2012-07-04(Wed)
小説・さやか見参!(164)
さやかと心太郎は呆気ないほど容易く鳥飼藩主の寝所に辿り着いた。
小さくとも一国の城であるゆえ、深夜明け方と言えども番をしている侍はいるし見回もいる。
女中達が目を覚ます時刻でもある。
だが、城の外にいた特殊な監視役の気配は一切感じられなかった。
たかだか女中や侍ごときをやり過ごす等、忍者にとって造作もない事。
さやか達は堂々と城内を歩いて藩主の寝所に潜入したのだ。
(よく寝てるっシュね)
心太郎が指を使って伝える。
確かに鳥飼藩主は穏やかな顔をして寝息を立てていた。
さやかは周囲をぐるりと見回す。
(特に何もなさそうね)
心太郎がうなずく。
怪しげな所はない。
城の外の警戒ぶりが嘘のようだ。
改めて藩主の寝顔を見る。
白くまばらな髪と刻まれた深い皺が、おそらく実年齢よりも上に見せている。
金丸公が慕う父違いの兄、
現在の金丸の礎を築いた切れ者、
突然変貌を遂げた男、
虚言を許さぬ触れを出した君主、
さやかは頭の中をまとめようとしたが、金丸公の悲しげな顔や、ゆりの悲痛な嗚咽が脳裏に浮かび、深く考えを巡らせる事が出来なかった。
とにかく、一日かけて藩主と城内の様子を探ろう。
全てはそこからだ。
さやかが顔を上げると、小さな明かり取りが青く染まっていた。
夜が明ける。
どこかで鳥が鳴いた。
その瞬間、二人の姿は消えていた。
藩主の動向を探る為、さやかは天井裏に、心太郎は床下に身を隠したのだ。
小さくとも一国の城であるゆえ、深夜明け方と言えども番をしている侍はいるし見回もいる。
女中達が目を覚ます時刻でもある。
だが、城の外にいた特殊な監視役の気配は一切感じられなかった。
たかだか女中や侍ごときをやり過ごす等、忍者にとって造作もない事。
さやか達は堂々と城内を歩いて藩主の寝所に潜入したのだ。
(よく寝てるっシュね)
心太郎が指を使って伝える。
確かに鳥飼藩主は穏やかな顔をして寝息を立てていた。
さやかは周囲をぐるりと見回す。
(特に何もなさそうね)
心太郎がうなずく。
怪しげな所はない。
城の外の警戒ぶりが嘘のようだ。
改めて藩主の寝顔を見る。
白くまばらな髪と刻まれた深い皺が、おそらく実年齢よりも上に見せている。
金丸公が慕う父違いの兄、
現在の金丸の礎を築いた切れ者、
突然変貌を遂げた男、
虚言を許さぬ触れを出した君主、
さやかは頭の中をまとめようとしたが、金丸公の悲しげな顔や、ゆりの悲痛な嗚咽が脳裏に浮かび、深く考えを巡らせる事が出来なかった。
とにかく、一日かけて藩主と城内の様子を探ろう。
全てはそこからだ。
さやかが顔を上げると、小さな明かり取りが青く染まっていた。
夜が明ける。
どこかで鳥が鳴いた。
その瞬間、二人の姿は消えていた。
藩主の動向を探る為、さやかは天井裏に、心太郎は床下に身を隠したのだ。
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