2014-02-16(Sun)
小説・さやか見参!(216)
『邪衆院、天空』
さやかが復唱した。
『イバラキの手下って事は、あんたも忍者なの。そんな風には見えないけど』
『忍者ではないなぁ。武術家?殺し屋?…う~ん、肩書きは難しいな…。とりあえず今は幻龍組の武術教練をやってる』
『へぇ、じゃあ片腕みたいなもんね、イバラキの』
まるで世間話のように言葉を交わしているが、この間もさやかは紅蓮丸の攻撃を避け続けているのだ。
『で?邪魔しに来たの?それとも手伝ってくれんの?』
『いや、見てるだけ』
邪衆院は笑顔で答えた。
『そ。変な奴』
掴み所の無い男だが本当に見ているだけのようなので、さやかは気にせず戦いを継続する事にした。
しばらく見ていて分かったが、紅蓮丸の太刀筋には小細工がない。
ただ「敵を斬る」という意思が伝わってくるばかりである。
これならば反撃出来るかもしれない。
しかしさやかは思いとどまった。
『そうだ、邪衆院、こいつが刀に操られてるってどういう事?』
『敵に訊く?』
『あんたが言い出したんでしょ。最後まで言いなさいよ』
『はいはい』
そのやり取りに紅蓮丸が割って入った。
『ちょっと小娘!私を無視するなんていい度胸してるじゃないのよ!!』
この紅蓮丸という男、どれだけ派手に振る舞ってもぞんざいに扱われてしまう運命らしい。
それを見て邪衆院が吹き出した。
『そいつ、自分の意思で、自分の力で戦ってると思い込んでる。でも本当はその刀に使われてるだけなんだ』
『刀に使われるなんて』
『それは荘島で発見された伝説の魔剣でね、斬った相手を意のままに操る事が出来るんだって』
『それは誰が操るの?所持者?それとも』
『もちろん魔剣本体さ。その刀は他人を操ろうという明確な意思を持ってる。でもいかな魔剣とは言え自分自身で人を斬る事は出来ない。自分を振るってくれる奴が必要だ』
『それじゃ…』
さやかは執拗に刀を振るう紅蓮丸を見た。
『そこに現れたのがその紅蓮丸だよ。他人を従えたい欲にまみれ、くのいちを嬲りたい欲にまみれ、なおかつ魔剣を制御出来るほど強い心を持ち合わせない、そんなうってつけの男が魔剣の封印を解いてしまった』
『なるほどね』
にわかに信じがたい話ではあるのだが、炎丸との戦いでタオの鏡の不思議な力を目の当たりにしているさやかは、邪衆院の言葉を素直に受け入れていた。
さやかが復唱した。
『イバラキの手下って事は、あんたも忍者なの。そんな風には見えないけど』
『忍者ではないなぁ。武術家?殺し屋?…う~ん、肩書きは難しいな…。とりあえず今は幻龍組の武術教練をやってる』
『へぇ、じゃあ片腕みたいなもんね、イバラキの』
まるで世間話のように言葉を交わしているが、この間もさやかは紅蓮丸の攻撃を避け続けているのだ。
『で?邪魔しに来たの?それとも手伝ってくれんの?』
『いや、見てるだけ』
邪衆院は笑顔で答えた。
『そ。変な奴』
掴み所の無い男だが本当に見ているだけのようなので、さやかは気にせず戦いを継続する事にした。
しばらく見ていて分かったが、紅蓮丸の太刀筋には小細工がない。
ただ「敵を斬る」という意思が伝わってくるばかりである。
これならば反撃出来るかもしれない。
しかしさやかは思いとどまった。
『そうだ、邪衆院、こいつが刀に操られてるってどういう事?』
『敵に訊く?』
『あんたが言い出したんでしょ。最後まで言いなさいよ』
『はいはい』
そのやり取りに紅蓮丸が割って入った。
『ちょっと小娘!私を無視するなんていい度胸してるじゃないのよ!!』
この紅蓮丸という男、どれだけ派手に振る舞ってもぞんざいに扱われてしまう運命らしい。
それを見て邪衆院が吹き出した。
『そいつ、自分の意思で、自分の力で戦ってると思い込んでる。でも本当はその刀に使われてるだけなんだ』
『刀に使われるなんて』
『それは荘島で発見された伝説の魔剣でね、斬った相手を意のままに操る事が出来るんだって』
『それは誰が操るの?所持者?それとも』
『もちろん魔剣本体さ。その刀は他人を操ろうという明確な意思を持ってる。でもいかな魔剣とは言え自分自身で人を斬る事は出来ない。自分を振るってくれる奴が必要だ』
『それじゃ…』
さやかは執拗に刀を振るう紅蓮丸を見た。
『そこに現れたのがその紅蓮丸だよ。他人を従えたい欲にまみれ、くのいちを嬲りたい欲にまみれ、なおかつ魔剣を制御出来るほど強い心を持ち合わせない、そんなうってつけの男が魔剣の封印を解いてしまった』
『なるほどね』
にわかに信じがたい話ではあるのだが、炎丸との戦いでタオの鏡の不思議な力を目の当たりにしているさやかは、邪衆院の言葉を素直に受け入れていた。
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