2013-12-06(Fri)
小説・さやか見参!(203)
山吹を含む十二組は、一般に『がりゅう山』と呼ばれている山を中心に里を築いている。
ここは人里から遠く離れ、麓は獣や毒蛇の棲むような森に囲まれている為、人が立ち入る事はなかなか無い。
仮に登ったとしてもそこには獣道すら無く、それでも足場の悪い中を進むと岩壁に立ち塞がれたり急な崖に直面したり、とにかく先に進む事が難しい。
忍び以外には登れぬ山、それが『がりゅう山』なのである。
その中腹にあるのが音駒が運び込まれた虎組の屋敷だ。
ここも木々に囲まれているが、そこに陰の空気は全く無く、ほど良い光が差し、ほど良い風が吹き、居心地は決して悪くない。
音駒を匿い療養させるには適した場所だと言えた。
ここは十二組の里の中でも二番目に恵まれた立地である。
本来ならここには蛇組の屋敷が建つはずであった。
蛇組の前頭領であり、幻龍イバラキの師であるミズチが住むはずだったのだ。
ミズチは各流派の忍び達から尊敬を集めていた。
数十年前、十二組の会合でそれぞれの屋敷の場所を取り決めた際、
龍組(山吹)が山頂という事は決まっている為、次いで条件の良いこの場所がどの組に与えられるかが議題となった。
そこで、蛇組を除く全ての組の頭領達が満場一致でミズチを選んだのである。
技量、人格、功績、いずれをとっても申し分なし。
誰もがそう言った。
だが当のミズチがそれを辞退したのである。
『我ら蛇の忍びは地にもぐり、泥を喰らうが役目。そのような陽の当たる場所におっては皆の腕がなまりますゆえ。そこには龍組の懐刀たる虎を住まわすべきかと』
そう言って頭を下げた。
以来ここは虎組の屋敷となっている。
その屋敷の庭で、現在虎組を取り仕切る雷牙は空を仰いでいた。
木々の間から澄んだ青空が見える。
いい春の日和だ。
きっと山頂にある山吹の屋敷は暖かな光を受け、花のつぼみも開きかけているだろう。
そんな中、武双に呼ばれて山吹に戻った心太郎は今頃どんな話をしているのやら…
雷牙は考えかけたが、どうせ考えても分からぬと諦め、草の上にごろりと寝転んだ。
ここは人里から遠く離れ、麓は獣や毒蛇の棲むような森に囲まれている為、人が立ち入る事はなかなか無い。
仮に登ったとしてもそこには獣道すら無く、それでも足場の悪い中を進むと岩壁に立ち塞がれたり急な崖に直面したり、とにかく先に進む事が難しい。
忍び以外には登れぬ山、それが『がりゅう山』なのである。
その中腹にあるのが音駒が運び込まれた虎組の屋敷だ。
ここも木々に囲まれているが、そこに陰の空気は全く無く、ほど良い光が差し、ほど良い風が吹き、居心地は決して悪くない。
音駒を匿い療養させるには適した場所だと言えた。
ここは十二組の里の中でも二番目に恵まれた立地である。
本来ならここには蛇組の屋敷が建つはずであった。
蛇組の前頭領であり、幻龍イバラキの師であるミズチが住むはずだったのだ。
ミズチは各流派の忍び達から尊敬を集めていた。
数十年前、十二組の会合でそれぞれの屋敷の場所を取り決めた際、
龍組(山吹)が山頂という事は決まっている為、次いで条件の良いこの場所がどの組に与えられるかが議題となった。
そこで、蛇組を除く全ての組の頭領達が満場一致でミズチを選んだのである。
技量、人格、功績、いずれをとっても申し分なし。
誰もがそう言った。
だが当のミズチがそれを辞退したのである。
『我ら蛇の忍びは地にもぐり、泥を喰らうが役目。そのような陽の当たる場所におっては皆の腕がなまりますゆえ。そこには龍組の懐刀たる虎を住まわすべきかと』
そう言って頭を下げた。
以来ここは虎組の屋敷となっている。
その屋敷の庭で、現在虎組を取り仕切る雷牙は空を仰いでいた。
木々の間から澄んだ青空が見える。
いい春の日和だ。
きっと山頂にある山吹の屋敷は暖かな光を受け、花のつぼみも開きかけているだろう。
そんな中、武双に呼ばれて山吹に戻った心太郎は今頃どんな話をしているのやら…
雷牙は考えかけたが、どうせ考えても分からぬと諦め、草の上にごろりと寝転んだ。
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