2014-11-04(Tue)
小説・さやか見参!(248)
幻龍イバラキの足元で、襤褸雑巾の様に紅蓮丸が転がっていた。
改めて書くが、紅蓮丸はかなりの使い手である。
さやかをピンチに陥らせた弟・炎丸よりもずっと手練れなのである。
だが、どうにも運が悪いとしか言いようがない。
紅蓮丸は、自分が活躍出来ない場に足を運び、自分が敵わない相手に戦いを挑んでしまう、そんな星の下に生まれてしまったようだ。
『…うぅ…』
襤褸雑巾がぴくりとも動かず
『ワタクシの負けですね…分かりました、力による支配とはこういう事…おとなしく幻龍組の軍門に下りましょう…』
と、呻くように負けを認めた。
『拙者の手下になるというのか』
イバラキも動かず、ただ見下ろして訊く。
『なりたかないわよ…でも、技も通じず、術も通じずこんな目に遭わされて、他にどんな選択肢があるというのよ』
その言葉を聞いて、イバラキは小さくふふふと笑う。
『なによ』
紅蓮丸が感情の無い声で訊き返す。
するとイバラキは、片膝をつき、紅蓮丸の胸倉を掴んで引き起こした。
『紅蓮丸、今のおぬしを従えたところで、拙者は嬉しくも何ともないわ』
『え?』
イバラキの意外な言葉に紅蓮丸は戸惑う。
『拙者はな、誇りある者、生きる為の望み、野望を持った者しか認めんのだ。なぜなら、それこそが人間だと思うからだ』
『誇り…?野望…?』
『目的を持ち、その為に生きようとする、それが人間というものだ。いいか。誇りを奪われ、生きる意味を見失った者などはもはや生きる価値もない。価値のない負け犬を従えて何の得がある?だから拙者はおぬしを従えようとは思わぬ』
イバラキが手を離す。
紅蓮丸の身体がどさりと落ちる。
『紅蓮丸、おぬしがやろうとしているのはそういう事だ。力によって屈辱を与え、誇りを奪い、生きる価値のない負け犬を作り出して支配する。おぬしが率いるのは生ける屍の群れ。それが。おぬしの望みなのか??』
『あ…』
紅蓮丸は絶句した。
『力による支配とはそういう事だ。拙者はどうせ率いるのならば生命の炎を燃やした群れが良い。だから力による支配はやめたのだ。おぬしも、没落した炎一族を再興し名声を取り戻したいのであれば方法を考えねばな』
『…イバラキ、あんた…』
紅蓮丸がゆっくりと身体を起こす。
『どうだ紅蓮丸。おぬしの中に少しでも命の残り火があるなら従えてやらんでもないぞ』
イバラキが不敵に笑った。
紅蓮丸が立ち上がりながら噛み付く。
『残り火?ナメんじゃないわよ。私は炎一族の紅蓮丸よ。命の炎もめらめらよ!』
『ほう?』
『お家の再興もしなくちゃならないし、炎丸救出も弟に任せっぱなしには出来ないし、山吹の小娘にも、それからイバラキ、あんたにも復讐しなくちゃならないんだから、誇りも野望もたっぷりなんだからね!だから!』
そうタンカを切ると紅蓮丸はイバラキの足元に片膝をついた。
『だから、ワタクシは野望と野心を燃やしながら貴方様に従属いたします。幻龍組頭領、幻龍イバラキ様』
改めて書くが、紅蓮丸はかなりの使い手である。
さやかをピンチに陥らせた弟・炎丸よりもずっと手練れなのである。
だが、どうにも運が悪いとしか言いようがない。
紅蓮丸は、自分が活躍出来ない場に足を運び、自分が敵わない相手に戦いを挑んでしまう、そんな星の下に生まれてしまったようだ。
『…うぅ…』
襤褸雑巾がぴくりとも動かず
『ワタクシの負けですね…分かりました、力による支配とはこういう事…おとなしく幻龍組の軍門に下りましょう…』
と、呻くように負けを認めた。
『拙者の手下になるというのか』
イバラキも動かず、ただ見下ろして訊く。
『なりたかないわよ…でも、技も通じず、術も通じずこんな目に遭わされて、他にどんな選択肢があるというのよ』
その言葉を聞いて、イバラキは小さくふふふと笑う。
『なによ』
紅蓮丸が感情の無い声で訊き返す。
するとイバラキは、片膝をつき、紅蓮丸の胸倉を掴んで引き起こした。
『紅蓮丸、今のおぬしを従えたところで、拙者は嬉しくも何ともないわ』
『え?』
イバラキの意外な言葉に紅蓮丸は戸惑う。
『拙者はな、誇りある者、生きる為の望み、野望を持った者しか認めんのだ。なぜなら、それこそが人間だと思うからだ』
『誇り…?野望…?』
『目的を持ち、その為に生きようとする、それが人間というものだ。いいか。誇りを奪われ、生きる意味を見失った者などはもはや生きる価値もない。価値のない負け犬を従えて何の得がある?だから拙者はおぬしを従えようとは思わぬ』
イバラキが手を離す。
紅蓮丸の身体がどさりと落ちる。
『紅蓮丸、おぬしがやろうとしているのはそういう事だ。力によって屈辱を与え、誇りを奪い、生きる価値のない負け犬を作り出して支配する。おぬしが率いるのは生ける屍の群れ。それが。おぬしの望みなのか??』
『あ…』
紅蓮丸は絶句した。
『力による支配とはそういう事だ。拙者はどうせ率いるのならば生命の炎を燃やした群れが良い。だから力による支配はやめたのだ。おぬしも、没落した炎一族を再興し名声を取り戻したいのであれば方法を考えねばな』
『…イバラキ、あんた…』
紅蓮丸がゆっくりと身体を起こす。
『どうだ紅蓮丸。おぬしの中に少しでも命の残り火があるなら従えてやらんでもないぞ』
イバラキが不敵に笑った。
紅蓮丸が立ち上がりながら噛み付く。
『残り火?ナメんじゃないわよ。私は炎一族の紅蓮丸よ。命の炎もめらめらよ!』
『ほう?』
『お家の再興もしなくちゃならないし、炎丸救出も弟に任せっぱなしには出来ないし、山吹の小娘にも、それからイバラキ、あんたにも復讐しなくちゃならないんだから、誇りも野望もたっぷりなんだからね!だから!』
そうタンカを切ると紅蓮丸はイバラキの足元に片膝をついた。
『だから、ワタクシは野望と野心を燃やしながら貴方様に従属いたします。幻龍組頭領、幻龍イバラキ様』
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