2013-10-16(Wed)
小説・さやか見参!(197)
心太郎と血飛沫鬼の刀が火花を散らした。
長刀と短刀では心太郎の分が悪かったが、それでも血飛沫鬼の攻撃を見事にはじき返している。
ときおり血飛沫鬼の白い羽織の陰から血塗呂の鈎爪が飛び出してきたが、心太郎はそれも全てかわした。
決して弱くはない。
それどころか、強いのだ。
一角衆の兄弟もまだ本気を出していないので力量の差は分からないが、さやかが度々罵るように「三流」であるとは到底思えない。
『ほぉ?弱いなんて言ってるわりにはやるじゃねぇか』
『おいらは音駒さんを助けなくちゃならないっシュからね。弱くても負けるわけにはいかないっシュよ』
三人が離れた。
心太郎は音駒を守るように立ち、それを左右から挟むように血飛沫鬼・血塗呂が立っている。
心太郎はちらりと音駒を気にした。
一刻も早く治療しなければまずい状況だ。
『ま、なかなかやるけど、まだまだだねぇ』
血飛沫鬼は突然そう言うと、へらへらと笑いながら刀を担いだ。
『なに?』
心太郎が睨むような視線を送る。
『今ここでそのにいさんを助ける為に必要なのは、俺らに負けない事じゃなくて、俺らに勝つ事だろ』
心太郎はハッとする。
確かにその通りだ。
『ここで負けないなんて甘っちょろい事言っちゃうから、いつまで経っても三流扱いされんだよ』
血飛沫鬼の言葉が終わらぬ内に血塗呂が腹を抱えて笑い出した。
そして笑いながら鈎爪を構え、右からじわじわと距離を詰めて来る。
左からは血飛沫鬼が迫って来る。
おそらくこれは兄弟の必殺の布陣なのだろう。
つまりいよいよ本気を出し、心太郎にとどめを刺すつもりなのだ。
心太郎はふぅぅーと息を細く吐いた。
『確かにね、おいらには覚悟が足りなかったかもしれないっシュ』
心太郎の背後で朝日が昇り始めた。
『やっぱりどこかで、殺さずに済むならそうしたいって甘えがあったっシュ』
足元から伸びた自分の影が目の前に伸びていく。
『でも、さやか殿の為に、そんな事言ってられないっシュね』
血飛沫鬼と血塗呂が何故か一瞬たじろいだが、すでに心太郎の意識は二人には向いていなかった。
まるで独り言のように
『おいら、覚悟を決めたっシュ』
そう言いながら、心太郎は意識が遠くなっていくのを感じた。
薄れていく意識の中で心太郎は自分の影を見た。
朝日で伸びたその影は大きく、まるで自分のものではないような気がした。
(あ、この影は)
どこかで見たような気がしたと思ったら
(高陵山でおいらを助けてくれた黒い忍者っシュ)
そこで心太郎の意識は途絶えた。
長刀と短刀では心太郎の分が悪かったが、それでも血飛沫鬼の攻撃を見事にはじき返している。
ときおり血飛沫鬼の白い羽織の陰から血塗呂の鈎爪が飛び出してきたが、心太郎はそれも全てかわした。
決して弱くはない。
それどころか、強いのだ。
一角衆の兄弟もまだ本気を出していないので力量の差は分からないが、さやかが度々罵るように「三流」であるとは到底思えない。
『ほぉ?弱いなんて言ってるわりにはやるじゃねぇか』
『おいらは音駒さんを助けなくちゃならないっシュからね。弱くても負けるわけにはいかないっシュよ』
三人が離れた。
心太郎は音駒を守るように立ち、それを左右から挟むように血飛沫鬼・血塗呂が立っている。
心太郎はちらりと音駒を気にした。
一刻も早く治療しなければまずい状況だ。
『ま、なかなかやるけど、まだまだだねぇ』
血飛沫鬼は突然そう言うと、へらへらと笑いながら刀を担いだ。
『なに?』
心太郎が睨むような視線を送る。
『今ここでそのにいさんを助ける為に必要なのは、俺らに負けない事じゃなくて、俺らに勝つ事だろ』
心太郎はハッとする。
確かにその通りだ。
『ここで負けないなんて甘っちょろい事言っちゃうから、いつまで経っても三流扱いされんだよ』
血飛沫鬼の言葉が終わらぬ内に血塗呂が腹を抱えて笑い出した。
そして笑いながら鈎爪を構え、右からじわじわと距離を詰めて来る。
左からは血飛沫鬼が迫って来る。
おそらくこれは兄弟の必殺の布陣なのだろう。
つまりいよいよ本気を出し、心太郎にとどめを刺すつもりなのだ。
心太郎はふぅぅーと息を細く吐いた。
『確かにね、おいらには覚悟が足りなかったかもしれないっシュ』
心太郎の背後で朝日が昇り始めた。
『やっぱりどこかで、殺さずに済むならそうしたいって甘えがあったっシュ』
足元から伸びた自分の影が目の前に伸びていく。
『でも、さやか殿の為に、そんな事言ってられないっシュね』
血飛沫鬼と血塗呂が何故か一瞬たじろいだが、すでに心太郎の意識は二人には向いていなかった。
まるで独り言のように
『おいら、覚悟を決めたっシュ』
そう言いながら、心太郎は意識が遠くなっていくのを感じた。
薄れていく意識の中で心太郎は自分の影を見た。
朝日で伸びたその影は大きく、まるで自分のものではないような気がした。
(あ、この影は)
どこかで見たような気がしたと思ったら
(高陵山でおいらを助けてくれた黒い忍者っシュ)
そこで心太郎の意識は途絶えた。
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