2014-04-16(Wed)

小説・さやか見参!(224)

心太郎の視界が一面白くなる。

一角衆の下忍どもが壁のように立ちはだかり一斉に刀を突き出して来るのだ。

心太郎が攻撃を繰り出すと壁は瞬時に四散し、その陰から血飛沫鬼や血塗呂が刃を繰り出してくる。

『こざかしいっシュね!!』

眼前で血飛沫鬼の刀を受け止めた心太郎が毒を吐いた。

『よぉ、ちびっこい三流忍者さんよ、今日はあの術は使わねぇのかい』

挑発的に血飛沫鬼がささやく。

『あの術!?』

刀を弾き返した心太郎を今度は血塗呂の鈎爪が襲った。

飛び退いた所へ下忍達が次々と襲いかかる。

一角衆の下忍は手ごわい。

山吹の下忍もなかなかのものだが、戦闘力では一角衆の方が上だろう。

だが心太郎は負けるわけにはいかないのだ。

絶対に。

音駒を守らなければ。


音駒は、声をかけてきた老人を見て少し固まっていた。

自分が固まっているのは驚いているからだと気付いて少しおかしくなった。

以前の自分なら、このような宵の口に突然声をかけられたら驚いて腰を抜かしていただろうと思う。

さやかや心太郎と出会って何度も危険な目に遭って肝が据わってきたのだろう。

『驚きました。私はしがない医者の卵ですが、何か御用ですか?』

老人はにこにこと笑っている。

『あいや突然声をかけて申し訳ない。わしは根無し草の辻占のじじいでな』

『辻占をなさっておいででしたか。確か辻占とは辻を通る人の声から吉凶を占うものでしょう。このような人気の無い場所では占いにならぬのではありませんか?』

音駒は早く帰りたかったのだが、他人をぞんざいに扱う事など出来やしない。

本当に優しい男なのだ。

老人は乾いた声で笑った。

『確かに、どれだけ待っても誰も通らぬゆえ何も占う事は出来んかったわ。で、あきらめかけた時にお前さんが通った』

音駒は怪訝な顔をした。

辻占は声を聞くものである。

だが自分は言葉を発していない。

たった一人の道中では口を開く事もなかった。

『はて、しかし私は何も喋ってはおりません。知らぬ内に独り言でも出しておりましたか』

老人は更に笑って

『いやいやそうではない、心配せずともおぬしは何も喋っておらんよ』

音駒は困惑している。

『それでは一体…』

『まぁまぁ、じじいの胡散臭い話をちょっとだけ聞いておくれ。わしは辻占だが生まれ付いて不思議な力を持っておってな、信じられぬだろうが、死んだ者の言葉を預かる事が出来るのじゃ』

『死んだ者の言葉を?それは口寄せのような?』

老人は嬉しそうに頷いた。

『おお、そうじゃそうじゃ』

そこでようやく音駒は、この老人が巷で噂になっている辻占だと気が付いた。

『あ、ご老人はまさか』

『最近はわしの事を妖怪のように噂する者もおるようじゃがな。まぁ実際はこのようなみすぼらしいじじいに過ぎん』

そう自嘲してかっかっかと笑う。

『実体のない風聞だとばかり思っておりました。申し訳ない』

音駒が頭を下げる。

謝るような事ではないのだが、勝手にいないと決め付けていた事を悪いと思ったのだろう。

『しかし、口寄せというのはどうも…』

『信じられぬか』

『にわかには。極楽も地獄も証明出来ぬ事ですので…』

音駒は愛想笑いをした。

老人の戯言に付き合っているという感じだ。

だが、

老人はひどく真剣な表情をして音駒の顔を覗きこんだ。

日が暮れた中で老人の顔はほとんど見えない。

音駒は一瞬、この老人は本当に妖怪なのではないかと思い鳥肌が立った。

『信じられずとも仕方がない。だがな、現実に死者の世界は、ある』

その迫力に押されて音駒は声が出せない。

『わしがおぬしに声をかけたのもそれ故じゃ。死者がおぬしを見つけて』

闇の中、老人が目を見開いたのが分かった。

『呼んでおったのじゃ』

『死者が、私を?』

『そう。まだ若い、そうじゃな、十五、六といったところか。まるでかむろのような頭をした、少女じゃ』

そう言われて、音駒は全身が総毛立つような緊張を覚えた。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

2017年11月26日は10周年記念『ギルティー!!』を公演します!
福岡市南区大橋にて19:30開演!

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