2013-03-11(Mon)
小説・さやか見参!(182)
天守の上で三人の鬼が対峙している。
風が血飛沫鬼の白い羽織をはたはたとはためかせた。
その表情は、余裕なのか、挑戦的なのか、敵を見くびっているのか分からないが、ただ口角だけがぐにゃりとつり上がっていた。
その足元に座り込んだ赤い羽織の血塗呂は、まるで戦いになど興味がないかのように、風になびく血飛沫鬼の羽織の裾をもてあそんでいる。
不気味な少年二人を前に、邪衆院天空は半分困ったような、半分笑ったような、そんな表情だ。
『困ったな』
邪衆院が呟いた。
『どうした?』
血飛沫鬼が尋ねる。
『おまえ達は厄介そうだ』
『強いからな』
『あぁ、おまえ達は強い。それはこうして向かい合うだけで充分分かるよ。でも強いのはかまわない。俺もわくわくするから。ただ…』
『ただ?』
白い羽織の血飛沫鬼の二度目の問いに、邪衆院はしばし黙ってから、
『おまえ達には心が無い。心を持たない敵と戦うのは何かと厄介だから楽しくないんだよ』
『そうかい。俺達は楽しいぜ』
血飛沫鬼の言葉が終わった瞬間、赤い塊が邪衆院めがけて降ってきた。
先程まで血飛沫鬼の傍らでじゃれていた血塗呂だ。
いつ跳んだのか、邪衆院にも見えなかった。
邪衆院が飛び退いて避ける。
弾丸のような勢いで落ちてきた血塗呂はふわりと着地すると、腕に着けた鉤爪で脚を払ってきた。
邪衆院は脚を振り上げ宙返りでそれをかわす。
が、宙に浮いた瞬間に血飛沫鬼が抜刀し、邪衆院の身体めがけて鋭く突いてきた。
邪衆院は咄嗟に瓦に手を着くと身体をねじって方向転換し、腕の力で血飛沫鬼から遠ざかるように跳んだ。
血飛沫鬼と血塗呂が間髪を入れず迫ってくる。
邪衆院は二人から距離を取ったわずかな瞬間に両手で短刀を抜いた。
執拗に脚を狙う血塗呂の攻撃を跳んでよけながら血飛沫鬼の刀をはじき、着地と同時に鉤爪を蹴る。
態勢を立て直した血飛沫鬼の突きを巻き込むように受けながら距離を詰め肘を叩き込む。
今度は血飛沫鬼が跳んで距離を取った。
血塗呂がその隣につく。
邪衆院も距離を置いて構えた。
『いってぇ』
血飛沫鬼が肘を入れられた胸を押さえる。
それを見て血塗呂が指を差して笑った。
『てめ、笑ってんじゃねぇよ』
邪衆院は水月を狙って肘を打ったのだが、血飛沫鬼は瞬間的に身体を沈め、厚い胸筋で受けたのだ。
『ほんと、厄介な奴らだよ』
邪衆院が呟いた。
だが、この戦いは唐突に終わる事となる。
血飛沫が突然、
『何か変な奴がこっち来てるな』
と言い出し刀を納めたのだ。
『めんどくさいから、じゃっ』
そう言って紅白の兄弟が姿を消した瞬間、城の庭で、どう、と轟音が響いた。
風が血飛沫鬼の白い羽織をはたはたとはためかせた。
その表情は、余裕なのか、挑戦的なのか、敵を見くびっているのか分からないが、ただ口角だけがぐにゃりとつり上がっていた。
その足元に座り込んだ赤い羽織の血塗呂は、まるで戦いになど興味がないかのように、風になびく血飛沫鬼の羽織の裾をもてあそんでいる。
不気味な少年二人を前に、邪衆院天空は半分困ったような、半分笑ったような、そんな表情だ。
『困ったな』
邪衆院が呟いた。
『どうした?』
血飛沫鬼が尋ねる。
『おまえ達は厄介そうだ』
『強いからな』
『あぁ、おまえ達は強い。それはこうして向かい合うだけで充分分かるよ。でも強いのはかまわない。俺もわくわくするから。ただ…』
『ただ?』
白い羽織の血飛沫鬼の二度目の問いに、邪衆院はしばし黙ってから、
『おまえ達には心が無い。心を持たない敵と戦うのは何かと厄介だから楽しくないんだよ』
『そうかい。俺達は楽しいぜ』
血飛沫鬼の言葉が終わった瞬間、赤い塊が邪衆院めがけて降ってきた。
先程まで血飛沫鬼の傍らでじゃれていた血塗呂だ。
いつ跳んだのか、邪衆院にも見えなかった。
邪衆院が飛び退いて避ける。
弾丸のような勢いで落ちてきた血塗呂はふわりと着地すると、腕に着けた鉤爪で脚を払ってきた。
邪衆院は脚を振り上げ宙返りでそれをかわす。
が、宙に浮いた瞬間に血飛沫鬼が抜刀し、邪衆院の身体めがけて鋭く突いてきた。
邪衆院は咄嗟に瓦に手を着くと身体をねじって方向転換し、腕の力で血飛沫鬼から遠ざかるように跳んだ。
血飛沫鬼と血塗呂が間髪を入れず迫ってくる。
邪衆院は二人から距離を取ったわずかな瞬間に両手で短刀を抜いた。
執拗に脚を狙う血塗呂の攻撃を跳んでよけながら血飛沫鬼の刀をはじき、着地と同時に鉤爪を蹴る。
態勢を立て直した血飛沫鬼の突きを巻き込むように受けながら距離を詰め肘を叩き込む。
今度は血飛沫鬼が跳んで距離を取った。
血塗呂がその隣につく。
邪衆院も距離を置いて構えた。
『いってぇ』
血飛沫鬼が肘を入れられた胸を押さえる。
それを見て血塗呂が指を差して笑った。
『てめ、笑ってんじゃねぇよ』
邪衆院は水月を狙って肘を打ったのだが、血飛沫鬼は瞬間的に身体を沈め、厚い胸筋で受けたのだ。
『ほんと、厄介な奴らだよ』
邪衆院が呟いた。
だが、この戦いは唐突に終わる事となる。
血飛沫が突然、
『何か変な奴がこっち来てるな』
と言い出し刀を納めたのだ。
『めんどくさいから、じゃっ』
そう言って紅白の兄弟が姿を消した瞬間、城の庭で、どう、と轟音が響いた。
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