2014-07-22(Tue)
小説・さやか見参!(242)
邪衆院天空は下忍の生首の山をまたいで封に近付いてきた。
袖を千切った墨色の半着からは筋肉の部位が識別出来るほど鍛えられた腕が伸びている。
そしてその左手には逆手に握った短剣が光っている。
もしやその短い刃一本でこれだけの数の首を刎ねたというのだろうか。
だが、邪衆院の実力を知る封はそれを素直に受け入れた。
『どうしてここに?』
封があえぐように訊いた。
まだ息をするのも苦しかったのだ。
『おまえ、邪衆院といったなァ』
ようやく冷静さを取り戻したカイテツも訊いた。
が、邪衆院はカイテツの問いを無視した。
『ま、俺とおかしらの考えが一致したっていうか』
『イバラキの?』
封が不思議そうな顔をした。
『おい!無視するなァ!』
カイテツが怒鳴ったが、意に介さず邪衆院は封に近付いた。
『あんたが抜けたら一角衆は間違いなく追っ手を放つ。それもかなりの手練れをね。そこらの忍びじゃあんたに敵わないから。だとしたら一角衆が放つのは粛清隊のいずれかだろう。粛清隊なら必ずあんたに追いつく。そしてあんたは簡単には勝てない』
飄々と、しかし一気にまくしたてる。
『言ってくれるわね。傷つくわ』
封がすねた物言いをした。
『簡単には勝てないですって?素直に私じゃ勝てないって言いなさいよ』
邪衆院が曖昧な笑みを浮かべてごまかした。
『おまえらァ!俺をナメてんのかァ!!』
怒声と共にカイテツが動いた。
そして動いたと思った瞬間には、封に向かって巨大な鉄槌が振り下ろされていた。
ずうぅぅぅぅん!!
足元は衝撃を吸収する砂浜だというのに地響きがした。
半端ではない衝撃。
人間など原形も分からぬぐらいに叩き潰す事が出来る攻撃である。
だが、
封の最期を確信したカイテツが見たものは、涼しげな表情のまま封を抱きかかえ安全圏に移動している邪衆院の姿だった。
『お、おまえ、いつの間にィ!?』
『一角衆粛清隊、鉄槌のカイテツ。あんたも速いけど、奇遇だね。俺もなかなか速い。驚いた?』
誇るでも驕るでも見くびるでもなく、あくまで普通といった邪衆院の口ぶりに、カイテツは頭に血が上るのを感じた。
『俺はね、あんたには生き延びてもらいたいと思った。だから後を追いたいと言った』
抱きかかえた封を下忍の生首の近くにそっと降ろす。
『おかしらはあんたに死なれては困ると言った。約束通り復讐に来てもらわねばならぬと。だから俺に後を追えと言った」
穏やかに話しながらカイテツと対峙する。
「で、ここに来たってわけ。国に帰るならこの港だろうから。納得出来た?』
封は身体の痛みを堪えつつ笑いを止める事が出来なかった。
くくくと小さく笑いながら
『あんた達、馬鹿みたい』
と言った。
邪衆院も
『傷付くなぁ』
と笑った。
そして、カイテツと邪衆院が同時に動いた。
袖を千切った墨色の半着からは筋肉の部位が識別出来るほど鍛えられた腕が伸びている。
そしてその左手には逆手に握った短剣が光っている。
もしやその短い刃一本でこれだけの数の首を刎ねたというのだろうか。
だが、邪衆院の実力を知る封はそれを素直に受け入れた。
『どうしてここに?』
封があえぐように訊いた。
まだ息をするのも苦しかったのだ。
『おまえ、邪衆院といったなァ』
ようやく冷静さを取り戻したカイテツも訊いた。
が、邪衆院はカイテツの問いを無視した。
『ま、俺とおかしらの考えが一致したっていうか』
『イバラキの?』
封が不思議そうな顔をした。
『おい!無視するなァ!』
カイテツが怒鳴ったが、意に介さず邪衆院は封に近付いた。
『あんたが抜けたら一角衆は間違いなく追っ手を放つ。それもかなりの手練れをね。そこらの忍びじゃあんたに敵わないから。だとしたら一角衆が放つのは粛清隊のいずれかだろう。粛清隊なら必ずあんたに追いつく。そしてあんたは簡単には勝てない』
飄々と、しかし一気にまくしたてる。
『言ってくれるわね。傷つくわ』
封がすねた物言いをした。
『簡単には勝てないですって?素直に私じゃ勝てないって言いなさいよ』
邪衆院が曖昧な笑みを浮かべてごまかした。
『おまえらァ!俺をナメてんのかァ!!』
怒声と共にカイテツが動いた。
そして動いたと思った瞬間には、封に向かって巨大な鉄槌が振り下ろされていた。
ずうぅぅぅぅん!!
足元は衝撃を吸収する砂浜だというのに地響きがした。
半端ではない衝撃。
人間など原形も分からぬぐらいに叩き潰す事が出来る攻撃である。
だが、
封の最期を確信したカイテツが見たものは、涼しげな表情のまま封を抱きかかえ安全圏に移動している邪衆院の姿だった。
『お、おまえ、いつの間にィ!?』
『一角衆粛清隊、鉄槌のカイテツ。あんたも速いけど、奇遇だね。俺もなかなか速い。驚いた?』
誇るでも驕るでも見くびるでもなく、あくまで普通といった邪衆院の口ぶりに、カイテツは頭に血が上るのを感じた。
『俺はね、あんたには生き延びてもらいたいと思った。だから後を追いたいと言った』
抱きかかえた封を下忍の生首の近くにそっと降ろす。
『おかしらはあんたに死なれては困ると言った。約束通り復讐に来てもらわねばならぬと。だから俺に後を追えと言った」
穏やかに話しながらカイテツと対峙する。
「で、ここに来たってわけ。国に帰るならこの港だろうから。納得出来た?』
封は身体の痛みを堪えつつ笑いを止める事が出来なかった。
くくくと小さく笑いながら
『あんた達、馬鹿みたい』
と言った。
邪衆院も
『傷付くなぁ』
と笑った。
そして、カイテツと邪衆院が同時に動いた。
スポンサーサイト