2014-08-03(Sun)
小説・さやか見参!(244)
夜明けを控えた港町にカイテツの絶叫が轟いた。
いや、実際にはそれほど大きな声を上げたわけではない。
訓練された忍びは迂闊に悲鳴など上げないよう出来ている。
だからこそ、普段あげる事がないであろうカイテツの声が封には絶叫にも思えたのだ。
まるで爆発したかに思えたカイテツの右腕はぼろぼろに裂けて変形していた。
皮膚という皮膚、筋肉という筋肉が細かく爆ぜてしまっている。
大量の血が滴っている。
まさかの展開にカイテツが狼狽した一瞬に邪衆院はわずかに助走をつけた。
左足で反動をつけて跳び上がり、カイテツのこめかみに右の蹴りを叩き込む。
さすがのカイテツも大きくふらついた。
邪衆院は着地するやいなや再び跳躍し、カイテツのみぞおちに足刀を喰い込ませた。
カイテツは後方に吹っ飛び、あおむけに倒れ、それでも勢いが止まらず一回転した。
邪衆院は、
すでにカイテツの背後に回り込んでいる。
懐から出した武器、短い棒が繋がれた鉄の鞭・九節鞭がカイテツの太い首にぐるりと巻き付けられた。
カイテツが倒れようとする勢いを利用して邪衆院が背後に引く。
ざばぁん!!
そのまま二人は海に落ちた。
いや、邪衆院が引きずり込んだのだ。
封は思わず立ち上がって駆け寄った。
砂浜から少し離れたその場所はそれなりの深さがあるようだ。
すでに二人の姿はどこにもない。
『邪衆院天空…』
封が呟いた。
海中では、邪衆院がカイテツの首を締め上げながら、より深く、より深くへと泳ぎ続けていた。
もがくカイテツをものともせず、沖に向かって進んでいく。
幼い頃より故郷の急流で自らを鍛えていた邪衆院にとって水中は、実は最も得意な領域なのだ。
その邪衆院に海底に向かって運ばれながら、両腕の利かないカイテツは足をばたばたさせるしか抗う術がなかった。
息が出来ない。
もちろん長時間呼吸を止める術も身に付けてはいるのだが、深手を負い、水中で首を絞められているのだ。
さすがに苦しい。
おまけに、
破裂した右腕からはとめどなく大量の血液が流れ出している。
邪衆院は失血死を狙っているのだ。
カイテツは薄れゆく意識の中で考えていた。
邪衆院は逆手に持った短剣を使う事なく、鎧の隙間に打撃攻撃を加えてきた。
そうか、あの時、
こいつは連撃しながらも秘かに短剣を使っていたのだ。
あの短剣は、俺の右腕を、小さく浅く、小刻みに斬っていたのだ。
左腕への打撃で気を逸らせながら、皮膚を、筋肉を、ぎりぎりの深さで斬りつけ続けていたのだ。
そして左腕を破壊された俺は奴の策略通り右腕一本で巨大な鉄槌を振り上げた。
ぎりぎりまで斬りつけられた無数の傷は筋肉の怒張に耐え切れず、
右腕は破裂するように裂けたのだ。
一角衆粛清隊である俺を力と技で圧倒的に凌駕しただけでなく、同時に気付かれもせず致命傷を与え策略を完遂するとは、この男…
九節鞭に力が入った。
首が更に絞まった。
…邪衆院天空…
その名を思い浮かべたところで、カイテツは活動を停止した。
いや、実際にはそれほど大きな声を上げたわけではない。
訓練された忍びは迂闊に悲鳴など上げないよう出来ている。
だからこそ、普段あげる事がないであろうカイテツの声が封には絶叫にも思えたのだ。
まるで爆発したかに思えたカイテツの右腕はぼろぼろに裂けて変形していた。
皮膚という皮膚、筋肉という筋肉が細かく爆ぜてしまっている。
大量の血が滴っている。
まさかの展開にカイテツが狼狽した一瞬に邪衆院はわずかに助走をつけた。
左足で反動をつけて跳び上がり、カイテツのこめかみに右の蹴りを叩き込む。
さすがのカイテツも大きくふらついた。
邪衆院は着地するやいなや再び跳躍し、カイテツのみぞおちに足刀を喰い込ませた。
カイテツは後方に吹っ飛び、あおむけに倒れ、それでも勢いが止まらず一回転した。
邪衆院は、
すでにカイテツの背後に回り込んでいる。
懐から出した武器、短い棒が繋がれた鉄の鞭・九節鞭がカイテツの太い首にぐるりと巻き付けられた。
カイテツが倒れようとする勢いを利用して邪衆院が背後に引く。
ざばぁん!!
そのまま二人は海に落ちた。
いや、邪衆院が引きずり込んだのだ。
封は思わず立ち上がって駆け寄った。
砂浜から少し離れたその場所はそれなりの深さがあるようだ。
すでに二人の姿はどこにもない。
『邪衆院天空…』
封が呟いた。
海中では、邪衆院がカイテツの首を締め上げながら、より深く、より深くへと泳ぎ続けていた。
もがくカイテツをものともせず、沖に向かって進んでいく。
幼い頃より故郷の急流で自らを鍛えていた邪衆院にとって水中は、実は最も得意な領域なのだ。
その邪衆院に海底に向かって運ばれながら、両腕の利かないカイテツは足をばたばたさせるしか抗う術がなかった。
息が出来ない。
もちろん長時間呼吸を止める術も身に付けてはいるのだが、深手を負い、水中で首を絞められているのだ。
さすがに苦しい。
おまけに、
破裂した右腕からはとめどなく大量の血液が流れ出している。
邪衆院は失血死を狙っているのだ。
カイテツは薄れゆく意識の中で考えていた。
邪衆院は逆手に持った短剣を使う事なく、鎧の隙間に打撃攻撃を加えてきた。
そうか、あの時、
こいつは連撃しながらも秘かに短剣を使っていたのだ。
あの短剣は、俺の右腕を、小さく浅く、小刻みに斬っていたのだ。
左腕への打撃で気を逸らせながら、皮膚を、筋肉を、ぎりぎりの深さで斬りつけ続けていたのだ。
そして左腕を破壊された俺は奴の策略通り右腕一本で巨大な鉄槌を振り上げた。
ぎりぎりまで斬りつけられた無数の傷は筋肉の怒張に耐え切れず、
右腕は破裂するように裂けたのだ。
一角衆粛清隊である俺を力と技で圧倒的に凌駕しただけでなく、同時に気付かれもせず致命傷を与え策略を完遂するとは、この男…
九節鞭に力が入った。
首が更に絞まった。
…邪衆院天空…
その名を思い浮かべたところで、カイテツは活動を停止した。
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