fc2ブログ
2014-04-20(Sun)

小説・さやか見参!(226)

心太郎は身体中の痛みに耐えていた。

下忍とはいえ一角衆の手練れを数十人も相手にしているのだ。

おまけに血飛沫鬼・血塗呂の兄弟も隙をついて攻撃してくる。

無傷でいられるはずがない。

内側に着込んだ皮の胴衣もぼろぼろになっているようだ。

だが、

身体を動かすのは心だ。

心が止まらなければ戦う事は出来る。

心太郎は絶叫のような気合いを上げると血飛沫鬼に斬りかかった。


『音駒さん』

老人はもう一度、少女の声で音駒を呼んだ。

音駒はがたがたと震えながら

『ま、まさかお前、』

とだけ呟いた。

そこから先を確認する勇気が出せなかったのだ。

老人は、いや、暗闇から聞こえる声は、音駒の戸惑いを察したかのようにはっきりと

『私、おみつよ』

と言った。

その名前を聞いた途端、音駒の目からとめどなく涙が流れた。

死者の声を聞いた恐怖からか、

常識という土台を失った混乱からか、

それは音駒本人にも分かりはしなかったが、それでも

やはり音駒は嬉しかった。

もう一度この声で、この名前が聞けたのだ。

『おみつ…おみつ!!』

音駒は叫んだ。


血飛沫鬼に向けられた心太郎の攻撃をはじいたのは血塗呂の鈎爪だった。

この兄弟の連携はすさまじい。

わずかに体勢を崩した心太郎を血飛沫鬼の刀が襲う。

刀と鈎爪が怒涛のように、縦横無尽に繰り出されてくる。

心太郎は、かわしながら、弾き返しながら、背後から飛び掛ってきた下忍を突き殺した。

絶命した下忍を飛び越えて盾にすると、心太郎は白と赤の兄弟から距離を取った。

『だいぶ疲れてきたみてえじゃねぇか』

足を止めて血飛沫鬼が挑発してくる。

『全然。これじゃ準備運動にもならないっシュね』

心太郎が強がった。

強がりながら、

(あ、今の何だかさやか殿っぽいっシュ)

などと考えていた。

『強がるなよ』

血飛沫鬼が笑う。隣で血塗呂も笑っている。

『早くこないだの術を見せろよ。もっと追い詰めなきゃ見せてくれねぇのか?それとも』

血飛沫鬼はわざと一瞬黙ってから

『まだ自分の意思じゃ術を使えない、とか?』

と言った。

その言葉に心太郎の中の何かがざわりと動いた。


『おみつ!おみつ!!私は、私は、』

音駒は何か言いたかった。

しかし何を言いたいのか、何を言えばいいのか分からずただ嗚咽した。

『音駒さん、しっかり生きているのね。そして、たくさんの人を助けているのね』

おみつの声は優しかった。

老人の姿はすでに闇に溶けて見えないので、音駒はおみつ本人と向き合っているような気持ちだった。

『あぁ、そうだよ。私はお前の後を追って死のうとした。だが死ねなかった。そんな時ある人に言われたんだ。死にたくなくても命を落としてしまう人がいるのに自分から命を捨てようとするとは何事だ、って。生きてる者は、死んでしまった者の為にも一生懸命生きなくちゃいけないんだって。だから私は…』

音駒は思いを一気に吐き出した。

その音駒におみつは

『音駒さん。…どうして生きてるの?』

と問いかけた。

音駒の心がざわりと騒いだ。
スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

No title

心太郎ー!

音駒さーん!

>玉姫さん

佳境に入ってまいりました♪
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード