fc2ブログ
2013-04-04(Thu)

小説・さやか見参!(185)

ぶん!

巨大な魔剣が唸りをあげてイバラキに襲いかかった。

イバラキがすいと身を躱す。

だが魔剣の勢いが止まる事はなく、四方八方から縦横無尽に攻撃してくる。

これにはさしものイバラキも太刀打ち出来ぬかと思われた。

だが…

イバラキは全ての攻撃を軽々と捌いていた。

手にしているのは山吹たけるから奪った山吹紋の忍者刀である。

魔剣の巨大さに比べればまるで針のごとき細さだ。

まともにぶつかれば重量に負け、一撃でへし折られる事だろう。

しかしイバラキのふるう刀はその不利な状況をものともせず魔剣の動きを制圧していた。

イバラキの技量をもってしても重量の差は埋められぬ。

真っ当にぶつかれば間違いなく力負けする。

ならばどうするか。

ぶつからなければ良いのだ。

敵の力を利用する。

攻撃の勢いを殺す事なく、むしろわずかに力を加える事で加速させ方向をずらすのだ。

『くぅっ!』

紅蓮丸が苛立ちの声をあげた。

自身の全力の攻撃をイバラキは最小限の力で躱している。

このままでは一方的に疲弊するのは目に見えている。

『人を操る魔剣も当たらなければ意味はないな』

イバラキがにやりと笑った。

その様子を見ながら楼上の邪衆院天空は

『あの男、魔剣に操られてるじゃないか』

と呟いた。

『あぁ、みたいだな』

断が答える。

魔剣が生きているようだとは思ったが、どうやら本当に意思を持っているらしい。

あの紅い男はその意思に操られている傀儡にすぎない。

『皮肉なもんだな。笑えるぜ』

『よほど強靭な心を持つ者でないと、あの剣は扱えぬようだ』

『それが魔剣の魔剣たるゆえんかもしれねぇな。あの紅い男じゃ力不足って事か』

そう言って断は立ち上がった。

『行くのか?』

『あぁ、今日は次から次に客が来やがる。次も来てるみたいだしよ』

断が城の外に目を向けた。

『そうだね』

邪衆院が頷く。

『イバラキを殺るのはまた今度だ。あばよ』

断の姿が消えた。

邪衆院はふっと笑ってから櫓の下を見た。

紅い男が翻弄されるように魔剣を振り回して、

いや、
魔剣に振り回されている。

『どいつもこいつも面白いや』

邪衆院はそう呟いて櫓から飛び降り、イバラキの近くまで行くと

『あの娘が来ましたね。どうします?』

と訊いた。

イバラキは不敵に、そして嬉しそうに笑うと紅蓮丸の顔面を蹴りつけた。

『んぎゃっ!』

紅蓮丸は魔剣を落として吹っ飛ぶ。

イバラキは間合いを詰め、もう一発顔面に蹴りを入れた。

紅い装束に身を包んだ紅蓮丸が、真っ赤な鼻血を吹き出して勢いよく倒れる。

『もったいつけて出てきた割には情けない奴だなぁ』

邪衆院にそう言われた紅蓮丸は気を失い、ぴくぴくと痙攣している。

『さて』

イバラキが刀を納めて振り返る。

『久しぶりだな』

そこには、

憤怒の表情の山吹さやかが立っていた。
スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

よっ!!

まってました!

>da1

登場人物が増えたら主人公の出番が少なくなっちゃうね!

個人的には

じゃしゅういん天空でてくると嬉しいですがー(笑´∀`)

>da1

邪衆院のすごい所は、ストーリーの進行にほとんど関わっていない所だ!!

確かに

小説にのみ登場するレアな登場人物ですね~。
とても~いいです~

>da1

機会があればショーにも出したかったねぇ。
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード