2013-12-15(Sun)
小説・さやか見参!(209)
いきなり核心を突かれた封は一瞬戸惑ったがすぐに冷静を取り戻し
『そうよ。話が早いわ』
と言うが早いか、右脚を高く跳ね上げた。
上半身を微動だにさせず内側から外側に大きく弧を描いた爪先は、敵の喉を食い破れるはずだった。
相手が幻龍イバラキでなければ、だが。
イバラキは何事もなかったように封の射程から離れていた。
しかも、蹴りが届くか届かないかの微妙な位置に、である。
だが封とてこれしきの攻撃が通じるとも思っていない。
すぐに軸足で跳躍し、二撃目を放った。
右の中足がイバラキの腹部に抉り込まれる。
確かに命中したはずの前蹴りは、まるで腹部に力を吸収されたかのように力を失った。
威力を失った底足がイバラキの身体にぴたりと貼り付き封は体勢を崩した。
封は右脚を素早く引き軸足と入れ替え、身体をひねって左の足刀を繰り出す。
イバラキはわずかに身を引いて攻撃を捌いた。
それは封の思惑通りだった。
捌かれた囮の足刀を着地させるとすぐに踏み切り、封は空中に舞い上がって回転しながら鏢を投げた。
回転の中、イバラキに見えぬ位置、しかも近距離から投じたのであるから避ける事は困難なはずである。
もし命中しなくてもかすめさえしてくれたらいい。
その為に刃先に毒を塗ってあるのだ。
だがイバラキは、その鏢を目の前で受け止めた。
しかも、刃ではなく柄の部分を、見事に。
宙から降り立ちとどめに転じようとしていた封はそれを見て驚き動きを止めた。
何を仕掛けても無駄かもしれぬ、と思ってしまったのである。
『ほう、毒か』
イバラキは微かに薄茶色の染みが残った刃先を見てそう呟いた。
そして着物の襟をはだけさせると、毒が塗られた刃でゆっくりと胸元を切り裂いた。
封は驚きを隠せずイバラキを見た。
イバラキは、ただ不敵に笑っていた。
『効かぬよ』
イバラキは鏢を封の足元に投げてよこすと、胸から血を流しながら襟を整えた。
やはり何を仕掛けても無駄なのか。
封は戦闘意欲を失った。
彼女の心は完全に折れてしまったのである。
『そうよ。話が早いわ』
と言うが早いか、右脚を高く跳ね上げた。
上半身を微動だにさせず内側から外側に大きく弧を描いた爪先は、敵の喉を食い破れるはずだった。
相手が幻龍イバラキでなければ、だが。
イバラキは何事もなかったように封の射程から離れていた。
しかも、蹴りが届くか届かないかの微妙な位置に、である。
だが封とてこれしきの攻撃が通じるとも思っていない。
すぐに軸足で跳躍し、二撃目を放った。
右の中足がイバラキの腹部に抉り込まれる。
確かに命中したはずの前蹴りは、まるで腹部に力を吸収されたかのように力を失った。
威力を失った底足がイバラキの身体にぴたりと貼り付き封は体勢を崩した。
封は右脚を素早く引き軸足と入れ替え、身体をひねって左の足刀を繰り出す。
イバラキはわずかに身を引いて攻撃を捌いた。
それは封の思惑通りだった。
捌かれた囮の足刀を着地させるとすぐに踏み切り、封は空中に舞い上がって回転しながら鏢を投げた。
回転の中、イバラキに見えぬ位置、しかも近距離から投じたのであるから避ける事は困難なはずである。
もし命中しなくてもかすめさえしてくれたらいい。
その為に刃先に毒を塗ってあるのだ。
だがイバラキは、その鏢を目の前で受け止めた。
しかも、刃ではなく柄の部分を、見事に。
宙から降り立ちとどめに転じようとしていた封はそれを見て驚き動きを止めた。
何を仕掛けても無駄かもしれぬ、と思ってしまったのである。
『ほう、毒か』
イバラキは微かに薄茶色の染みが残った刃先を見てそう呟いた。
そして着物の襟をはだけさせると、毒が塗られた刃でゆっくりと胸元を切り裂いた。
封は驚きを隠せずイバラキを見た。
イバラキは、ただ不敵に笑っていた。
『効かぬよ』
イバラキは鏢を封の足元に投げてよこすと、胸から血を流しながら襟を整えた。
やはり何を仕掛けても無駄なのか。
封は戦闘意欲を失った。
彼女の心は完全に折れてしまったのである。
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