2012-01-29(Sun)
小説・さやか見参!(131)
青と赤が入り交じっている。
水の中にいるようでもあり炎に包まれているようでもある。
(水の中なのに炎の中なんてあるわけないじゃん。変なの)
そう思うと何だかおかしくなった。
すると炎の中にぼんやりと兄の顔が浮かんだ。
(なぁんだ。おにいちゃん、やっぱり生きてたんだ)
兄が生きていた。
嬉しくなって思わず
『ふふっ』
と笑う。
―と、
遠くから声が聞こえた。
何を言っているか分からないが、その声が自分に向けられている事は分かった。
おにいちゃん?
しかしそれは聞き覚えのある兄の声ではないようだった。
はっきりと見ようとするが、目の前の兄は炎と水を背景にぼんやりとした影に変わっていく。
(行かないで、おにいちゃん)
上手く声が出せない。
(行かないで、もう私を置いていかないで)
自分を呼ぶ声は近付いてくるのに兄の姿は影へと変わっていく。
(行かないでよ、置いてかないでよ、おにいちゃん)
影が自分の身体を揺らした。
『私もおにいちゃんの所に行く!そっちに行きたい!』
声を絞り出すのと同時に、これまで何を言ってるのか分からなかった声がはっきり聞こえた。
『しっかり!しっかりして下さい!!』
若い、男の声である。
ここに至ってようやく、赤と青は夕焼けの混じった空なのだと、
目の前の影は音駒なのだと、
そして、やはり兄は死んでいるのだと、
さやかは理解した。
水の中にいるようでもあり炎に包まれているようでもある。
(水の中なのに炎の中なんてあるわけないじゃん。変なの)
そう思うと何だかおかしくなった。
すると炎の中にぼんやりと兄の顔が浮かんだ。
(なぁんだ。おにいちゃん、やっぱり生きてたんだ)
兄が生きていた。
嬉しくなって思わず
『ふふっ』
と笑う。
―と、
遠くから声が聞こえた。
何を言っているか分からないが、その声が自分に向けられている事は分かった。
おにいちゃん?
しかしそれは聞き覚えのある兄の声ではないようだった。
はっきりと見ようとするが、目の前の兄は炎と水を背景にぼんやりとした影に変わっていく。
(行かないで、おにいちゃん)
上手く声が出せない。
(行かないで、もう私を置いていかないで)
自分を呼ぶ声は近付いてくるのに兄の姿は影へと変わっていく。
(行かないでよ、置いてかないでよ、おにいちゃん)
影が自分の身体を揺らした。
『私もおにいちゃんの所に行く!そっちに行きたい!』
声を絞り出すのと同時に、これまで何を言ってるのか分からなかった声がはっきり聞こえた。
『しっかり!しっかりして下さい!!』
若い、男の声である。
ここに至ってようやく、赤と青は夕焼けの混じった空なのだと、
目の前の影は音駒なのだと、
そして、やはり兄は死んでいるのだと、
さやかは理解した。
スポンサーサイト