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2015-01-08(Thu)

小説・さやか見参!(258)

灯火丸が想像した通りの光景を目の当たりにするまでそう時間はかからなかった。

紅蓮丸と炎丸が捕らえられ荒れた境内に連行されたのはほぼ同時であった。

両脇から腕を極められた紅蓮丸は『逃げないってば!いい加減に離しなさいよ!』などと騒ぎながら引き摺られてくる。

よく見ると幻龍の忍び達の野良着が所々焦げているので得意の火遁で急襲したのだろう。

縛りあげられて連れてこられた炎丸は全身びしょ濡れでおまけに猿轡をかまされていた。

騒々しい炎丸の事だ、縛られてなお大騒ぎしたのだろう。

こちらも火遁を使ったのだろうが場所が川辺では分が悪い。

水浸しにされて術を破られたのだ、きっと。

そういえば山吹の少女にも水浸しにされて負けたのではなかったか。

幼い灯火丸から見ても兄の姿は無様の一言に尽きた。

何故この程度で作戦が上手くいくと思ってしまったのだろう。

おそらく、伝説の鏡や魔剣に操られた経験が自分を見失わせているのだと灯火丸は思う。

それらに操られている時の二人は、それはすさまじい力を発揮したらしい。

炎丸は山吹の後継者を、紅蓮丸は幻龍の配下をかなり苦しめたのだという。

灯火丸はてっきり兄達のいつものホラ話だと思っていたが、これはイバラキからも聞いたので嘘ではなさそうである。

もちろん鏡や剣がなくとも二人は常人離れした手練れである。

それだけの修行を積み秘技を体得しているのは灯火丸も知っている。

だが、

実力で言えば幻龍の忍びには遠く及ばない事など火を見るより明らかなのだ。

それすらも分からなくなる程に宝具(呪具かもしれないが)に操られた影響力とは強いものなのだろうか。

何にしても兄二人は本人達の予想に反して、そして灯火丸の予想通りに敗北し捕らえられてしまったのだ。

こんなにあっさり決着がついた謀反もなかなか無いのではなかろうか。

『にいちゃん…』

か細く呟く灯火丸に向かって紅蓮丸は

『灯火丸!何故か失敗しちゃったわ!まさかこんな事になるなんて!』

と叫んだ。

『何故か、ねぇ…』

灯火丸は苦笑いを浮かべた。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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