2013-09-14(Sat)

小説・さやか見参!(193)

音駒は、誰も通りかからぬ木立の陰でぐったりとしていた。

もう立ち上がる力もない。

月明かりではよく見えないが、身体中の刀傷から流れた血が固まり、衣類を肌に貼り付けているようだ。

夕暮れ、いつものように病人の家を回った帰りに音駒は二人組の野盗に襲われた。

いや、あれは盗賊だったのか?

音駒は大した金子も持ってはいない。

しかもそれはまだ懐に入っている。

むしろ高価なのは薬剤の類だが、それも行李ごと転がっている。

二人組は自分をいたぶるのが目的だったのだろうか。

そんな事をしても得はあるまいに。

しかし、人を痛めつける、人を斬るのが楽しいという倒錯した者もいるのかもしれない。

なんにしても、


途切れ途切れに息を吐き出す。

このまま動けなければここで朽ち果ててしまう。

それは、嫌だ。

まだ死にたくない、死ぬわけにはいかない。

自分はまだ、先に逝った許嫁の分まで生きていない。

病気で苦しんでいる人達をもっと助けたい。

だけど…


意識が朦朧としてくる。

月明かりに照らされて音駒ががちがちと震えた。

昼間は少し暖かくなったが、まだ夜は寒い。

身体の震えが気温のせいか失血のせいかも今の音駒には分からなかった。

すでに考える力もなくなっている。

なので一緒に旅をしていた鳩がいなくなっている事にも気付きはしなかった。

何かあった時の為にと心太郎から渡された鳩。

それは今、音駒の危機を伝える為に夜空を羽ばたいていた。

心太郎の許へ。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

くのいち・山吹さやかが活躍する『忍者ライブショー さやか見参!』、新シリーズ『ギルティー!!』も展開中!!

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