2014-05-17(Sat)
小説・さやか見参!(233)
断は無言で酒宴の席から外れた。
不機嫌そうに出て行く断を、血讐もダチュラも辻占の老人も誰も気に留めなかった。
それはそうだ。今回の作戦に断は何も貢献していない。
それどころかここ数年は大した役にも立っていない。
唯一命じられている『幻龍組の奥義を奪う』という任務もいまだ果たされていない。
相棒の封は姿を消した。
イバラキを狙った末の消息不明であるから命を落としたのかもしれぬと思うが、血讐は
『あのイバラキに女が殺せるはずがない』
と判断した。
結果、封は抜け忍として追われる事となった。
どうやら粛清隊が差し向けられたようである。
『つまらねぇ』
断はつぶやいた。
以前は戦いが楽しかった。
他人を騙し、出し抜く事に生き甲斐を見出す事が出来た。
だが、今はそれがない。
決して善人になったわけではないのだが。
(俺も年取ったって事か?)
いや、そうではない。
あの日、
イバラキの術により余命わずかを宣言された日からこの虚しさは膨れ上がっていったのだ。
断は一角衆の砦を出て山を歩いてみた。
そこで断は、
初めて空を眩しいと思った。
初めて風を心地良いと感じた。
初めて木々を美しいと思った。
そして、そう思えた事を、
なんだか悲しい、と思った。
こんな気持ちで生きていくのなら、
『戦って死んだ方がマシだ』
断は呟く。
どうせ俺の寿命はあと少しで終わる。
だったら、
『イバラキと刺し違えてみるか』
再び呟く。
自分に与えられたたった一つの任務に命をかけるのも悪くないかもしれぬ。
もし上手くいってあのジジイを喜ばせる事になったら腹立たしいが、それでもまぁいい。
最後に汚名を雪げたなら、それはそれでありだ。
断は自嘲気味な笑みを浮かべて、里に向かって歩き出した。
不機嫌そうに出て行く断を、血讐もダチュラも辻占の老人も誰も気に留めなかった。
それはそうだ。今回の作戦に断は何も貢献していない。
それどころかここ数年は大した役にも立っていない。
唯一命じられている『幻龍組の奥義を奪う』という任務もいまだ果たされていない。
相棒の封は姿を消した。
イバラキを狙った末の消息不明であるから命を落としたのかもしれぬと思うが、血讐は
『あのイバラキに女が殺せるはずがない』
と判断した。
結果、封は抜け忍として追われる事となった。
どうやら粛清隊が差し向けられたようである。
『つまらねぇ』
断はつぶやいた。
以前は戦いが楽しかった。
他人を騙し、出し抜く事に生き甲斐を見出す事が出来た。
だが、今はそれがない。
決して善人になったわけではないのだが。
(俺も年取ったって事か?)
いや、そうではない。
あの日、
イバラキの術により余命わずかを宣言された日からこの虚しさは膨れ上がっていったのだ。
断は一角衆の砦を出て山を歩いてみた。
そこで断は、
初めて空を眩しいと思った。
初めて風を心地良いと感じた。
初めて木々を美しいと思った。
そして、そう思えた事を、
なんだか悲しい、と思った。
こんな気持ちで生きていくのなら、
『戦って死んだ方がマシだ』
断は呟く。
どうせ俺の寿命はあと少しで終わる。
だったら、
『イバラキと刺し違えてみるか』
再び呟く。
自分に与えられたたった一つの任務に命をかけるのも悪くないかもしれぬ。
もし上手くいってあのジジイを喜ばせる事になったら腹立たしいが、それでもまぁいい。
最後に汚名を雪げたなら、それはそれでありだ。
断は自嘲気味な笑みを浮かべて、里に向かって歩き出した。
スポンサーサイト