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2012-08-21(Tue)

小説・さやか見参!(167)

さやかと心太郎は完全に日が暮れるのを待って合流し、城から抜け出した。

目立たぬ場所にある小窓を開け、そこからするりと外に出る。

そこは城の裏手に面していて、窓の下には石垣があるばかりだ。

さやかと心太郎は石垣を垂直に駆け降り、幅のない堀を飛び越え、町の暗がりを走り抜けた。

潜入時に下調べをしているおかげで、二人はすでに安全な脱出経路の見当を付けていたのだ。

もちろん謎の監視役に気付かれる危険性はあったが、気付かれてもこのまま走り去ればいい。

逃げ切る自信はある。

逃げ切らなければならない。

鳥飼の城を取り巻く謎の一端にようやく触れたのだ。

これから時間をかけて謎を解かねばならない。

いや、
出来るだけ早急に。

時が経てば経つほど、濡れ衣を着させられ処刑される者も増えるのだ。

さやかは先程城内で聞いた話を思い出していた。

本日は二名、そんな話をしていた。

それは人を欺きし咎によって処刑される者の数だ。

実際に人を騙したのかもしれない。

罠に嵌められた善良な者かもしれない。

その真偽はさやかには分からなかったが、

(何とか助けてあげたかった…)

そう悔いていた。

いかな一流の忍びとはいえ、事の真相に至るには手間と暇を要する。

今日、藩主を探ってみて、藩主が何者かに操られている可能性を知った。

そして怪しき典医らしき男の存在を知った。

次はその典医を調べなければならない。

目的は何か、黒幕がいるのか。

捜査が中途半端で終われば根本的な解決は難しくなる。

さやかは心中でそう呟いて、焦りを振り切って城から走り去ったのだ。

とりあえず、金丸侯に報告しよう。

そして、叔父・不問を交えて今後の作戦を立てよう。

二つの小さな影は、疾風のように金丸の城に向かった。
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プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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