2012-02-29(Wed)
小説・さやか見参!(145)
さやかと心太郎は、走っている間に何度か爆発の振動を感じた。
山全体が揺れているように思えるが、さやかは迷う事なく山を駆け下りて行く。
『さやか殿!どこに行くっシュ!?』
『そんなの、爆発の場所に決まってるでしょ!』
『どこか分かってるっシュか!?』
『分かんないの!?麓の辺り!ゆっくり東の方に移動してる!』
『さすがっシュね』
僅かな揺れから場所を特定したのか微かな火薬の匂いで分かるのか。
これがさやかの忍びとしての顔だ。
麓に下りると数ヶ所から煙が立ち上ぼっていた。
『ここが一番最初に爆破された所ね』
二人は走りながら煙の奥を覗き込む。
固い岩盤が粉砕されて穴が穿たれている。
三尺程えぐられているだろうか。
『何の為の爆破っシュかね』
東に走ると次の穴が煙を吹き出していた。
粉砕された岩の破片が辺り一面に転がっているが、さやかと心太郎はつまずく事もなくすいすいと走り抜ける。
水面をも走る忍びならではの技だ。
三つ目の爆破跡を過ぎた所に一際大きく、奥の見えない程深い穴があった。
坑道だ。
今の爆破で作られたのではなく、元々この鉱山で使用されていたものだろう。
坑道を過ぎるとまた爆破跡が二つ。
そして、
ずううん、とも、どおおん、ともつかない爆音が響いた。
近い。
爆破の主はそこにいる。
『坑道が崩れちゃうじゃない!こんな事するのは一体誰よ!』
さやかが走る。
『例の宝探しっシュかね!?』
心太郎も走る。
『それはないでしょ!?そーゆー奴は、もっと謎をちりばめて、最後の最後にようやく姿を現すもんよ。こんな所で派手に正体を明かすような単純な奴じゃないわよ!』
『確かに…』
最後の煙が見えた。
『もし謎の宝探しがそんな単純な奴だったら、がっかり…』
さやかが立ち止まる。
煙の向こうに人影が見えたからだ。
『がっかり、しちゃうわ』
現れたのは、全身赤で覆われた男だった。
赤い鉢金、赤い頭巾、赤い着物に赤い甲冑。
『ん?なんだぁ?小娘!』
粗野な口調である。
『こいつが、炎を操る、謎の宝探し…かしら…』
さやかが呟く。
明らかにがっかりした様子だ。
『さやか殿、まだこいつが宝探しかどうか分かんないっシュ』
心太郎が慌てて耳打ちした。
『小娘!小僧!よォ~く聞け!俺様は炎一族の炎丸様だぜぇ!ここに眠るお宝は、俺様がいただいてやるぜぇ!』
炎丸と名乗る男は掌から炎を燃え上がらせた。
炎に照らされたさやかと心太郎の顔は、
呆れている。
完全に呆れている。
『がっかり…っシュね…』
心太郎も呟いた。
謎の宝探しの正体を探ろうと意気込んで乗り込んできたのに…
何日かけても必ず!…と張り切っていたのに…
こんなにすぐに現れるのか。
しかも派手に。
正体も目的も、調べるまでもなく自分から明かしている。
自己顕示欲の塊か。
『はあぁーっ』
さやかと心太郎は同時にため息をついた。
山全体が揺れているように思えるが、さやかは迷う事なく山を駆け下りて行く。
『さやか殿!どこに行くっシュ!?』
『そんなの、爆発の場所に決まってるでしょ!』
『どこか分かってるっシュか!?』
『分かんないの!?麓の辺り!ゆっくり東の方に移動してる!』
『さすがっシュね』
僅かな揺れから場所を特定したのか微かな火薬の匂いで分かるのか。
これがさやかの忍びとしての顔だ。
麓に下りると数ヶ所から煙が立ち上ぼっていた。
『ここが一番最初に爆破された所ね』
二人は走りながら煙の奥を覗き込む。
固い岩盤が粉砕されて穴が穿たれている。
三尺程えぐられているだろうか。
『何の為の爆破っシュかね』
東に走ると次の穴が煙を吹き出していた。
粉砕された岩の破片が辺り一面に転がっているが、さやかと心太郎はつまずく事もなくすいすいと走り抜ける。
水面をも走る忍びならではの技だ。
三つ目の爆破跡を過ぎた所に一際大きく、奥の見えない程深い穴があった。
坑道だ。
今の爆破で作られたのではなく、元々この鉱山で使用されていたものだろう。
坑道を過ぎるとまた爆破跡が二つ。
そして、
ずううん、とも、どおおん、ともつかない爆音が響いた。
近い。
爆破の主はそこにいる。
『坑道が崩れちゃうじゃない!こんな事するのは一体誰よ!』
さやかが走る。
『例の宝探しっシュかね!?』
心太郎も走る。
『それはないでしょ!?そーゆー奴は、もっと謎をちりばめて、最後の最後にようやく姿を現すもんよ。こんな所で派手に正体を明かすような単純な奴じゃないわよ!』
『確かに…』
最後の煙が見えた。
『もし謎の宝探しがそんな単純な奴だったら、がっかり…』
さやかが立ち止まる。
煙の向こうに人影が見えたからだ。
『がっかり、しちゃうわ』
現れたのは、全身赤で覆われた男だった。
赤い鉢金、赤い頭巾、赤い着物に赤い甲冑。
『ん?なんだぁ?小娘!』
粗野な口調である。
『こいつが、炎を操る、謎の宝探し…かしら…』
さやかが呟く。
明らかにがっかりした様子だ。
『さやか殿、まだこいつが宝探しかどうか分かんないっシュ』
心太郎が慌てて耳打ちした。
『小娘!小僧!よォ~く聞け!俺様は炎一族の炎丸様だぜぇ!ここに眠るお宝は、俺様がいただいてやるぜぇ!』
炎丸と名乗る男は掌から炎を燃え上がらせた。
炎に照らされたさやかと心太郎の顔は、
呆れている。
完全に呆れている。
『がっかり…っシュね…』
心太郎も呟いた。
謎の宝探しの正体を探ろうと意気込んで乗り込んできたのに…
何日かけても必ず!…と張り切っていたのに…
こんなにすぐに現れるのか。
しかも派手に。
正体も目的も、調べるまでもなく自分から明かしている。
自己顕示欲の塊か。
『はあぁーっ』
さやかと心太郎は同時にため息をついた。
スポンサーサイト