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2013-03-27(Wed)

小説・さやか見参!(183)

巨大な火柱が上がった。

それは物見櫓の上にいた断を巻き込まんばかりの勢いを持っていたが、断は動じず、

『なんだ?こいつ』

と呟いた。

炎の中には、巨大な剣を担いだ紅い人影が立っていたのだ。

紅い装束。紅い甲冑。紅い炎を象った鉢金の下から覗く眼は、まるで意思を持たぬかのように濁っていた。

『人生に必要なのは勝利…勝利に必要なのは力…力とは、他人を操り従える事…』

紅い影は一見華奢に見えるが、その声は低く重かった。

そこへ城から飛び出してきた家臣達が次々に斬りかかる。

だが紅い男は巨大な剣を軽々と振り回し、あっと言う間に数十人の侍達を斬り伏せる。

『なんだぁ?あのでっけぇヤツは』

断がそう言って身を乗り出すと、不意に隣から声が聞こえた。

『あれはな、この藩に伝わる魔剣だ』

『えっ!?』

聞き覚えのある声に振り向くと、いつの間にか幻龍イバラキが立っていた。

『うわぁ!』

驚くのも無理はない。

断にとってイバラキは、己に命の刻限を与えた張本人なのだ。

『びびらすなよ!』

だが今は戦う気もない。

敵わぬ事が分かっているからだ。

負ける戦いを敢えて挑むなど愚かだと断は思っている。

それに、こちらから戦いを挑まなければイバラキからは手を出して来ぬ。

何故かそんな確信があった。

そしてその確信を裏付けるように、イバラキは何事もなく話しかけてくる。

『断、見ておれ。あの魔剣、なかなか面白いらしいぞ』

『あん?』

断は巨大な魔剣と、斬られて倒れた侍達を見た。

『おっ…!?』

断が異変に気付いた。

倒れた侍達の傷口がみるみる塞がっていったのだ。

そして、一人また一人とゆっくり立ち上がる。

『ど、どういうこった!?』

『もう少し見ておれ』

イバラキの言葉が終わる頃、全ての侍が立ち上がっていた。

紅い男はそれをぐるりと見回し、

『あなた達は邪魔です。大人しく城に引っ込んでいなさい』

と叫ぶ。

はたして侍達は一斉に、

『ははっ』

と頭を垂れ、足早に城内へ戻って行った。

『あの魔剣はな、斬った相手を意のままに操る事が出来るらしい』

『傷も塞がっちまうのか』

『らしいな。だが流石に首を落とされれば助からぬと伝えられている』

『へぇ、何でも知ってんだな』

断が感心したような呆れたような返事をしながら櫓の下を見ると、魔剣を担いだ男がこちらを、いや、イバラキを見上げていた。

『どうやらあんたに用があるみたいだぜ』

『ふふん』

イバラキが鼻で笑う。

『あなたが幻龍イバラキですね。わたくしは炎一族長兄、地獄の炎の申し子、紅蓮丸!さっそくですがわたくしと立ち合っていただきましょう』

そう名乗ると紅蓮丸は、魔剣を構えた。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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