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2014-01-12(Sun)

小説・さやか見参!(213)

山吹流の後継者・さやかと、炎一族の面倒くさい長兄・紅蓮丸は、かつて音駒が一角衆に襲われた場所で対峙していた。

いや、対峙と言うよりは、ただ向かい合って立っていた。

さやかの方には全く緊張感がなかったからだ。

野良着の少女は、感情が昂ぶる度にオカマ言葉になる奇妙なおじさんと関わりたくなかったのである。

『えっと…それで、私に何の用?私忙しいんだけど…』

『我が弟・炎丸は現在行方知れず…。あなたなら何か知ってるんじゃないかと思いましてね。それでここで待っていた、というワケです』

さやかは食い気味に反論する。

『すらすらと嘘ついてんじゃないわよ。私が炎丸に会った事があるなんてついさっきまで知らなかったくせに』

『うぐっ』

紅蓮丸の言葉が詰まる。

何故こんなどうでもいい嘘をついてしまうのか、それは紅蓮丸本人にも分からない。

性格、なのだろう。

『お黙りなさい!』

紅蓮丸が声を荒げた。

逆ギレして誤魔化そうとしたのである。

『我が弟・炎丸が現在どうしているのか、あなたはそれを答えれば良いのです!』

さやかは虚ろな目で大きく息を吸い、しばらく止めてから静かに吐き出した。

彼女の頭の中にはただ、

め・ん・ど・く・さ・い

の六文字が浮かんでいた。

『あんたの弟なら今頃牢屋の中よ。たくさんの人を傷つけて苦しめたから成敗してやったわ』

『な、なんですって!?』

『あ、せっかく見つけたお宝も没収されちゃってるわよ。残念だったわね~』

さやかは意地悪な笑みを浮かべた。

真冬の寒空の下、服を剥いで縛りあげて水たまりに転がして、更に石をぶつけて前歯をへし折ってやった時の事を思い出したのだ。

金丸藩で役人に引っ立てられている時の姿は本当にみすぼらしいものだった。

『すると弟は、タオの鏡を見つけていたのですね。炎一族再興に必要なお宝の一つを…』

紅蓮丸はうつむいて噛み締めるように呟いた。

『あなたはそれを奪い、弟を成敗したと…そういう事でございますね』

『そうよ』

紅蓮丸が顔を上げて、きっと目を見開いた。

『山吹さやか!わたくしは弟のかたきを討つ為にあなたを探していたのです!』

巨大な剣が振り上げられる。

『だーかーらー、私が成敗したってたった今知ったんでしょ!?テキトーな事ばっか言ってんじゃないわよ。なんなの!?このオカマのおじさんは』

さやかは呆れを通り越して切ない表情をしていた。

『うるさいわね!弟のかたき!いくわよ!!』

全然気乗りしないまま戦いが始まってしまった。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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