2012-02-25(Sat)
小説・さやか見参!(143)
金丸藩の領地はかなり広い。
とはいえ、栄えているのは小さな城の周りだけでほとんどは山である。
予定通り、1日半で金丸に入ったさやかは驚いた。
というか呆れた。
『山しかないじゃない』
『領地の半分は山らしいっシュよ』
心太郎がのんきに答える。
『こんなに山ばっかりじゃ人が住めないんじゃない?』
『山で暮らしてる人達もけっこういるらしいっシュよ。土地が肥えてるし水源もあるから、斜面を削って田んぼや畑を作ってるみたいっシュ』
『そうなんだ。意外にいい環境なのね』
『それとね』
心太郎が歩きながらくるりと振り返る。
『北の山には神話だか何だかが言い伝えられてるらしいっシュ』
2人が歩いている山は金丸の領地の南側に位置する。
間に平地や川を挟んで北側には別の山脈が連なっているのだ。
『神話?』
『そうっシュ。この山と向こうの山では…』
『ちょっと待って心太郎』
偉そうな口調で語り始めた心太郎をさやかが制した。
『どうしたっシュ?』
『あんたがこんなに詳しいわけがないわ。不問叔父様の受け売りでしょ!』
さやかが心太郎をびっと指差した。
先ほどから完全に聞き手に回っている自分がもどかしくなり逆襲を仕掛けたのだ。
まるで子供のような反抗心である。
しかし心太郎は、それをするりと躱し、何食わぬ顔で、
『当たり前じゃないっシュか。おいらここに来るのは初めてっシュよ。昨日の夜、不問様が詳しく教えてくれたっシュ』
とそっぽを向いた。
受け流されると自尊心が傷つく。
本当にただの子供、しかも駄々っ子である。
『な、なによ~!まるで自分の知識みたいに偉そうに語ってたくせに~』
さやかが食ってかかる。
『続けていいっシュか?この山と向こうの山では地質が全然違うらしくて…』
完全にさやかの一人相撲だ。
機嫌が良い時のさやかをからかうのは面白い。
さやかが偶に見せる子供のような顔が心太郎は好きだった。
ふくれっ面のさやかを見て心太郎はくすりと笑う。
『こっちの山は土地が肥えてるから作物が育つけど、北の山は駄目みたいっシュね。全然駄目』
『駄目、というと?』
『鉄っシュよ、鉄。向こうの山は鉄を含んだ岩がゴロゴロしてるらしいっシュ。高陵山みたいなもんっシュ』
『あぁ』
さやかとイバラキが十年ぶりに再会したのが高陵山である。
あの岩だらけの山でイバラキは特殊な鉄を採り、鋼鉄の義手を作ったのだ。
『いわゆる鉱山なわけね。それで?』
『この国が生まれた頃、そこには神様が住んでいて、山の土からきらきら輝く鏡を作っていたって神話が残ってるみたいっシュね』
鏡、
神様が作った鏡。
『その鏡は選ばれし者に不思議な力を与えてくれるって伝説があって、今でもこの辺りに眠ってる…と言われている…らしいっシュ』
『受け売りらしい曖昧な情報ね』
さやかは先ほどの仕返しとばかりに冷たくあしらった。
しかしこれで分かった。
炎を操る謎の宝探しは、その鏡を見つけようとしているのだ。
とはいえ、栄えているのは小さな城の周りだけでほとんどは山である。
予定通り、1日半で金丸に入ったさやかは驚いた。
というか呆れた。
『山しかないじゃない』
『領地の半分は山らしいっシュよ』
心太郎がのんきに答える。
『こんなに山ばっかりじゃ人が住めないんじゃない?』
『山で暮らしてる人達もけっこういるらしいっシュよ。土地が肥えてるし水源もあるから、斜面を削って田んぼや畑を作ってるみたいっシュ』
『そうなんだ。意外にいい環境なのね』
『それとね』
心太郎が歩きながらくるりと振り返る。
『北の山には神話だか何だかが言い伝えられてるらしいっシュ』
2人が歩いている山は金丸の領地の南側に位置する。
間に平地や川を挟んで北側には別の山脈が連なっているのだ。
『神話?』
『そうっシュ。この山と向こうの山では…』
『ちょっと待って心太郎』
偉そうな口調で語り始めた心太郎をさやかが制した。
『どうしたっシュ?』
『あんたがこんなに詳しいわけがないわ。不問叔父様の受け売りでしょ!』
さやかが心太郎をびっと指差した。
先ほどから完全に聞き手に回っている自分がもどかしくなり逆襲を仕掛けたのだ。
まるで子供のような反抗心である。
しかし心太郎は、それをするりと躱し、何食わぬ顔で、
『当たり前じゃないっシュか。おいらここに来るのは初めてっシュよ。昨日の夜、不問様が詳しく教えてくれたっシュ』
とそっぽを向いた。
受け流されると自尊心が傷つく。
本当にただの子供、しかも駄々っ子である。
『な、なによ~!まるで自分の知識みたいに偉そうに語ってたくせに~』
さやかが食ってかかる。
『続けていいっシュか?この山と向こうの山では地質が全然違うらしくて…』
完全にさやかの一人相撲だ。
機嫌が良い時のさやかをからかうのは面白い。
さやかが偶に見せる子供のような顔が心太郎は好きだった。
ふくれっ面のさやかを見て心太郎はくすりと笑う。
『こっちの山は土地が肥えてるから作物が育つけど、北の山は駄目みたいっシュね。全然駄目』
『駄目、というと?』
『鉄っシュよ、鉄。向こうの山は鉄を含んだ岩がゴロゴロしてるらしいっシュ。高陵山みたいなもんっシュ』
『あぁ』
さやかとイバラキが十年ぶりに再会したのが高陵山である。
あの岩だらけの山でイバラキは特殊な鉄を採り、鋼鉄の義手を作ったのだ。
『いわゆる鉱山なわけね。それで?』
『この国が生まれた頃、そこには神様が住んでいて、山の土からきらきら輝く鏡を作っていたって神話が残ってるみたいっシュね』
鏡、
神様が作った鏡。
『その鏡は選ばれし者に不思議な力を与えてくれるって伝説があって、今でもこの辺りに眠ってる…と言われている…らしいっシュ』
『受け売りらしい曖昧な情報ね』
さやかは先ほどの仕返しとばかりに冷たくあしらった。
しかしこれで分かった。
炎を操る謎の宝探しは、その鏡を見つけようとしているのだ。
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