2014-04-23(Wed)
小説・さやか見参!(228)
さやかの加勢によって形勢が逆転、というわけにはいかなかった。
さやかと心太郎の力を持ってしても血飛沫鬼と血塗呂は手ごわい。
そして底の見えぬ不気味さがある。
さやかを前にしてなお二人の本気が見えぬのだ。
まるで遊ぶように、じゃれるように兄弟は襲い掛かってくる。
その表情は常に楽しそうなのだ。
おそらくは、敵に勝つ事が楽しく、また負けて命を落としたとしてもそれすら楽しいと思っているのだろう。
つまりは戦う事自体が楽しくて仕方がないのだ。
こういう手合いが一番やっかいだとさやかは思う。
「絶対に勝ちたい」とか「死にたくない」とか、そういう心に囚われる敵ならば隙を見つける事が出来るのだが、それがなければ技術でねじふせるしかない。
そして、敵ながら彼らの戦闘術は一流だ。
さぁ、どうやって倒す?
さやかが血塗呂の鈎爪を弾き返しながらそう考えた時、飛び掛ってきた血飛沫鬼が奇声をあげた。
『会いたかったぜ!山吹の娘!!おまえ、全然変わらねぇなぁ!!』
目にも留まらぬ速さで血飛沫鬼の攻撃が繰り出される。
『私は会いたくなんてなかったわよ!ってか、あんた達になんか会った事ないけど!?』
どうにか捌きながら答えたさやかの腹部に血飛沫鬼の蹴りがねじ込まれる。
『ぐっ!!』
『さやか殿!』
助けに行こうとした心太郎を血塗呂が阻んだ。
血飛沫鬼が追い討ちをかけながら続ける。
『なんだよ寂しい事言ってくれるじゃねぇか。俺達ゃあれからずっと考えてたんだぜ?お前をどうやってびびらせてやろうかって。なぁ血塗呂』
心太郎の肩を斬りつけた血塗呂がにやにやとうなずく。
『あれっていつよ!?』
さやかは思い出せなかった。もういい。今はそんな事関係ない。
さやかが構え直した。
心太郎が体勢を整えた。
だが、血飛沫鬼と血塗呂は攻撃を仕掛けてはこなかった。
『!?』
気付くと下忍達もいなくなっている。
『ちょっと!もうやんないの』
さやかがじりじりと攻撃態勢に入りながら声を荒げた。
だが赤と白の兄弟は跳ねるように距離を取り、
『まぁそろそろだからな』
と言った。
『そろそろ?』
さやかが問う間もなく
『じゃ、そういう事で』
とだけ言葉を残し、血飛沫鬼が消えた。
血塗呂も一瞬だけ遅れて、
さやかと心太郎に意味ありげな薄気味の悪い笑みを見せて、やはり消えた。
さやかはそれを見てざわざわと胸騒ぎを覚え、思わず
『音駒さん…!』
と呟いた。
さやかと心太郎は顔を見合わせてお互いに小さくうなずくと、音駒の所へ走り出した。
さやかと心太郎の力を持ってしても血飛沫鬼と血塗呂は手ごわい。
そして底の見えぬ不気味さがある。
さやかを前にしてなお二人の本気が見えぬのだ。
まるで遊ぶように、じゃれるように兄弟は襲い掛かってくる。
その表情は常に楽しそうなのだ。
おそらくは、敵に勝つ事が楽しく、また負けて命を落としたとしてもそれすら楽しいと思っているのだろう。
つまりは戦う事自体が楽しくて仕方がないのだ。
こういう手合いが一番やっかいだとさやかは思う。
「絶対に勝ちたい」とか「死にたくない」とか、そういう心に囚われる敵ならば隙を見つける事が出来るのだが、それがなければ技術でねじふせるしかない。
そして、敵ながら彼らの戦闘術は一流だ。
さぁ、どうやって倒す?
さやかが血塗呂の鈎爪を弾き返しながらそう考えた時、飛び掛ってきた血飛沫鬼が奇声をあげた。
『会いたかったぜ!山吹の娘!!おまえ、全然変わらねぇなぁ!!』
目にも留まらぬ速さで血飛沫鬼の攻撃が繰り出される。
『私は会いたくなんてなかったわよ!ってか、あんた達になんか会った事ないけど!?』
どうにか捌きながら答えたさやかの腹部に血飛沫鬼の蹴りがねじ込まれる。
『ぐっ!!』
『さやか殿!』
助けに行こうとした心太郎を血塗呂が阻んだ。
血飛沫鬼が追い討ちをかけながら続ける。
『なんだよ寂しい事言ってくれるじゃねぇか。俺達ゃあれからずっと考えてたんだぜ?お前をどうやってびびらせてやろうかって。なぁ血塗呂』
心太郎の肩を斬りつけた血塗呂がにやにやとうなずく。
『あれっていつよ!?』
さやかは思い出せなかった。もういい。今はそんな事関係ない。
さやかが構え直した。
心太郎が体勢を整えた。
だが、血飛沫鬼と血塗呂は攻撃を仕掛けてはこなかった。
『!?』
気付くと下忍達もいなくなっている。
『ちょっと!もうやんないの』
さやかがじりじりと攻撃態勢に入りながら声を荒げた。
だが赤と白の兄弟は跳ねるように距離を取り、
『まぁそろそろだからな』
と言った。
『そろそろ?』
さやかが問う間もなく
『じゃ、そういう事で』
とだけ言葉を残し、血飛沫鬼が消えた。
血塗呂も一瞬だけ遅れて、
さやかと心太郎に意味ありげな薄気味の悪い笑みを見せて、やはり消えた。
さやかはそれを見てざわざわと胸騒ぎを覚え、思わず
『音駒さん…!』
と呟いた。
さやかと心太郎は顔を見合わせてお互いに小さくうなずくと、音駒の所へ走り出した。
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