、やめたらタケシの所に来ていい?」
と言ったので、てっきり冗談だと思い、軽く
「いいですよ~。どうぞどうぞ」
なんて答えてたんですが、数日後部屋に入ると、見知らぬ家電製品がいっぱい置いてあって
「あっ、本気だったんだ」
って思ったという・・・
そんな突然の3人暮らしが始まった1992年。
僕は戦隊物もやってましたがメタルヒーローのショーにも入っていました。
メタルヒーローの衣裳は戦隊と違い、上から下までゴッテゴテです。
野球のユニフォームと剣道着ぐらいの差があります。
これは・・・夏場は本当に暑いんです(夏場じゃなくても暑いですが)。
1ステージ目が終わって干している衣裳から汗がしたたって水たまりが出来ているのを見た時は、
「あぁ、ブーツに汗がたまるような話は聞いた事があったけど、大袈裟じゃなかったんだ」
と思ったものです。
夏の暑い日のメタルヒーローショーでの事。
ヒーロー役は3名。
2人の大先輩と僕です。
現場はとあるスーパーの店頭。
日陰のない屋外。
正直この時期、直射日光を浴びながらのショーは厳しいものがあります(アクターもお客さんも)。
ましてやゴッテゴテのメタルヒーロー・・・
しかもそこはステージ状況がちょっと変わっていました。
足場はピッチャーマウンドのように盛り上った円形状になっていて安定しません。
その円形を中心に360°お客さんが取り囲んでいます。
そしてハケ・・・
ハケ、というのはキャラクターがショーの最中に使う控え室のようなもので、ここから登場したりここに隠れたりする場所ですが、それが2階にあったのです。
ショーではストーリーの進行上、ハケへの出入りが何回もあります。
僕らがやっていた完パケショーの音声は、一応この出入りのタイムロスまで考えて作られているのですが、2階までの階段を上り下りするような事態は想定していません。
ハケというのはステージのすぐ近くにあるのが一般的で、それなら
怪人退場→ハケに入る→しばし間をおいてヒーロー登場
で済むのですが、今回のパターンだと、
怪人、客席の間を縫って階段に移動→たむろするお客さんをすり抜けながら階段を上り2階へ→ハケに入る→ヒーロー、ハケから出る→お客さんをすり抜けながら階段を下りる→客席の間を縫ってステージに登場
となるのです。
これを前者と同じ時間でやらなくちゃいけないのです。
しかしそれは無理な話でして・・・
必然的に、怪人はセリフをしゃべりながらジワジワと階段に近付き、階段を上りながらセリフを終え、ヒーローはその怪人とすれ違いながらセリフをしゃべりつつ階段を下りる・・・みたいな大変な状況になるワケです。
アクションも全力、移動もダッシュです。
これはキツかった!!
以降に経験する中でも上位のキツさでしたね。
しかもこういう時に限って先輩達がアクションシーンを僕に任せっきりにするんですよ・・・
とにかく30分間全力で動いていました。
ショーが終わって2階のハケに駆け込んだ僕ですが、先輩の話によると、衣裳も脱がずにそのままハケの中をグルグル歩き出し、先輩の
「落ち着け!とりあえず休め!」
の声に
「止まったら死にます、止まったら死にます、止まったら死にます」
と言っていたそうです。
あの時止まらなくて本当に良かった・・・
~余談~
この日、現場に着いて衣裳・小道具をチェックしたところ、ヒーローが使う銃がない事が判明!!
ストーリー上欠かせない物なので先輩とスタッフが相談し、経費を使っておもちゃ屋さんで買う事に(当時はおもちゃをそのまま使ってたんです)。
ところが会社に帰ったら、何故か僕が社員さんに呼び出されて怒られました。
1人だけ。
小道具を忘れた事と、会社に相談もなく経費で勝手に買ったのがいけなかったそうです。
それ、俺のせい??
小道具を入れ忘れたのは目の前で怒っている社員さんなんですが・・・
買うと決めたのも買ったのもスタッフと先輩なんですが・・・
まだキャリア1年半の僕にそんな権限あるワケない。
分かってるでしょ??
おそらくこの社員さん、同じ会社の社員であるスタッフやベテランの先輩は怒れなかったんでしょうね。
でも誰かを怒らなきゃいけないから結局僕を呼んだんだと思います。
正直、しょーもない会社やなぁ、と思いました。
しかるべき責任を追及せず、弱い者に責任を被らせるなんて社会人としてどうかと思ったし、何よりそんな事では何も解決しません。
僕はますます会社への不信感をつのらせていったのでした。
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